約2年前の古いレポートですが、ネタとして本格的に腐る前に蔵から出しておきたいので、何卒ご了承を。
ローカル線好きな人なら誰しもが乗りたがる鉄道路線のひとつに、飯田線が挙げられるでしょう。普通列車を全線乗り通して6時間を要すること、険しい峡谷を縫うように走るルート、秘境駅の存在など魅力的な要素を多く擁しているのですが、残念ながら温泉ファンを満足させてくれる温泉には恵まれていません。数ある飯田線の駅の中で唯一温泉を名乗っているのが「湯谷温泉駅」ですが、その温泉地ではどんなお湯に出会えるのか、初冬の某日、飯田線を乗り潰すついでに途中下車してみることとしました。
新城駅から天竜峡行普通列車に乗車。運転台直後の客室は荷物専用スペースになっていました。山間を走る電車なのに、走行音は昭和の通勤電車の象徴である国鉄103系とほぼ同じ。それもそのはず、MT55A主電動機・DT33台車・歯車比6.07など、足回りは103系とほぼ同じ仕様なんですね。険しい渓谷を走る電車と都会で満員の乗客を乗せる電車が同じ走行音というのも変な話ですが、東京圏から103系が消えてから久しいので、久々に103系的な爆裂サウンドが聞けて、個人的には嬉しかったなぁ。でも103系と全く同じでもなく、たとえばMGの唸りやCPの作動音、ブレーキ解緩音などは明らかに異なり、近郊型車両っぽさが出ていました。
なお飯田線の普通列車に用いられているこの119系は、2011年下旬から徐々に淘汰されてゆく予定なんだそうです。全国見渡しても119系が走っているのはここ飯田線だけ。国鉄末期から走り続けてきたこの電車に乗れるのは今のうち。
湯谷温泉駅に到着。手でドアを開けて、1線1面しかないホームへ降車します。下車したのは私を含め5人程度。客を下ろすと、列車はそそくさと谷の奥へ消え去って行きました。
木造の駅舎は、一見すると醸造業者の古い倉庫みたいで、あまり駅舎っぽくありませんね。窓が板で塞がれており、大きな建物でありながら、あまり有効活用されていない様子。
古典的な歓迎ゲートを潜って温泉街へ。この手のいかにも昭和な雰囲気のアーチは、かえって鄙びた感じを醸し出しますね。
湯谷温泉は開湯1300年の歴史を有しているんだそうでして、宇連川に刻まれた三河地方屈指の景勝地である鳳来峡に沿って温泉街が形成されています。川底の岩はまるで板を敷いているかのように平べったく、それゆえに板敷川という別称もあるんだそうです。景勝地とはいえ、どこへ行っても人工物が目に入ってくるので、あまり秘境という趣はありませんが、紅葉の盛りにはそれなりに絵になる景色が広がりそうですね。
さて今回入浴するのは「ゆかわ」というお店。駅前のゲートを潜ってすぐ右斜め前にあります。こちらは本来は炭火焼の料理屋さんなのですが、露天風呂を併設しており、そのお風呂で立ち寄り入浴を受け付けています。
門をくぐって敷地に入り、階段を下って食堂の受付で料金を支払い、更に階段を下りていきます。お風呂は男女混浴の露天風呂と女性専用風呂の2つがあり、男性は否応なく混浴の利用となります。脱衣所は掘っ立て小屋みたいな質素な造りで、露天風呂で入浴中の客から内部が見えてしまうような開放的な構造でした。でも女性用更衣室はちゃんと仕切られていましたよ。
渓谷に面した縦長の露天風呂は、頭上を屋根が覆い、川側も簾などが架かっていますが、鳳来峡の眺めはバッチリです。温泉にあまり恵まれていない三遠南信地方にありながら、眺めの佳い渓谷の露天風呂で、しかも混浴なんですから、お客さんの注目を集めるのは当然かもしれず、私の訪問時には御夫婦と思しき男女二人連れが3組も先客として湯浴みなさっていました。女性の方はタオルで全身を巻いていらしたので、タオル使用可なお風呂なんですね(有料で巻きタオルをレンタルできます)。ただ、私の見落としかもしれませんが、洗い場にカランやシャワーらしきものは見当たらず、このために掛け湯せずにいきなり湯船へ入ってしまう輩も見受けられ、その点がちょっと残念でした。なお女性専用風呂もこの混浴風呂と同様に河岸の崖に設けられていますが、伝え聞いたところによると、思いっきり遮蔽されて景色は殆ど楽しめないんだそうです。
お湯は浴槽一番奥の筒から注がれており、薄い黄褐色を帯びて微かに濁っており、赤茶の小さな浮遊物が浮遊しています。ほんのり塩味が感じられ、匂いはほぼ無臭でした。2つの源泉を混合して使用しているようですが、加温循環消毒されており、お湯から鮮度感はあまり感じられません。というか思いっきり鈍っていました。成分濃度のわりに知覚が弱いのは循環されているからか、あるいは加水して薄めているからか…。源泉温度や供給面から考えれば、加温循環消毒という管理方法は止むをえませんし、地理的条件から考えてもこの地域に源泉掛け流しを期待してはいけませんね。眺めの良さを以て満足すべきお風呂だと思います。
ここで使われている源泉は温泉地内の他の宿にも引湯されているのですが、宿によって湯使いが異なり、中には非循環で提供しているところもあるらしいので、もし再訪する機会があれば、他のお風呂にも入ってみたいものです。
「ゆかわ」とは全く無関係ですが、温泉街から踏切を越えたところには、有料で源泉水が汲める温泉スタンド(100Lで100円)、そして無料で利用できる足湯がありました。足湯は2008年に開設されたんだそうでして、この日も多くのお客さんで賑わっていました。足湯には7号泉が用いられており、利用可能時間は9:00~18:00です。
ひとっ風呂浴びてさっぱりした私は、この駅から鈍足の特急「伊那路」で一気に天竜峡へと向かいました。
5号泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 28.4℃ pH不明 溶存物質1.145g/kg 成分総計1.153g/kg
Na:240mg(57.22mval%), Ca:145mg(39.67mval%), Cl:585.0mg(89.05mval%)
(思いっきりボケた分析表の画像から読み取っているので、上記数値には誤りがある可能性大です)
7号泉(新源泉)
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 35.9℃ pH8.1 溶存物質3.090g/kg 成分総計3.094g/kg
Na:648mg(53.45mval%), Ca:464mg(43.89mval%), Cl:1800mg(97.30mval%)
加水・加温・循環・消毒あり
JR飯田線・湯谷温泉駅より徒歩1分
愛知県新城市豊岡滝上5-1
地図
0536-32-1508
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10:30~17:00(水曜は~15:30)(食事は19:00まで。LO18:00。水曜のみ16:00まで)
木曜定休(祝日の場合は営業)
800円(食事すれば無料)
シャンプー類あり
私の好み:★+0.5