ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

私は最悪

2022-08-05 | 映画のお話


「私は最悪」ってちょっと変わった題名
今どきのマンガチックなロマンティックコメディ?
展開が早くて、構成もちょっと変わっていて
ノルウェーの映画は本当に久しぶりだけど
ちょっと異色な感じがして、
奇抜な展開に辟易したり、飽きて来たりと・・・

でもどう見ても 全然最悪じゃあない
自分のキャリアの選択はこれでいいのか、今のパートナーとずっと一緒でいいのかと
悩みながら、まっすぐに行動に移すところはさすが

「わたしってサ イ ア ク」とユリヤは何度吐き出したセリフだったのかしら・・・
たぶんいつもつぶやいたり、叫んだりしながら、人生を疾走していったのだろう

こんな風に自分の人生を生きていくってなかなかできないこと


優秀なユリアは外科医になるのをやめ、精神科医もやめ、写真家に目覚め
母はそのたびにあっさりと認めてくれるし

出会いもたくさんあって、恋人も次々に見つけてのりかえていくし
いつもまっすぐだからか泥沼にもならない・・・

むずかしい父とは距離をおけばいいし・・

最後は彼女にとって人生のいい経験になったのだと思う
理解できないこともいくつかあったけど
それは世代と国と育ちのせいだろう。

意外に北欧の男たちは妻や母を望んでいたり
アラサーながらそれを受け入れられないユリアの
頑なさも両親の影響かもしれないと思ったり

特別な自分をずっと探してきたことのない私にはうらやましい作品だった
生まれ変わったらどう生きようかとは思うけど

静止した街の中をユリヤが駆けていく想像シーン
心の中、マジックマッシュルームを食べて幻覚を見る場面
下品なシーンもあったがそれを感じさせない北欧の清潔感なのかな

様々な経験をして自分の人生を生き始めた彼女のまなざしの向こうに
女性と子どもと仲睦まじい元カレの姿がある。
ユリアとの子供は望まなかった彼の数年後の姿なのだが
それを見ての晴れ晴れとしたユリアの表情が素敵だ。

実は末期ガンだったアクセルが、最期の姿を通して彼女に与えたものは大きかった
自然体のユリアは、自分探しをしながら全てを変えられると思っていたのかもしれない。
でも、突然、自分自身の限界に向き合うしかなくなる。
与えらた時間が限られていることにも気づかされたのかもしれない
彼女の自分探しの旅が何とか叶いつつあるようで最後はほっとした。

ユリヤ役のレナーテ・レインスベは第74回カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞
時に若々しく、時には妖艶に大人っぽく、色々な表情を見せる彼女の目まぐるしい変化が素晴らしかった

原題のノルウェー語では「Verdens verste menneske」は直訳で「世界で一番悪い人間」
英語版は「The Worst Person in the World」
「わたしは最悪」と訳した日本語は秀逸だったかも・・・




コメント
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