題名から
「東ドイツの女」と言うイメージがあって、
私はてっきり東から西にやってきた孤独な女医の物語だと思い込んでいた。
映画が始まって、
バスを降りる彼女の重苦しい雰囲気や風景から
ここは東ドイツだと悟った。
自由な西にやってきたのではなく、
東ベルリンの大病院から左遷させられて地方にやってきたのだ。
西ドイツに恋人がいる彼女なのだが、
出国申請も認められず、終始秘密警察に監視される生活。
たびたび家宅捜索を受けては、
身体まで調べられているさまは、本当に切ない。
かたくなに日々をすごしてゆく。
原題は彼女の名の「バルバラ」
邦題のつけ方は気を引くためとしか思えないでもないが・・・
私のように引っかかるものもいるということだ。
2012年ベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞の
質の高い作品だったのは幸いだった。
エリート医師の彼女は
社会の担い手として活躍できる立場だったから西へはいけなかったのだろう。
美しい小児科医なのだが、
どうしてあんなにどぎつい化粧をするのだろうと
とても気になった。
運ばれてきた矯正所からの脱走を繰り返す少女を
的確に髄膜炎と診断し、意外にもバルバラはとても優しかった。
妊娠させられていた少女をどうすることもできずに
治療後、また矯正所に送りだすが
最後は自分の代わりに西側に逃亡させてやることになる・・・
自分が東に来ていっしょになってもいいと言う能天気すぎる
裕福そうな西ドイツの恋人。
西にくれば養ってあげられるから働かないですむとも
バルバラに話していた。
恋人がピカピカのベンツで東ドイツの田舎町の森にやってくるのも
ちょっと信じられないような行動なのだ。
東と西の人々の暮らしや考え方は
こんなにも食い違ってしまっていたあの頃。
自由で豊かな西へ逃げることを計画していたが、
自分が医師として求められている東の暮らしを選んだバルバラ
出世を望まず、黙々と医師としての務めをこなす
上司アンドレの姿はやはり素敵だと思うのは
私も女だからだろうか。
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