温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

神戸市兵庫区 朝日温泉

2014年08月21日 | 兵庫県

神戸の古くからの歓楽街である新開地から程近い銭湯「朝日温泉」では、その名の通り温泉に入ることができ、しかも自家源泉を掛け流しているらしいので、どんなお湯か体感すべく、実際に訪問してまいりました。JRの線路の傍に位置しているのですが、最寄り駅としては神戸高速の新開地駅の方が近いようです(私はJR駅から歩きました)。外壁には「掛け流し 100%源泉」「湯元天然温泉」といった文言が踊っています。


 
建物の1階はピロティーの駐車場となっており、番台や脱衣室は2階、浴室は3階といった感じで、1フロアずつ上がってゆく構造です。入口には源泉を落とす岩のオブジェが置かれていました。阪神エリアの温泉銭湯ではこのように源泉のお湯を落として「うちはホンマもんの温泉でっせ」と言わんばかりにアピールしているところが多いですね。このオブジェを右に見ながら階段を上がって2階の番台へ。



料金は現代的な券売機で支払うのですが、下足は昔ながらの松竹錠の下駄箱に預けます。そして券と木板の鍵を番台に差し出すと、引き換えに脱衣室のロッカーキーを手渡してくれます。番台の隣には飲食を提供するカウンターが設けられているのですが、ソフトドリンク類の他、アルコール類が結構充実しており、まるで赤提灯のような雰囲気でした。前々回の記事で取り上げた尼崎「築地戎湯」でも述べましたが、銭湯で大っぴらにお酒を出すところって、関東ではあまり見られません(スーパー銭湯を除く)。あくまで個人的な印象ですが、関西では庶民生活とアルコールとの距離が、関東よりも近いような気がします。
そんなカウンターを左に見ながら脱衣室へ。足元には茣蓙が敷かれており、たくさんのロッカーが設置されています。上述のようにロッカーキーは番台で渡されますので、その時点で番号は指定されます。複数台の扇風機や床置型のエアコンも用意されているので。湯上り後のクールダウン対策も万全です。ロッカーを開けて着替えながら天井を見上げると、室内に何台かの防犯カメラが設置されているのを発見(ダミーかもしれませんが)。ちゃんと鍵が掛けられるロッカーがあるというのに、そこまでしないといけない事情があるのかもしれませんね。
室内には温泉分析表の他、湯使いに関する細かな説明が表示されており(上画像)、施設側のお湯に対する誠実な態度が伝わってきます。これによれば、浴室内にある浴槽のうち「源泉浴槽」は毎分30リットル投入の完全放流式であり、これと別にある「温泉浴槽」は新鮮源泉を投入しながら、循環加温消毒も実施しているとのこと。


 
脱衣室から裸のままで雑居ビルの非常通路ような階段を上がって3階の浴室へと向かいます。慌てて昇り降りして滑らないよう注意!


 
銭湯という生活の汗を流す場所だけあって洗い場の数は多く、ブース数は24ヶ所あり、いずれも水やお湯のオートストップ式水栓とシャワー付きの単水栓(お湯のみ)が取り付けられています。その一方で、銭湯料金で利用できるお風呂にもかかわらず、据えられている浴槽の種類は多く、上述の「源泉浴槽」や「温泉浴槽」の他、敷地内で汲み上げている鉱泉の「黒の泉」、真湯の「電気風呂」や「泡風呂」、そして別途料金を要するサウナなどなど9種類の設備を楽しめるんだとか。これだけのお風呂を兼ね備えたスーパー銭湯でしたら、銭湯料金では利用できませんから、こちらの浴場はコストパフォマンスがかなり優れていますよね。


 
洗い場の傍にある黒いお湯が張られた浴槽は、その名も「黒の泉」といい、敷地内から汲み上げている鉱泉を使っているんだとか。深さは1メートルもあり、43~4℃という熱めの湯加減でした。ネームプレートには「有馬の湯と同じ」と記されており、確かにこげ茶色に濁る透明度20~30センチのお湯は有馬温泉に似ているような気もしますが、有馬のようなしょっぱさも無ければ金気も決して多く無く、どちらかと言えば重曹泉っぽい感じであり、色以外には掴みどころが少ない上に塩素臭も漂っており、見た目やネーミングの印象とはかけ離れた、いまいち面白みに欠けるお湯でした。こんな私の見解を裏付けるかのように、「源泉浴槽」や「温泉浴槽」、「泡風呂」など他の浴槽は他の入浴客も頻りに利用しているにもかかわらず、この「黒の泉」は悲しいくらいに敬遠されていました。


 
いくつもの浴槽がある中で、私が気に入ったのは言わずもがな「源泉浴槽」でした。3人サイズの槽には30℃ほどの源泉が手付かずの状態で供給されており、隅っこの湯口から投入されている分と見合った量のお湯が手前側ステップより溢れ出て排湯されていました。館内表示の「完全放流式」という文言に嘘偽りは無いようです。お湯は薄い黄色を帯びたささ濁りで、湯中では湯華がたくさん浮遊しており、明瞭な金気の味と匂い、そしてほのかな苦味が感じられました。

30℃前後の温度ですから、入りしなこそちょっと冷たいのですが、一度肩まで浸かっちゃうと、あまりの気持ち良さや爽快感の虜になって、出られなくなってしまうこと請け合いです。そして特筆すべきは泡付きの激しさでしょう。湯船に浸かって1~2分もすれば全身に気泡が付着しはじめ、5分以上浸かり続ければ、既に付着している気泡が新しい気泡によって拭われてしまうほど、大粒の気泡によって全身が覆われ、肌の上をシュワシュワ感が走ってゆくのです。この気持ち良さがお客さんの心を掴んで離さず、他の浴槽は空いていてもここだけ混んでいることもあり、浴槽のキャパシティが小さいのであまり長湯できませんが、私は今回、混み具合を考慮しながらその都度譲ったり入ったりを繰り返し、なんだかんだでこの湯船に都合一時間以上浸かり続けてしまいました。都会の真中でこんな爽快なお湯が掛け流されているだなんて、ご近所の方が羨ましい限りです。


巳泉の湯
単純温泉 30.8℃ pH6.8 508L/min(動力揚湯) 溶存物質0.784g/kg 成分総計0.794g/kg
Na+:191mg(86.56mval%), Mg++:5.9mg(5.06mval%), Ca++:10.4mg(5.41mval%),
Cl-:87.6mg(26.52mval%), HCO3-:412mg(72.46mval%),
H2SiO3:61.7mg, CO2:9.9mg,

新開地駅より徒歩7分(600m)、JR神戸駅より徒歩10分(約1km)
兵庫県神戸市兵庫区永沢町2-3-3  地図
078-577-1836
ホームページ

7:30~0:30 水曜定休
420円(2014年4月以降)
ロッカー・ドライヤー(有料20円/3分)あり、石鹸等販売あり

私の好み:★★+0.5
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西宮市 双葉温泉

2014年08月20日 | 兵庫県
 
西宮の山手幹線沿いにある「双葉温泉」は、道路に面した大きな看板がよく目立つ、一見何てことのない銭湯ですが、お湯の質には定評があり、しかも露天風呂も備わっているらしいので、今回是非行ってみたかった温泉のひとつでした。場所自体はJRや阪急の線路に近いのですが、残念ながら両線ともちょうど駅と駅の中間にこの温泉が位置しているため、駅としては最も近い阪神西宮から歩いて現地へ向かうことにしました。


 
駐車場入口には源泉を落とすオブジェがあり、その傍らには掘削深度や源泉温度、湧出量などが記されたプレートが掲示されています。ご多分に漏れず、こちらも阪神大震災後にボーリングして温泉を掘り当てた銭湯の一つなんだそうです。


 
こちらの銭湯は午後3時からの開店でして、私は混雑を避けるべく3時開店から間もない時間に訪れたのですが、口開けのお風呂を狙いたい気持ちはどなたも同じらしく、早くも玄関前には自転車がたくさん停められており、私の後からも自転車に跨った爺さんやおばちゃんが次々にやって来ました。
玄関内の券売機で湯銭を支払い、券をカウンター式の番台に差し出します。番台の奥には小さな休憩スペースがあり、そこに置かれているショーケースには温泉分析表やボーリングのコア、そして掘削作業中の写真が展示されていました。


 
脱衣室は典型的な銭湯のそれであり、広くてノビノビできる室内では、早くもお風呂から上がったお客さんたちが団扇を仰ぎながら談笑し、そしてテレビの野球中継に歓声を上げつつ、ゲームの行方に一喜一憂していました。

銭湯ですので内湯がメインであり、広い浴室内には様々な設備が用意されていますが、仕事や生活の汗を流すことが銭湯の一番大きな役目ですから、洗い場がたくさん設けられており、いくつかのブロックに分かれて水栓が計23基取り付けられていました(今回は混雑のため撮影は自粛しました)。

温浴槽は3つあり、うち2つには温泉が、残り1つには真湯が張られています(この他、水風呂や有料のサウナもあります)。最も手前側にある半円形(画像左(上))は温泉槽のひとつでして、容量としては2~3人サイズで、底から人工的にブクブクと気泡をあげており、浴槽の周りは温泉成分の付着によってベージュ色にコーティングされていました。この半円形の奥側には大きな主浴槽があり、こちらには真湯が張られ、泡風呂やジェットバスなど、オッサン達の疲れた体をほぐす設備も稼働していました。

真湯の主浴槽の更に奥、サウナや露天風呂入口の前にも温泉槽があり、こちらは上述の半円形温泉槽より一回り大きな容量(3人サイズ)なのですが、その形状は四角形の一部に潰れた扇形をくっつけたような形容しがたいもので、白黒の市松模様が施された半円形の壁飾りが目印です。こちらは人工的な気泡発生など余計な設備は無く、その代わりに温泉が底面から供給され、窓下の排水口へ溢れ出させていました(湯使いは不明)。


 
街中の銭湯なのに、旅館顔負けの立派な露天風呂を兼ね備えているのが、この「双葉温泉」のすごいところ。10人は余裕で入れそうなゆとりのある岩風呂の周りには、石灯籠の他、もみじや松、そして灌木のツツジなど、日本庭園の定石通りに諸々が配置されており、この趣きある佇まいだけで捉えたら、まさかここが都市の銭湯だなんて信じられません。お湯は岩風呂の奥から落とされており、大小2本が岩の上を滑る沢のように落ちていますが、これらのみならず槽内底面3ヶ所からも投入されており、複数の投入によって浴槽温度の均衡を図っているようでした。


 
温泉が流下する岩の表面は赤茶色に濃く染まっていました。館内表示によれば浴槽内の温度を一定にするため循環装置を用いていると表記されているのですが、縁で口を開けている排水口では絶えることなくお湯が捨てられています。浴槽と直接繋がっていない浴室床の下水口からは、この露天の排水口へ流下する流量の多寡に応じてボコボコと音が上がっていた(空気が抜けていた)ので、少なくとも上画像に写っている露天の排水口は、循環用の吸引口ではなく、下水に直結しているものと思われ、部分的に循環されているものの、かなりの量は掛け流されているのではないかと想像されます。

お湯はやや緑色を帯びた暗めの黄土色を呈しており、ほぼ透明ですがほんのり弱く濁っていうようにも見えます。お湯を手にとって顔に近づけると金気臭と弱ガス臭が嗅ぎ取れ、甘塩味に金気味と土気味、そしてちょっと焦げたような感のある弱い苦味が少々感じられました。端的に言えば、塩気と弱い重炭酸土類泉的特徴がミックスされたような味と匂いです。阪神間の他温泉でよく見られるような泡付きは確認できませんでしたが、スルスルスベスベ浴感が心地よく、入浴中は何度も自分の肌を擦ってしまいました。湯上がりは食塩泉らしいパワルフな温まりが効いてきますが、しばらくして粗熱が抜けると一転して重曹泉らしい爽快感が肌上を走り、一度で2度美味しい浴感を楽しめました。銭湯料金でこれだけ充実した温泉を堪能できるのですから、人気を博すのは当然ですね。


双葉の湯
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 44.0℃ pH7.6 428L/min(動力揚湯) 溶存物質2.465g/kg 成分総計2.482g/kg
Na+:742mg(38.32mval%), Mg++:17.5mg(3.94mval%), Ca++:47.2mg(6.45mval%),
Cl-:868mg(68.09mval%), Br-:1.7mg, HCO3-:698mg(31.81mval%),
H2SiO3:56.5mg, HBO2:18.6mg, CO2:17.1mg,
加水加温消毒なし
循環あり(浴槽内の水温を一定にするため)

阪神西宮駅より徒歩10分(700m)、JRさくら夙川駅より徒歩13分(1.1km)、阪急夙川駅より徒歩13分(1.1km)、
兵庫県西宮市分銅町2-28  地図
0798-22-1067

15:00~23:30(水曜定休)
420円(2014年3月時点)
ロッカー・ドライヤー(有料20円/3分)あり、各種入浴用品は番台にて販売

私の好み:★★+0.5
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尼崎市 元湯・天然温泉 築地戎湯

2014年08月19日 | 兵庫県
 
関西は温泉資源に乏しいとよく言われますが、阪神大震災を契機に銭湯業者によってボーリングが行われると、阪神間の各所で次々に温泉が湧出し、しかもその多くが湯量豊富で泉質も良好であったため、各銭湯では浴室に温泉槽を設け、しかも掛け流しで供用する施設も登場するようになりました。今では温泉ファンも絶賛する一大温泉郷の様相を呈しています。

そこで今回から数回連続で、阪神間を移動しながら、掛け流し浴槽がある温泉ファンから評価の高い銭湯を巡ってみます。今回取り上げるのは尼崎の「築地戎湯」です。尼崎の海側に位置する築地地区は、阪神大震災後に徹底的な区画整理事業が実施されたことにより、整然とした明るい街並みが広がっており、実際に歩いてみて尼崎の海側エリアに対して抱いてしまうネガティブな先入観は、ここで見事に覆されました(※)。震災復興と区画整理にご尽力なさった地元の方々の汗と涙が、そのような街並みを生んだのでしょう。この戎湯は以前から当地で銭湯として営んできたんだそうですが、区画整理の際に温泉掘鑿に成功し、2002年にリニューアルオープンしたんだそうです。このため、庶民の街の銭湯らしくない和風モダンな雰囲気の外観を目にした時には、本当にここで良いのか、一瞬戸惑ってしまいました。
(※)個人的な話で恐縮ですが、私は1985年の日本シリーズ優勝以来、学生時代はトラキチ(アンチ巨人の阪神ファン)を貫いてきた経歴があり(今は違いますが…)、ペナントレース期間中に阪神甲子園球場へ何度も足を運んでおりまして、梅田から甲子園までの阪神沿線、とりわけ尼崎周辺の、「じゃりン子チエ」的な世界に春団治風情のオッチャンが跋扈している独特な街並みや空気感に、東京圏の山の手で生まれ育った学生時代の私は虞れ戸惑い、地元にお住まいの方には大変失礼ながら、このエリアに対して「近寄りがたい場所」という消極的な先入観を抱いていました…。


 
玄関前には源泉をチョロチョロと落とすオブジェが置かれており、手にとって匂いを嗅いでみると、ミシン油のような香りがふわっと漂ってきました。しかも滑らかな肌触りも得られるではありませんか。早くもお湯に対する期待に胸が高鳴ります。
下足箱は鍵がかけられるようになっており、この鍵は退館時まで自分で管理します。下足箱の前には浴室の男女入れ替えが案内されており、この日の男湯は「左」となっていました。左右の浴室には「天然温泉浴槽」「天然温泉露天風呂」「エステバス」が共通して設けられいる他、左側は「高温サウナ」「かたたたき」「ローリングバス」、右側には「塩サウナ」「リラックスバス」といったように、それぞれに差異があるようです。


 
下足場に設置されているショーケースには、温泉分析表の他、温泉掘鑿工事で用いられたと思しきボーリングピットや、あおの穴から取り出されたコアが展示されていました。以前と比べればボーリング工事の費用はかなり下がっていると言いますが、それでも相当な金額を要するはずですから、温泉を掘り当てた際の関係者の喜びは計り知れないものがあったでしょう。

カウンター式の番台があるホールはフローリングで明るく綺麗です。しかも軽食コーナーが併設されており、品書きにはうどんやラーメンの他、ビールやチューハイなどアルコール類も用意されていました。銭湯なのにアルコールを置くという発想は、関東ではなかなかお目にかかれませんね。あくまで個人的な先入観の話ですが、関西って庶民的な街並みのあちこちに煤けた赤提灯がぶら下がっている印象があり(東京で言えば錦糸町・蒲田・京成立石あたりと同じイメージ)、オッサン達の血液の殆どは甲類焼酎かカップ酒で構成されているような気がします。



脱衣室もオフホワイトやブラウン系の色調でまとめられた落ち着きのあるインテリアコーディネートとなっており、室内空間には余裕があるのでストレス無く利用できる上、小窓の向こうには坪庭が施されていてちょっと小洒落ています。なお、衣類や荷物を収める棚は全て無料ロッカーとなっており(その上なぜか監視カメラまで設置)、その側面の張り紙には、この温泉が加水加温循環の無い掛け流しである旨がアピールされていました。



下足箱前の案内にあったように、浴室には多様な浴槽が設けられていますが、内湯で温泉を使っているのは窓側の一槽のみであり、上画像で黄色いお湯が張られている浴槽です。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計18基取り付けられています。洗い場と浴槽がセパレートされているので、シャワーの飛沫やシャンプーの泡が浴槽に混入する心配はありません。なおシャワーから吐出されるお湯は真湯です。これらのシャワーの他、浴室入口付近には上がり湯用の小さな槽も設置されています。


 
こちらは真湯が張られた浴槽でして、左右両浴室に共通の「エステバス」と称する装置の他、左側浴室のみにある「かたたたき」や「ローリングバス」が一角にまとめられていました。いずれも水圧や気泡で体を刺激するものですから、どうしても騒々しいのですが、高度経済成長期に日本を支えてガッチガチに凝り固まってしまったオッサン達の体には、大きな音や強い刺激が加わらないとコリがほぐれないのかもしれません。


 
さて内湯の温泉槽に入ってみましょう。長方形の手前に半円をくっつけたような形状をしている浴槽は大凡7~8人サイズで、一般的な浴槽よりも深い造りになっています(深さ約1メートル)。源泉は円筒状の投入口よりドバドバ勢い良く注がれており、窓側の縁より溢湯して排水口へと流下しています。投入口から落とされる際の勢いが強いためか、湯口周りの底面タイルは温泉成分によって茶色く染まっていました。また、この円筒状湯口の他、槽内の小さな目皿からもお湯が投入されており、これによって槽内の温度を均衡に保っていました。


 
銭湯なのに露天風呂に入れるんですから素晴らしいじゃありませんか。一帯は住宅地ですので、周りは竹垣調のエクステリアによって囲われていますが、日本庭園風な誂えのこの露天ゾーンには、10人近く同時に入れそうな容量のある岩風呂が据えられている他、空間そのものにゆとりが確保されているため、中庭的な場所ながら閉塞感は意外なほど軽減されていました。また部分的に屋根掛けされているので、多少の雨なら凌げそうです。
塀に設置されたデジタル温度計は41.5℃を表示していました。ぬるめのお湯が好きな私にとっては最適の湯加減です。


 

一番奥の大きな岩が並べられた一角から、小さな滝のようにお湯が落とされている他、内湯と同様に底の目皿からも供給されており、以て槽内の温度の均衡を図っているようでした。そして浴槽のお湯は湯尻よりドバドバと惜しげも無く捨てられていました。立派な放流式の湯使いです。


 
お湯は薄い山吹色の透明で、湯中では気泡が沢山舞っており、湯船に浸かると肌にしっかり付着します。お湯を口にしてみると、重曹系のほろ苦さの他に非鉄系の新鮮金気味が感じられ、金気臭やミシン油のような匂い、そしてモール泉に似て非なる匂いや堆肥のような匂いが香ってきました。私が得意とする東日本エリアの温泉で例えるならば、青森県の東北町や三沢界隈、あるいは山梨県甲府盆地のお湯に似た感覚と言えそうです。泉質名こそ単純温泉ですが、決して単純ではなく、重曹泉的な滑らかさと爽快感があって、お湯から伝わる味わいや奥行きも深い、実に面白いお湯でした。しかもこんな良泉が住宅地の真ん中で掛け流されている上、銭湯料金で利用できるのですから驚きです。


単純温泉 42.7℃ pH8.1 430L/min(動力揚湯) 溶存物質0.4343g/kg 成分総計0.434g/kg
Na+:99.7mg(93.57mval%), Ca++3.4mg(3.66mval%),
Cl-:10.7mg(6.54mval%), HCO3-:261mg(92.65mval%),
加温加水循環なし(消毒に関しては不明)

阪神尼崎駅より徒歩10分強(1.0km)
兵庫県尼崎市築地2-2-20  地図
06-6481-5019

平日10:00~24:00、土日祝7:00~24:00、第2・4木曜定休
400円(2014年4月~)(サウナ利用の場合は別途料金必要)
ロッカー(無料)・ドライヤー(有料30円/3分)あり、石鹸など番台で販売

私の好み:★★★
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円山川温泉

2013年12月13日 | 兵庫県
 
前回に引き続き近畿地方の日本海側を巡ります。今回は久美浜温泉や琴引浜露天風呂があった京丹後日から三原峠を越え、港大橋を渡って兵庫県但馬地方の円山川河口へとやってまいりました。この円山川をちょっと遡れば、近畿圏では屈指の温泉地である城崎温泉へ行き着きますが、敢えてそこまで行かず、海への合流を控えて川の流れが淀んでいるその河口で車をとめ、その近くに湧き出る「円山川温泉」へと向かうことにしました。こちらは西日本の温泉ファンから高い評価を得ているんだそうでして、東男の温泉ファンの端くれとしては、普段は縁のない関西の良泉に是非浸かってみたくなり、わざわざここまで足を運んだのでした。


 
川沿いの県道3号線に面して建つ立派な建物が今回の目的地であります。かつては旅館業を営んでいたようですが、現在では入浴営業のみとなっているようでして、その大きな躯体を持て余してるようでした。玄関を入るとすぐ正面にフロントがあり、脇に券売機が立っていますので、それで料金を支払って券をフロントのおじさんに手渡すか、あるいはカウンターに置かれているトレイへ券を置きます。



ロビーの横に広がるこのラウンジは、かつては朝食会場だったのでしょうか。いまでは入浴後にゆっくりする休憩室となっていました。



フロントの裏手に当たるこちらが浴室の入口です。いかにも旅館の大浴場らしい佇まいですね。なおこの手前にはエレベーターが設置されているのですが、使用できないようにエレベータの操作パネルには黒いテープが貼られて閉鎖されていました。


 
脱衣室は広くて、ゆとりのある造りです。清掃も行き届いており、清潔感も問題ありません。訪問時は空調が効いており、快適な環境となっていました。ここでは中央の棚に用意された大きな籠が使える他、ロッカーを使用することもできます。また洗面台は4台あるので、多少お客さんが集中しても特にストレスは感じなくて済みそうですね。



 
浴室は実用本位の白いタイル貼りですが、床にはワインレッドの石板が敷かれており、室内の下部と上部で色調の濃淡差をはっきりさせたことによって(カラーコーディネートの基本ですが)、室内スペースをより広く見せ、明るさと落ち着きを両立させていました。
室内には大きな浴槽がひとつ据えられている他、壁に沿ってL字形に計11基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。


 

浴槽は14~15人サイズといったところでしょうか。湯口から絶え間なくお湯が注がれており、浴槽縁の全辺から万遍なくオーバーフローしていました。湯船の温度は42℃前後の万人受けする湯加減です。槽内には吸引口や供給口など見当たりませんでしたし、源泉温度は43℃ですから、状況から推測するに完全掛け流しの湯使いかと思われます。何よりも、湯口に貼られたプレートに書かれた「この温泉は飲用できます」という文言が、お湯を循環・消毒していない証拠と言えるでしょう。


 
内湯そばのドアを開けて屋外に出ますと、そこは露天風呂ゾーンとなっていました。山の斜面が目の前に迫っているため景色は楽しめませんが、特段大きな壁が屹立しているわけではなく、木々の緑が視界いっぱいに広がっていますので、さほど圧迫感はありません。むしろ湯船の反対側に余剰スペースがあるので広く感じられるほどです。


 
赤茶色の石板が敷き詰められた露天の浴槽は、内湯より一回り小さい12~13人サイズで、隅っこの湯口から泡を伴って源泉が落とされ、切り欠けから床のグレーチングへ排湯されています。湯口では内湯と同じ温度なのですが、外気の影響なのか37~8℃くらいまで下がっており、私のようなぬる湯好きなら長湯できちゃう湯加減でしたが、人によってはぬるくて入っていられなかったかもしれません。とはいえ、これも加温していない証と言えるでしょう。

暗い緑色を帯びた山吹色に濁ったお湯はとっても塩辛く、ニガリ味や土気味、そして弱い金気味も伴っていました。また弱い金気臭や土気臭も感じられました。なにしろ口にした時の塩辛さのインパクトが強いのですが、味覚をよく研ぎ澄ますと、塩気に隠れて2~3番手に、茹で卵の卵黄的な味と匂いが弱いながらも意外と明瞭に感じ取れました。
湯船に浸かってみますと食塩泉的なツルスベ浴感と土類泉的な引っ掛かり感が拮抗するのですが、湯中で何度も肌を擦ってみますと、スベスベの方に軍配があがるようでした。こんな塩辛くて濃いお湯ですから長湯は禁物ですし、湯上がりもかなり火照ります。でも脱衣室でクーラーが効いていたおかげか、嫌味のあるベタつきは無く、程よい温浴効果が持続しました。濃厚で力強いお湯が完全掛け流しで提供されているのですから、温泉ファンからの評価が高いのは当然ですね。わざわざ来てよかったと思える素晴らしいお湯でした。


カルシウム・ナトリウム-塩化物強塩泉 43.1℃ pH不明 512L/min(掘削動力揚湯)
詳細なデータは確認し忘れ…

城崎温泉駅もしくは豊岡駅より全但バスの日和山行に乗って「小島」バス停で下車し、戻る方向で徒歩500m
兵庫県豊岡市小島991  地図
0796-28-3045

11:00~22:30(受付22:00まで) 火曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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