自民党の再生がこの国の将来を左右する。多分相当の期間民主党政権が続くであろうが、それを健全化するのは自民党の底力だろうと思う。が、総裁選挙の貧相な論争と、谷垣禎一新総裁の挨拶やその後の言動を見ていると、とても再生するとは思えない。
民主党の新閣僚ははつらつと動いている。結果がどうあれ、今のままだとかなり結果が思うようにならなくても、多くの国民は寛容に対応してくれるものだと思える。それに引き換え、結果的に派閥の論理から安全パイとして、谷垣禎一を総裁に選んだ自民党は、新鮮味のない政党に堕落しまった感がある。
自民党の再生は、純粋な右翼政党として国粋主義者の理念を前面に出して存在感を示すか、自由主義経済の発展を鮮明に打ち出し小さな政府として新自由主義を標榜するか、あるいはリベラルな中道色を出すことで大きな政府を目指すのかしかない。これらは元々自民党が抱えおり、内部構成していたものでもあった。
これらを順次回すことで、自民党は疑似政権交代をやってしのいできた。それらは権力を持つことで初めて可能になる組織体でもあった。野党となって、政権という接着剤がなくなり、活力源であった派閥の意味合いも薄らいでしまった。
自民党は野党になった今こそ、旗色を鮮明にしなければならない。その時期に、よりによって谷垣禎一という最もわかりずらい人物を総裁に選出したのである。あれも良いけどこれも理解できると言う、八方美人の典型である。このままでは自民党は、何の色合いも出すことなく分裂してしまう可能性がある。
これまでの自民党政治の総括も何もやっていない。極めつけは、八ツ場ダムに視察に出掛けて、民主党の対応を「結果りありきの暴力的な政策である」とコメントしてるのには、あきれてしまった。結果ありきで強引に事業を押しつけてきたのは、自民党のこれまでのやり方ではないか。ダムに賛成した地元住民はいない。賛成させられただけである。
何処のダム建設でも、緊急性を要すると言いながら数十年は平気で放置し、土建屋を食わせるだけの、集票マシーン作成の計画ではなかったのか。それならダム建設に至るまでに何らかの治水、利水対策をやったのかというと、その形跡はどこのダム計画でもほとんどない。
自民党は活力源として常時抱きかかえていた政権を失った。自民党を束ねるには、当面強引でも存在感のある人物が束ねなければならない。谷垣禎一は終戦直後、憲法改正員会の委員長を務め、後に民主党を創立した芦田均の後継の谷垣専一の息子である。政治姿勢としても、民主党の中枢の人たちと変わることもない。
このままだと、来年度の参議院選挙でまた自民党は敗北をして、谷垣総裁が辞任して総裁選が行われるか、大きく分裂することになるかもしれない。それも日本にとっては不幸なことなのである。しかし、自民党の再生は当分なくなったと見る現状にあるといえる。