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ワーグナー・ストーリー

2013-12-01 21:44:33 | CD


リヒャルト・ワーグナー:
・歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
 指揮:ビイストリック・レズッカ(ビストリーク・レジュハ)
 スロヴァキア・フィルハーモニック・オーケストラ

・楽劇「ワルキューレ」ワルキューレの騎行
 指揮:カルロス・ウンガー
 サウスウエスト・スタジオ・オーケストラ

・楽劇「神々の黄昏」より 葬送行進曲
 指揮:ジョネル(イオネル)・ペルレア
 ウルッテンベルグ・ステート・オーケストラ

・歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
 指揮:ビイストリック・レズッカ(ビストリーク・レジュハ)
 スロヴァキア・フィルハーモニック・オーケストラ

・楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
 指揮:ビイストリック・レズッカ(ビストリーク・レジュハ)
 スロヴァキア・フィルハーモニック・オーケストラ

・歌劇「タンホイザー」序曲
 指揮:アルフレッド(アルフレート)・ショルツ
 フィルハーモニア・オーケストラ・ロンドン

ピジョン: FX-221



 私の好きな安物CDです。タイトルは「ワーグナー・ストーリー」といって、いかにもクラシック愛好家以外の層を狙ったようなシリーズ。ジャケットは奇麗な写真だけど音楽とは何の関係もなく、単に「○○・ストーリー」というシリーズとしてインテリア的な統一感があればいいという狙い。CDケースは逆開きで、なけなしの個性を演出。それと、こんな事まで言うのも我ながらどうかと思うけど、製品コードの「FX」というのも中二っぽいです。そして何より、カルロス・ウンガー指揮とかサウスウエスト・スタジオ・オーケストラとかは、もしかして幽霊指揮者・幽霊オケなのではないでしょうか? なんとも偽名くさい。なんせ他にもアルフレッド(アルフレート)・ショルツの名前もありますし(詳しくはこちら)。ここまでくると安物CDの数え役満と言っていいでしょう。

 でも私は全然構わないのです。特にワーグナーの音楽は、指揮が凡庸であっても、オケが頑張って鳴らせばそこそこの熱演になってしまうのです。金管楽器が分厚い和音をフォルテシモで鳴らし、弦楽器がシャカシャカやって、とにかく音を出すだけで聴く人を圧倒するパワーがワーグナーの音楽にはあるのです。その特徴として、特定の人物や出来事を表すライト・モチーフというフレーズの導入、半音階の多用、シーンの切れ目に影響されない無限旋律、巨大なオーケストラ編成などが挙げられます。特にライト・モチーフについては現在の映画音楽の原型と言えるでしょう。

 ワーグナーの主要な作品はほとんどが歌劇(楽劇)で、全曲を聴くと数時間どころか数日かかるようなものもあります。したがって、それらの有名な部分がまとめられてCDになっていることが多くあります。このディスクもそういったものの一つで、「ローエングリン」と「ワルキューレ」について今回はちょっとだけ書いてみましょう。

 歌劇「ローエングリン」はアーサー王伝説に出てくる騎士ローエングリンのエピソードを描いた作品で、その中の「結婚行進曲」が有名です(一番有名な「結婚行進曲」はメンデルゾーン作曲)。第3幕への前奏曲は華々しく勇ましいオーケストラ・ピース。とにかく上に書いた通り、金管楽器が分厚い和音で旋律を奏で、弦楽器が高音でシャカシャカやる、という音楽。音楽の素材は多くなく、とにかくテーマを繰り返し流すだけだと言えますが、それだけに記憶に残って一緒に歌いたくなります。

 ところがこの「ローエングリン」はヒトラーが大好きだったようで、ナチスに利用されたという経緯があります。ヒトラーが演説の前にこの第3幕への前奏曲を流して聴衆を高揚させたとのことです。確かにワーグナーのこの手の作品は全能感がありますし、それに続く言葉を正当化するような強制力を感じます。そんな不幸な使われ方もありましたが、音楽の価値と魅力に変わりはありません。



 動画はフランツ・ウェルザー・メスト指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。わりと軽めかも知れません。

 楽劇「ワルキューレ」は4日間にわたって上演される『ニーベルングの指輪』の中の一つ。ワルキューレとは、北欧の主神オーディンのもとに戦死した勇士の魂を運ぶとされる女神達のこと。英語ではヴァルキリー。「ワルキューレの騎行」は、「ホーヨートーホー! ハイヤハー!」という掛け声とともにワルキューレ達が岩山に集まってくるシーンの音楽。やっぱり音楽の細かい構造はなく、一つのテーマで押し切った感はありますが、その説得力は尋常ではありません。

 映画「地獄の黙示録」でこの曲が使われているのは余りにも有名。それも、アメリカ軍の戦闘ヘリに乗った軍人がこの曲を大音量で流しながらベトナムの村を焼き尽くす、というシーンで。これも現実で考えると褒められたシーンではありませんが、その音楽の効果のほどは絶大と言えましょう。全てを正当化する強制力がここでも活かされているのです。



 こちらの動画はダニエル・バレンボイム指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。

 ワーグナーの音楽のこういう特性のためか、私の友人には「クラシックは聴かないけどワーグナーだけは聴く」という友人がいます。善良な男なので、大それた事をしないとは思いますが……



 蛇足で、レトロゲーマーの皆さんにとって「ワルキューレの騎行」といえばジャレコの「フィールドコンバット」。面白いかどうかもわからない謎のゲームでした。

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