2020年のオリンピック招致で、懸命に記者団に答える武田理事長である。質問のほとんどが、福島原発事故による放射能汚染の危険性についてであった。
理事長は懸命に安全性を強調してはいるが、所詮は言葉でしかない。世界各国は放射能汚染を恐れている。絶妙のタイミングで起きた(発覚した?)地下水の汚染である。
素人でもメルトスルーが起きた時点で懸念していたことである。底が抜けたら地下水へ影響があるのは、当たり前のことである。
必死に言葉上で否定してきた東電であるが、2年半してようやく事実を確認したに過ぎない。あるいは隠し切れなかっただけである。希望的観測では対策にならない。
韓国が日本の8県からの水産物の輸入を、全面的に禁止した。自国の物まで売れなくなったから、当然の処置と言える。汚染の事実関係が、人々を不安に陥れているのではない。
世界各国は、放射能汚染の実態を知りたいと思っているのでもない。福島原発事故に対する、東電や政府の対応に疑念を抱いているのである。次々と隠ぺいが発覚したり、事後の対策と成果が見える形で得られていないのである。
ましてや、再稼働を前提にした政府の取り組みや、国外への原発の輸出などという、無反省の政治的姿勢に懸念を持つ、オリンピック委員たちが大勢いてもおかしくはない。彼らの意識を風評被害という枠に収めてしまえば、自ら反省することもなくなってしまう。
3都市のオリンピック招致合戦であるが、客観的には日本が優位であることは動かない。唯一放射能不安が黒い雲として垂れ下がっているのである。
オリンピック招致の失敗は、原子力行政への世界からの問いかけだと、安倍内閣は率直に認めるべきである。明確に原発ゼロを打ち出すことでしか、この疑念は払しょくはできない。