グローバリゼーションは、移民・外国人労働者の世界を大きく変えつつある。とりわけ、アジア諸国の発展に伴い、労働力の送り出し、受け入れの状況はダイナミックに変化してきた。かつては自国労働者を海外に送り出していた国も、経済水準が上昇するとともに、送り出しを止め、次第に受け入れ側に変化して行く。北東アジアでは、日本、韓国、台湾、香港などは、すでに完全な受け入れ国に変容している。東南アジアでは、シンガポール、タイ、マレーシアなどが、受け入れ国に移動しつつある。しかし、方向は決して一方的に「開放」に向かっているわけではない。日本にはこの点、ジャーナリズムを中心に誤解や理由のない開放論者が多い。まず、正確に事態を見つめることが大切である。今回は、マレーシアの場合をとりあげよう。
9.11以降、世界の受け入れ国は自国に滞在している不法労働者を減少させるために、入国管理措置を厳しくしている。日本もそのひとつだが、ここで紹介する例は、マレーシアである。マレーシアには2004年時点で約130万人の合法外国人労働者、70万人の不法労働者が働いていると推定されていた。同国政府は、基本的に自国民優先の政策を推進している。その一環として、2005年3月1日に、同国政府は約500人の移民取締官を動員し、クアラルンプールの不法労働者を摘発する動きに出た。この3月1日の捜索では、62人が逮捕され、収監、罰金、むち打ちなどの刑に処せられる。
これに先だって、同政府は不法滞在者であっても、あらかじめ指定した4ヶ月間に入管支局に出頭し、帰国の意思を表明すれば、処罰なしにアムネスティが適用され、優先的に帰国できることにした。2月28日の夜半までにマレーシアを離れていれば罰則対象とはならなかった。
アジアにおいても、受け入れ国側は経済発展に伴い、次第に自国の利益を優先する入管政策を確立しようとしている。マレーシアの場合、一人あたり所得は隣国インドネシアの3倍、失業率は3分の1までになった。他方、自国労働者は筋肉労働に就くことを次第に忌避するようになった。
マレーシアでも、入国管理政策を厳密に施行することは困難が伴っている。国境線は複雑で長く、隣国から入国しようとすれば抜け穴だらけである。現在でも100万人近いインドネシア人労働者が入国し、働いている。さらに、不法滞在の形で40万人近くがレストラン、工場、農場、土木建設現場などで働いている。
この例から明らかなように、国境線の段階で出入国管理政策を目的に添って、十分に機能させるには多大な困難がある。日本の場合も同様だが、入国管理政策は必然的に国境の背後に広がる「社会的次元」へ拡大して設定されねばならない(2003年8月5日記)。
Note:統計数値については、The Economist,March 3-11,2005 を参照。
9.11以降、世界の受け入れ国は自国に滞在している不法労働者を減少させるために、入国管理措置を厳しくしている。日本もそのひとつだが、ここで紹介する例は、マレーシアである。マレーシアには2004年時点で約130万人の合法外国人労働者、70万人の不法労働者が働いていると推定されていた。同国政府は、基本的に自国民優先の政策を推進している。その一環として、2005年3月1日に、同国政府は約500人の移民取締官を動員し、クアラルンプールの不法労働者を摘発する動きに出た。この3月1日の捜索では、62人が逮捕され、収監、罰金、むち打ちなどの刑に処せられる。
これに先だって、同政府は不法滞在者であっても、あらかじめ指定した4ヶ月間に入管支局に出頭し、帰国の意思を表明すれば、処罰なしにアムネスティが適用され、優先的に帰国できることにした。2月28日の夜半までにマレーシアを離れていれば罰則対象とはならなかった。
アジアにおいても、受け入れ国側は経済発展に伴い、次第に自国の利益を優先する入管政策を確立しようとしている。マレーシアの場合、一人あたり所得は隣国インドネシアの3倍、失業率は3分の1までになった。他方、自国労働者は筋肉労働に就くことを次第に忌避するようになった。
マレーシアでも、入国管理政策を厳密に施行することは困難が伴っている。国境線は複雑で長く、隣国から入国しようとすれば抜け穴だらけである。現在でも100万人近いインドネシア人労働者が入国し、働いている。さらに、不法滞在の形で40万人近くがレストラン、工場、農場、土木建設現場などで働いている。
この例から明らかなように、国境線の段階で出入国管理政策を目的に添って、十分に機能させるには多大な困難がある。日本の場合も同様だが、入国管理政策は必然的に国境の背後に広がる「社会的次元」へ拡大して設定されねばならない(2003年8月5日記)。
Note:統計数値については、The Economist,March 3-11,2005 を参照。