秋田県の秋田市界隈と大館市を結ぶ国道285号線は国道7号線の南側をほぼ平行に走っており、八郎潟から鷹ノ巣までの区間は両地点を短絡しているために山間部の道路にしては交通量が多く、大館能代空港のアクセス道路としての役割も果たしていますが、鷹ノ巣以東は完全に国道7号の裏往還に成り下がり、県道に降格しても不思議ではないほど寂しい沿線風景が続きます。この寂しい区間のちょうど真ん中、北秋田市と大館市の境界付近にポツンと湧いているのが湯の岱温泉です。湯の岱温泉には公営の「湯の岱温泉湯治場」という共同浴場があるのですが、湯治場という風情溢れる名前に強い興味を抱いたので、小雨がそぼ降る某日、ちょっと行ってみることにしました。地味で分かりにくい施設を想像していたのですが、湯屋こそ地味なものの、国道沿いには大きな看板が立っており、沿道には他に目立つ建物もないため、迷うことなく辿りつけました。
村落の公民館や集会場のような、古くて小さな建物に入り、受付のおばあちゃんにお金を直接支払います。「湯治場」という名称ですが、実際には入浴と休憩のみの営業のようです。男湯は玄関の正面右手にあり、さらにその右奥には有料の休憩室が設けられています。
脱衣所は至ってシンプルな造り。扇風機や灯油ストーブが用意されているのはありがたいですね。
お風呂は男女別の内湯がひとつずつ。タイル貼りの浴室の真ん中には、まんまるい湯船が据えられており、そのサイズは3~4人サイズ。塩ビの湯口から加温された源泉が投入され、手前側の切欠から排湯してゆき、人が湯船に入ると、ザバーっとお湯が勢いよく溢れ出ます。加温されているのに、ちゃんと放流式の湯使いを維持しているのは立派ですね。
洗い場にはシャワー付き混合栓が6基設けられています。
お湯は薄い黄緑色(黄色が強い)を帯びて濁っていますが、それほど強い濁りではなく、底ははっきり見えます。口に含むと石膏味と弱芒硝味を確認できましたが、匂いは弱めの芒硝臭以外はあまり感じられず、塩素消毒されているそうですが、それらしき臭いも気になりませんでした。硫酸塩泉らしいキシキシと引っかかる浴感です。
日曜午前10時過ぎで、先客3人がいらっしゃいましたが、その後は独占状態となりました。見かけたお客さんは皆お年寄りばかりで、一日の合計客数もそんなに多くなさそうです。施設の古さや客層・客数は斜陽という言葉がピッタリ。近所には「長寿の湯」という使い勝手の良い入浴施設もあり、そちらを利用する人の方が多いのでしょうから、こちらは早々にも休業しちゃうのではないかと、勘繰りたくなってしまいたくなりました。
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 31.6℃ pH7.9 溶存物質1219.4mg/kg 成分総計1220.5mg/kg
加温・塩素系消毒剤投入あり、循環・加水なし
秋田県北秋田市小森湯ノ岱63 地図
0186-66-2941
10:00~21:00 第2・4月曜定休
300円
ロッカー・ドライヤーあり、他備品類なし
私の好み:★★