アメリカ発の金融危機は、世界を深刻な経済状況に追いやっている。この金融危機がなぜ起きてしまったのか、その最大原因となるアメリカの責任も、その反省もなくWTOが、またまた暴走しそうである。
WTOは2国間交渉のFTAを含めて、国内に何らかの事情を抱える渋る国に対し、何のためらいもなく「保護主義」のレッテルを貼り、非難している。そもそも、WTOの持つ、無原則な市場主義・新自由主義が、今回の危機を招いたのである。
それぞれの国には、地理的、気候的、歴史的、民族的、宗教的、文化的、また発展の形や政治体制など、あらゆる面で異なる形態、国内事情を抱えているものである。これに無原則な自由化を導入することは、文化的な衝突も発生を意味していることになる。
その結果、地域間格差、国家間格差、企業間格差、産業間格差が生じたのである。そうした反省もなく、更なる“自由貿易”を目指すWTOは、世界の人々を不幸にさせる。富の偏在をもたらす。
強い企業は、金融の後押しを受けてさらに肥大化し、強力になる。金融資本は弱者には興味がない。さらに強者に対しての投資を行うのである。その強者が、実体を伴わない運用を行ったために信用を失い、瓦解する。単純なことである。石油と穀物の昨年の動きを見れば分かる。
WTOは、世界にわずか6万社に過ぎない多国籍・超国家企業の、利益のために奔走している。世界貿易を行う企業のの3分の2は、金融支配下にあるとされる。保護主義撤廃は、」強者のための目先の利益の論理なのである。
経済はグローバル化するのではなく、今回NHK放送文化賞を受賞した内橋克人氏の提言するように、福祉(F)、食(Eat)、医療・介護(Care)の自給圏の確立が必要であると思われる。FEC自給圏は地域で賄なう。その中心になければならないのが「農」である。企業を競争へ追い立てるのではなく、共生への道を探るべきなのである。
一方で、グローバル化しなければならないものは、環境問題である。WTOの選択する経済のグローバル化は、間違った未来を子孫に与えることになる。