田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

外皮を脱ぎ捨てて イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-19 11:43:53 | Weblog
7

「これでおわりだ。銀の弾だ」
人狼の体が中空にはねあがった。
地面に落ちてきた。
着地したとたんに、副谷の体となって溶けていく。
井波の体はすぐには溶けださなかった。
しぶとく人の体のままで大地でのたうっていた。
しかし……ドロッとした粘液になっていく。

「この体にはあきあきしていた。もうこんな古い外皮は必要ない。はやく脱ぎ捨てたかった。だがおれは滅びない。器はいくらでもある。またすぐ会えるからな。それに……いまごろ東京でなにが起きているか。楽しみだ。翔太、おまえのに入院した病院は井波総合病院といわなかったか……」

その言葉が誠を恐怖のどん底へ落とし込んだ。
誠は携帯を打つ。
妻のいる東京のマンションへ。

「どうしてなんだよ。どうして我田先生までここにいたの? ひとの姿のまま、先生だけ死んでいるの? 最期まで狼の奴隷としてシンジャッタの?」

人狼に魂まで侵されていた。
我田先生が倒れている。

まだこのとき、翔太は知らない。
我田先生が学校に放火してきたことを知らない。
日本最古の木造校舎の神沼北小学校が全焼したことを知らない。
黒川がある。
日光杉並木が聳えている。
森の奥の尾形だ。
ここまでは火事の騒ぎは伝わってこない。
だれもまだ知らない。 
明日に成れば。
焼け跡から白骨が累々と発見されることを。
白骨はかなり古いものもある。
白骨が栃木県警の鑑識に委ねられて公表されるまでは。
まだなにも知らない。

人狼のいいようにあやつられて。
生徒たちを虐待し。
あげくのはてに。
担任クラスの生徒をきりきざんだ女教師。
はったと虚空を睨んだ我田の目にはまだ狂気が宿っていた。
勝平がそっと瞼が閉じるように。
手のひらでなでおろした。

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