2020年東京オリンピックが決定した時に「まさにAKIRA」との声をよく聞きましたが、私にはなんのことだがわかりませんでした。
私はAKIRAの原作漫画を読んだことはありませんし、映画もちゃんと観たことがありません。これまでにテレビで何度か映画を放送していたようですが、事前にチェックをしていなかったため、たまたま私が目にした時はいつも鉄雄が膨張していくシーンあたりなのでした。
漫画を読もうというほどのAKIRA欲はないのですが、なんか気になるから映画をひと通り観たいという思いは若干あります。けれどもDVDを借りに行こうというほどでもありません。まあそのうちまたテレビで放映するだろう、といつまでもぼんやり考えておりました。そんな私がリサイクルショップでファミコン版のAKIRAを見かけたので、せっかくだからと338円+消費税で購入したのでした。
さてこのファミコン版『AKIRA』は映画版をある程度忠実にトレースしていることは知っていたのでこの機会に入手したのですが、それと同時に極めてしんどいクソゲーであることも知っていました。というのも、とにかくすぐゲームオーバーになるらしいのです。恐る恐るプレイしてみると、確かに始めて数分のうちに数回死にました。正解でない(あるいはまったくどうでもいい)選択肢を選んだだけで即死です。映画版の展開を知っていたら回避できるのかもしれませんが、とにかく選択肢を見たら即死だと思えというくらいに死にます。
その死に方もシチュエーションに応じたズッコケエンドならまだ楽しいのですが、ゲームオーバー画面は
…か、または、
…しかないので、結構うんざりします。死んでも少し前からやり直せるとはいえ、即死選択肢は連発で出ることが多く、同じことを何度も繰り返すうちに精神的にまいってきます。まあ、選択肢に迷ったら一番下のを選ぶと少しだけ効率がいいかもしれません。
いきなり不満点から書いてしまいましたが、グラフィックはまあまあで、私の嫁が一目見て『AKIRA』だとわかるほど(嫁はなぜかAKIRAを何度も観ているらしい)。これで音楽が映画版の芸能山城組によるものだったらぐっと雰囲気が出てたのですけどね(なぜかサントラCDだけ借りて聴いたことがある)。
鉄雄に呼び捨てにされた金田の(おそらく)名セリフ。ちょっと絵はチープな気が…。
そういえばカートリッジには「360°マルチスクリーン」などと書いてありますが、思い当たる部分といえば部屋に閉じ込められた時に「部屋の風景のスクロールがループする」という点と、軍の戦闘マシンに襲われた時(手動で振り返る必要あり)くらいなものです。きっと単なる誇大広告でしょう。
物語も中盤、鉄雄を狙った衛星レーザーに巻き込まれそうな金田、その時に現れる選択肢がこれ。
もう「選んでくれ」と言わんばかりであり、私もこういうのは全部選んでみましたが、やっぱり死に様は同じでした。
ファミコン版ならではの展開として、マルチエンド(みたいなバッドエンド)が幾つかあります(以下ネタバレ)。
まずは誰もが知っているであろうノーマルエンド。
こちらはアキラ復活、鉄雄消滅パターン。
これはあっけなく鉄雄を倒したグッド(?)エンド。意外と簡単に到達できます。
巨大化した鉄雄が取り残されるパターン。
そして復活したアキラと鉄雄が対面するパターン。話によると漫画版に続き得る展開のようですが。
そんな感じで数時間それなりにAKIRAを楽しむことができました。ただ他の人がプレイしたらどう感じるでしょうか。ほぼ映画そのままですからAKIRAファンならわざわざファミコンでプレイする必要もないですし、AKIRAをまったく知らなかった人にとっては展開がダイジェスト的で尺も短いからよくわからないでしょう。したがって想定される購買層として、AKIRAをいくらか知ってはいるが映画を十分に観ていないことを気にしており、しかも少々のクソゲーなら笑って楽しむことができる、というのが挙げられるでしょう。実に私のニーズにピタリとはまった一本でした。それにしても極めて狭い購買層ですね。
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