第239回 2019年12月3日 「アイデア満載!町工場の技~三重の金属製品~」リサーチャー: 藤澤恵麻
番組内容
三重県の町工場。リーマンショック以降、業績不振に苦しむ工場が多い中、自分たちの技術力で製品開発を進める職人たちがいます。高い切削技術が応用され、食材のうまみを引き出す保温性に優れた鍋。バイクのマフラーの色変化に注目し、虹のような輝きをまとったグラス。鉄工所の3代目が作りだすのは、柔らかな曲線を描く印象的な家具。リサーチャーは藤澤恵麻さん。町工場と職人の技術力が生み出す、金属製品の魅力に迫ります。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201912031930001301000 より
三重県にはたくさんの町工場が集まっています。
リーマンショック以降、業績が上がらずに苦しんでいるところも多いのですが、不況に立たされた職人達は自分達の技術で新たな製品開発に力を入れています。
今回の「イッピン」は、町工場の技が作り出す三重県の金属製品の魅力に迫ります。
1.「ベストポット」(MOLATURA:モラトゥーラ)
三重県四日市市にあるMOLATURA(モラトゥーラ)は昭和44(1969)年7月に「中村製作所」として創業。
飛行機やロケットなどの機械部品を手掛けてきました。
ところがリーマンショックの後には10分の1にまで受注が減ったため、自社技術「空気以外なんでも削ります。」
どんな素材や大きさも精密に削れる技術を応用して、新たな製品開発に乗り出しました。
その一つが印鑑です。
そして、食材をふっくら美味しく調理出来ることから人気の鍋「ベストポット」です。
「ベストポット」は、航空宇宙産業の部品加工にも携わる高精度技術の現合加工、誤差1/1000mm以内の精度で鍋と蓋を削り、熱と素材の旨味が逃げない構造に仕上げることによって生まれた無水調理が出来る鍋です。
「ベストポット」は本体が三重県四日市市の伝統工芸である「萬古焼」で、蓋部分は「鉄の鋳物」にホーロー加工が施されたものです。
鍋本体とは異素材の鉄を蓋にすることで気密性が高まるため、旨味が逃げる隙を与えません。
「陶器」と「金属」の異なる素材をピッタリと合わせるために、試行錯誤が繰り返されました。
課題となったのは、陶器製の鍋をいかに精密に作るか。
そこで協力を仰いだのが土鍋を作る窯元の水谷泰治さん。
水谷さんが山添さんから求められたのは「精度」でした。
焼き物は焼くと収縮するために、土鍋は通常2、3㎜歪んでしまうのですが、金属の蓋が形が決まっているので1㎜以下にして欲しいと提案されました。
水谷さんは正確に作り専用の窯で焼き、山添さんはダイヤモンドの砥石を角度を調節しながら、蓋が合うように陶器部分を削ることで、量産出来るようになりました。
「ベストポット」の鍋は、特殊な羽釜形状と二重構造になっていて、鍋の中でまんべんなく熱が対流するようになっています。
また「萬古焼」は遠赤外線放射率が高いのですが、更に鍋の内側には阿蘇山の火山灰が釉薬に調合されていて、煮込み料理や蒸し料理をより美味しくしてくれます。
蓋にも工夫が凝らされています。
蓋の内側の中央付近には隆起がつけられていますが、この隆起が内部の空気を対流させることで、素材の旨味を含んだ蒸気を 効果的に循環させています。
そしてこの突起を「フィボナッチ数列」に基づいて配置することで、素材の旨味を含んだ蒸気をより効果的に水滴に変えているのです。
2.「チタンカップシリーズ」(クラフトアルマジロ)
三重県鈴鹿市は自動車産業が盛んなところで、部品を作る企業が数多く集まっています。
バイクのパーツを作る金属加工会社「クラフトアルマジロ」の代表・永田健二さんは、全日本選手権などを 戦った経験を持つレーシングライダーで、バイク好きが高じて金属加工会社を設立しました。
平成23(2011)年に立ち上げたオリジナルブランド「マーベリック」のマフラー、ステップキットといったレース用パーツは全日本や鈴鹿8耐に参戦するチームに供給されており、チームやライダーの好成績を支えています。
「クラフトアルマジロ」が扱うのは「チタン」。
「チタン」という素材は、非常に強く軽量で、高温になると色が変色する特徴があります。
その性質に目をつけた永田さんは、「チタン」のタンブラー「タンブラーレインボー」を開発しました。
オールチタンの中空二重構造のタンブラーです。
虹のような輝きをまとった、幻想的なグラデーションのタンブラーです。
職人の浜上サトシさんにグラスの製作過程を見せていただきました。
まず「チタン」をカットしたら機械にセットして金型で押し広げて、グラスの形にしていきます。
そこからグラデーション作りを行っていきます。
グラスの色は温度によって変化していきます。
浜上さんが火を使って、炎を回すようにして炙っていくと、およそ300度のところで、グラスは「金色」になりました。
更に温度が上昇すると「紫色」から「寒色系」に変わり、700度になると「緑」に変化しました。
グラスの色付けは低温の色に戻す事は出来ないため、浜上さんは、調整しながら色の変化を見極めて、キレイなグラデーションを配色していきます。
クラフトアルマジロ 三重県鈴鹿市国府町7669-57
3.「ZACC -ザック-」(豊岡溶工)
三重県名張市で鉄工所を営む豊岡溶工さんは業務用の棚や鉄柵など、機能性を重視したものを作っています。
こちらの三代目で、ミュージシャンでもある豊岡顕典さんは、鉄の新たな可能性を追求したいと「ZACC-ザック-」というブランドを立ち上げ、雑貨、小物、家具、エクステリアなどのアイアン製品を製造しています。
豊岡さんのこだわりは、硬い鉄をしなやかに見せること!
まずは長くて真っ直ぐな鉄を用意し、螺旋状のカーブは経験から導き出したもので、計測しながら溶接していきます。
本物の「ツタ」のようなカーブにするために、下の部分から火を入れて、様子を見ながら曲げていきます。
それをねじって回すことで、蔓に躍動感が生まれます。
風合いが悪くなるため一発勝負だという豊岡さん。
しなやかに立ち上る曲線が生まれたら、アクセントとして葉っぱをつけていきます。
仕上げに特性の液剤を塗ってサビを出して完成です!
豊岡溶工 三重県名張市東町1691−1
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Mie/metal_products より
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