背中に扉の板の質感をたしかめながら。
古からの人狼と九尾族の確執を思いながら。
太刀を杖に立っていた。
「一匹も逃さない。この場所は知られたくないの」
「切り落とした人狼の首は火のなかに投げ込むのよ」
美智子は残酷なことを平気でいえる女ではない。
人狼との戦いに賭ける美智子の覚悟のほどが読みとれる。
道場まで侵入して、負傷者や老婆をむさぼり食らった。
許せるはずがない。
この敵を滅ぼすためにはいかようにも冷酷になれる。
過酷になれる。
首は火に投げ込む。
そうすれば、さすがの人狼もよみがえれないだろう。
美智子が、祥代にいいながら扉を開けた。
先頭にたって人狼の首を両手に扉をでた祥代が立ち止まっている。
凍り付いている。
まだ燃え盛っている火炎に気おされしたのか。
「どうしたのよ」
うっと妻が獣のような声をだした。
祥代が両手にさげた首をふたつ同時に取り落とした。
人狼の首が祥代の肩からはえている。
炎を逆光線にあびているがボスだ。
わたしにむかって笑ったようだ。
そのまま、祥代がずるずると庭に引きずりだされた。
食いちぎられる。
わたしはよろけながらその後をおった。
だが、わたしよりもはやく反応したものがいた。
獣の形をしていた。
もはやひとの形はとどめていなかった。
「玉藻。おまえか? 再生していたのか」
ボスが口をきいた。
祥代が大地にたたきつけられた。
ばさっと音をたてて倒れた。
玉藻がボス狼に食らい付いた。
圧倒的な俊敏さだ。
ボスは避けることもできなかった。
首筋にくらいつかれた。
必死で玉藻をふるい落とそうもがいている。
わたしは祥代のところにはいよった。
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古からの人狼と九尾族の確執を思いながら。
太刀を杖に立っていた。
「一匹も逃さない。この場所は知られたくないの」
「切り落とした人狼の首は火のなかに投げ込むのよ」
美智子は残酷なことを平気でいえる女ではない。
人狼との戦いに賭ける美智子の覚悟のほどが読みとれる。
道場まで侵入して、負傷者や老婆をむさぼり食らった。
許せるはずがない。
この敵を滅ぼすためにはいかようにも冷酷になれる。
過酷になれる。
首は火に投げ込む。
そうすれば、さすがの人狼もよみがえれないだろう。
美智子が、祥代にいいながら扉を開けた。
先頭にたって人狼の首を両手に扉をでた祥代が立ち止まっている。
凍り付いている。
まだ燃え盛っている火炎に気おされしたのか。
「どうしたのよ」
うっと妻が獣のような声をだした。
祥代が両手にさげた首をふたつ同時に取り落とした。
人狼の首が祥代の肩からはえている。
炎を逆光線にあびているがボスだ。
わたしにむかって笑ったようだ。
そのまま、祥代がずるずると庭に引きずりだされた。
食いちぎられる。
わたしはよろけながらその後をおった。
だが、わたしよりもはやく反応したものがいた。
獣の形をしていた。
もはやひとの形はとどめていなかった。
「玉藻。おまえか? 再生していたのか」
ボスが口をきいた。
祥代が大地にたたきつけられた。
ばさっと音をたてて倒れた。
玉藻がボス狼に食らい付いた。
圧倒的な俊敏さだ。
ボスは避けることもできなかった。
首筋にくらいつかれた。
必死で玉藻をふるい落とそうもがいている。
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