温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

泰安温泉郷 虎山温泉会館

2013年04月18日 | 台湾
 

前々回・前回に続いて台湾苗栗県・泰安温泉郷の温泉を巡ります。今回は温泉郷の入口に位置している「虎山温泉会館」です。河岸の絶壁にしがみつくようにして設けられた2層式の駐車場に車を止めて、吊り橋を渡って温泉へと歩いて向かいます。「虎山温泉会館」は川の大きな中洲に建てられているんですね。


 
長い吊り橋の先は、とても中洲と思えないほど広く、木々が鬱蒼と茂っています。



橋を渡りきったところでは、飼われているアヒルたちが私の姿を見るやいなやグワッグワッとけたたましく騒ぎはじめました。番犬ならぬ番禽といったところでしょうか。


 
木立に囲まれた静かで緑豊かな敷地です。まずは総合受付で料金を支払い、「泡湯券」を受け取ります。



総合受付の左手前に温泉棟の入口があり、そこのカウンターで券を差し出すと、貸バスタオルとともにミネラルウォーターを手渡してくれました。受付のお兄ちゃんは宍戸開を10歳くらい若くしたような顔立ちで、お風呂は「很熱(とても熱い)」だから水を2つ持っていけと笑顔を浮かべながら頻りに奨めてくれました。なおミネラルウォーターは自由に浴室へ持ち込んでOKのようです。


 
脱衣室はこんな感じでちゃんと手入れされており、ロッカー(10元有料)やドライヤーも完備されています。なおこちらのお風呂は裸で入浴しますので、日本人には嬉しい限り。そういえばこの日に泰安温泉郷で入った温泉は3箇所とも全裸入浴でした。台湾でも日式(日本式)の全裸入浴が本格的に市民権を得てきましたね。


 
浴室は広々としており、いろんな浴槽が設けられています。手前側の曲線を描いている2つの浴槽はいずれも温泉が張られた温浴槽でして、高温と中温に分かれており、温度計は42.3℃および43.2℃と表示していましたが、私の体感ではこれより0.5℃ほど低かったように感じられました。


 
画像左(上)が温浴槽で、右側が高温(43.2℃)、左側が中温(42.3℃)の設定です。両浴槽とも槽内の穴からお湯が供給され、同じく槽内にて吸引されており、加温及び循環に近い湯使いが行われているものと思われますが、浴槽縁から溢れるお湯も多いので、新鮮な源泉も常時投入されているのでしょう。お湯の鮮度は決して悪くなく、寧ろ高温槽ではなかなか良い感触が得られました。
お湯は無色透明でほぼ無臭なのですが、重曹味と共に弱いながらもはっきりとした塩味が感じられ、ヌルヌルまでは及びませんがそれに近いはっきりとしたツルツルスベスベ浴感を楽しむことができる、しっかりとした知覚的個性を有したお湯です。

なお、画像右(下)のカクカクした形の浴槽は水風呂です。常夏台湾の温泉施設に水風呂は欠かせません。



台湾ではお馴染みの沖撃浴、つまり打たせ湯も設けられています。



こちらはシャワーブース。浴室の広さの割りにはシャワーの数が少ないのですが、とにかく入浴前はこちらで体をしっかり洗いましょう。


 
裸で入浴するお風呂でありながら露天風呂が用意されているのは、台湾においては貴重かもしれません。中洲という外界の視線を気にせず済むような立地だからこそ可能なのかもしれませんね。露天の浴槽では内湯と同じく槽内でお湯の供給や吸引が行われており、湯加減はちょっとぬるめの37~38℃くらいに設定されていました。お湯の鮮度や浴感は内湯より劣っていましたが、その湯加減ゆえに体に負担なく長湯することができ、川から吹き込んでくるそよ風を感じながら、スッポンポンのまんまでのんびり過ごす一時は実に爽快でした。

料金が少々高めである点は気になりますが、お湯の浴感は良いですし、設備面もまずまずなので、温泉にうるさい日本人でも満足していただけるのではないでしょうか。


碳酸氫鹽氯化物泉(ナトリウム-炭酸水素・塩化物泉)
41.4~42.2℃(50℃(*)) pH7.5
HCO3-:1860mg(*), 総溶解個体量2660mg(*)
(*)印の数値のみ、別の分析表より抜粋(2007年12月31日のデータ)

苗栗県泰安郷圓墩73号  地図
037-941001
ホームページ

10:00~22:00
300元
ロッカー(有料10元)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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泰安温泉郷 泰安警光山荘

2013年04月17日 | 台湾
 
泰安温泉は近年になって大型のリゾート型温泉ホテルが誕生しており、観光地として脚光を浴びるようになったのは比較的最近のことなのですが、温泉そのものは日本統治時代から存在しており、当時は上島温泉と称されていたんだそうです。その上島温泉の伝統を受け継いでいるのが、泰安温泉の最奥に位置している「泰安警光山荘」です。「警」の字が含まれていることからもわかるように、警光山荘とは警察職員のための保養所であり、台湾全土には10箇所以上存在しているのですが、ここ泰安の他、南投県の廬山、台中市の谷関、泥湯でおなじみの関子嶺など、温泉を擁する施設もあって、いずれも源泉に近いロケーションで素晴らしいお湯が堪能できることで知られています。さすが、国家の権力機関だけあり、美味しいところはきっちりとおさえているんです。


 
保養所とはいえ警察関係の施設ですから、各地の警光山荘はあまり一般客に公開されていないようですが、なぜか泰安の警光山荘は入浴利用の他に宿泊までできちゃうんだそうでして、実際にこちらでリーズナブルに宿泊なさった日本人の方の旅行記もネット上で散見されます。今回は宿泊ではなく入浴のみで利用させていただきました。受付の係の方は私の姿を見るや「日本?」と即座にこちらの素性を見破り、「泡湯ヒャクゲン」と言って入浴券を手渡してくれました。意外にも日本人客が多いのかもしれませんね。どうでもいいことですが、券に写っている入浴中の後ろ姿が女性じゃなくてオッサンなのは何故かしら? 普通は若いオネエチャンじゃねぇのかなぁ…。

宿泊施設というより古い病院のような薄暗くて装飾性の無いロビーから真っ直ぐ伸びる廊下の突き当たりに、赤と青の暖簾が見えます。


 
 
廊下の両側には日本時代に撮られた当地の警察の写真や統治機構に関する説明がずらりと並べられています。当時の日本は理蕃政策をすすめるためにどんな僻地に対しても警察の派出所を置いたわけですが、派出所こそ戦後に国民党政権によって壊されたものの、台湾全土に対して張り巡らせた統治機構の網はその後の社会の基礎となり、何だかんだで国民党の施政でも都合よく活用されたのでしょうね。泰安温泉の東に聳える山岳地帯を南北に縦貫していた北坑渓古道という古道には、台湾総督府の手によって5kmおきに派出所が置かれ、霞喀羅(シヤカロ)事件を起こすほど日本の支配に対して強く抵抗していた当地のタイヤル族を屈服させるべく目を光らせていたんだそうですが、当地の歴史にとってこの古道エリアに対する当時の日本の政策は非常に大きなインパクトだったようで、各派出所の写真や説明図が廊下で大きく掲示されていたことは、私にはとても印象的でした。



廊下を真っ直ぐ進めば浴室ですが、いきなり目的地に食らいつくのは少々野暮ですから、ちょっと脇にそれて建物から出てみましょう。本館とは別に宿泊用の棟が建っており、病院のような無機質な本館と異なりその宿泊棟は良い雰囲気のようでした。


 
翻って浴室のある本館の方を見てみますと、「旭湯楼」と書かれた扁額の他、「泰安第一湯」と揮毫された札が誇らしげに提げられていました。今ではいくつもの旅館で湯浴みを楽しめるようになった泰安温泉郷ですが、その端緒は戦前から存在していたここ「警光山荘」のお湯なんですから、「第一湯」と名乗るに相応しい矜持があるのでしょう。
余談ですが、私が大学の第2外国語で選択した中国語の授業では、「湯」といえばスープのことであり、"hot water"という意味は無いと習ったのですが、日本の文化を積極的に取り入れている台湾に限っては事情が異なり、近年になって温泉入浴がレジャーとして普及してゆくと、次第に日本語と同様の「温泉(お風呂)のお湯」を意味するようになったんだそうです。


 
暖簾を潜って脱衣室へ。室内はちょっと窮屈で棚の数も多くないのですが、こちらのお風呂では裸で入浴しますので、日本の温泉と同様に心置きなくスッポンポンになりましょう。



お風呂はこの内湯のみです。装飾性の無い質実剛健とでも言うべき実用本位の造りで、なぜか室内にはトイレが併設されていました。台湾では水回りを全て一括りにしようとする発想があるのか、シャワーとトイレが一緒になっていて両者の間に仕切りが無く、シャワーを使うとトイレまでビショビショになってしまう旅館や民宿が多いのですが、こちらのお風呂も同じような設計思想によって造られたのでしょうね。
山荘は川を臨む高台に建てられており、浴室の窓はまさにその川の方に面しているのですが、ガラス窓にはスモークが貼られているため、残念ながら入浴しながら渓谷を眺めることはできません。

浴槽は20人近くは同時に入れそうなほど大きなものでして、槽内には青い濃淡のタイルでモザイク模様が描いています。槽内側面の穴から時々泡を上げながら源泉が投入されており、そのお湯とともに膜が千切れたような薄い茶色の細かい浮遊物が吐き出されていました。お湯は無色透明で、42~3℃程の日本人向きな湯加減です。湯使いについては不明ですが、特に槽内吸引などは見当たらず、浴槽のお湯は窓側へ溢れ出てそのまま排湯されていました。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭の、掴みどころが少ないものなのですが、癖が少ないので体への負担は軽く、またサラサラスベスベな浴感が爽快でした。


 
洗い場にはシャワーが5~6基取り付けられているのですが、その設置間隔が狭いため、一度に全てを使うことは無理でしょう。シャワーから出るお湯はかなり熱く、また普通のお湯とはちょっと違うような感触が得られたので、おそらくこの熱いお湯は源泉かと思われます。
シャワーの上には、温泉を飲むことなかれ、水着を着て入浴する事なかれ、と書かれた注意書きが掲示されていました。

温泉風情はいまひとつですが、日本統治時代から浴用として愛されてきたこの温泉に浸かれたことは、日本人として非常に感慨深いものがありました。そんな小難しい話は抜きにしても、広いお風呂でサッパリとした少々熱めのお湯に裸で入れるのですから、熱い温泉が好きな日本人としては喜ばしいですよね。


苗栗県泰安郷錦水村9鄰18号  地図
037-941175

100元
ボディーソープ・ドライヤーあり

私の好み:★★
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泰安温泉郷 騰龍温泉山荘

2013年04月16日 | 台湾

苗栗県の泰安温泉郷は近年台湾で人気を集めている観光地なんだそうですが、路線バスの便が宜しくないため、数回に亘る私の訪台でもこれまで当地を訪れる機会はありませんでした。でも今回はレンタカーを借りましたから交通面の心配は一切不要、念願叶って当地で温泉をハシゴすることにしました。
前回取り上げたイチゴの名産地である大湖を抜けて、文水渓という大きな川に沿って一本道を東進すると、やがて風光明媚な山河の景色がフロントガラスいっぱいに広がって来ます。緑豊かで渓谷の清流も美しく、そんな環境で温泉も湧出するのですから、人気を博するのも頷けます。

泰安温泉郷は旅館が蝟集しているような温泉街は形成されておらず、比較的大きな規模の施設が山の緑に隠れるようにして点在しているのですが、唯一温泉街に近い雰囲気を漂わせているのが騰龍温泉エリアです。今回の目的地は吊り橋の対岸で緑に埋もれるように構えている「騰龍温泉山荘」でして、当エリアでは最も古い温泉旅館なんだとか。なお吊り橋をわたらなくても、並行して架かっている立派な橋を使えば車ですぐ下の駐車場まで行けます。


 
竜が騰(あ)がると書いて「騰龍温泉山荘」。上昇をイメージされる縁起の良い名前ですね。渓谷を望む高台に建てられており、灌木の花々がエントランスの周囲を彩っていました。正面に建つ本館は宿泊棟兼食堂でして、入浴客は「泡湯区」と記された看板に従って本館の裏手にある温泉棟へ直接向かいます。



敷地内には宿泊用ロッジがたくさん。


 
温泉棟は、その外観から推測するに営業を開始してからまだあまり年月が経っていない比較的新しい建物であると思われます。畳や○○のみならず、なんでも新しいものは良いですね。こちらには大浴場と家族風呂があり、いずれの場合も上画像に写っている受付で料金を支払うのですが、その際にロッカーキーの使用に対するデポジットとして料金の他に100元が求められます。もちろん退館時には返却されますのでご心配なく。なお受付へ至るまでの間に数箇所で「押金100元」と書かれた札が掲示されているのですが、押金とはそのデポジットのことを示しているわけです。余談ですが、マカオのカジノ周辺では質屋さんが大きなネオンサインで「押」の一文字を掲げていますが、この場合の「押」の字も同じような意味合いなんですね。


 
受付でロッカーキーと貸バスタオルを受け取り、男湯の暖簾を潜って更衣室へ。
室内はとっても綺麗で清潔感にあふれています。
こちらのお風呂は全裸で入浴するお風呂ですから、水着は不要ですよ。


 
広々としていて清潔な浴室は、シックな色合いの内装や抑え気味に設定されている照度のために、落ち着いた大人の雰囲気を漂わせています。また文水渓に注ぐ支流の川に面しており、川側には鎧戸が設置されていてガラスなどによる遮蔽が無いため、外気と一体になった半露天のような造りになっており、川から入り込んでくるそよ風がお湯で火照った体をクールダウンしてくれるので、とっても心地良く快適に湯浴みすることができました。

洗い場にはシャワーが9基設置されており、この水栓からは源泉のお湯が出てきます。結論から申し上げますと、浴槽よりもシャワーから出てくるお湯の方がはるかに知覚面が強く、ゆでたまごの卵黄的な匂いと味が明瞭に感じられました。


 
主浴槽は2つあるのですが、更衣室側の槽には熱い風呂に慣れている日本人でも熱く感じる44℃のお湯が張られており、私の後から入ってきた若者達はつま先をちょこっと入れただけで熱さにおののいていました。湯口のパイプから吐出されるお湯の投入量は多く、湯使いは不明ですが、浴槽の踏み込みの切り欠けからしっかりとした量のお湯が溢れ出て排湯されていますので、少なくとも半循環かそれ以上の湯使いなのだろうと想像されます。湯口から注がれるお湯は無色澄明で、シャワーと同様にタマゴ的な味と匂いが感じられ、湯船に浸かるとツルツルスベスベの爽快な浴感が全身を包んでくれました。



熱い浴槽の隣にぬるい槽が設けられているのですが、ぬるいと言っても温度計は41.6℃を表示していました。台湾の方はどちらかと言えばぬるいお湯を好む傾向にありますから、こんな熱くしてお客さんから文句は来ないのでしょうか。ま、私にとっては適温なんですから問題無いんですけどね。裸になる入浴スタイルばかりか湯加減まで日本の入浴文化に倣っているのかもしれません。こちらの浴槽は間違いなく加水されており、シャワーや熱い槽に比べてお湯から得られるタマゴ感は衰えていましたが、熱い浴槽同様に切り欠けから惜しみなくお湯が捨てられており、鮮度感はなかなかの状態でした。



水風呂やジェットバスも設けられていますから、いわゆる台湾のSPA的な楽しみ方もできます。熱いお風呂で軽くのぼせても、水風呂へ一気にドボンと浸かればとっても爽快です。

綺麗で落ち着いた雰囲気の中、裸で入浴することができ、しかもお湯は硫黄らしさがしっかり感じられる浴感の良いものですから、入浴料金は少々高めですが、当地に数ある温泉施設の中から敢えてこちらを選択する価値は充分にあるかと思います。おすすめ。



お風呂から上がるとちょうどお昼時でしたので、吊り橋を渡った対岸にある原住民のお店(おそらく「騰龍温泉山荘」とは無関係)で、猪肉と野菜の炒め物をいただきました。ちょっと日本語の話せるお母さんが強い火力で炒めてくれた料理は、程よい味付けとシャキシャキとした食感が味わえ、なかなか美味でしたよ。


泉質名不明

苗栗県泰安郷錦水村横龍山5  地図
037-941002

営業時間不明
280元(貸しバスタオル付)
ロッカー(100元デポジットが必要)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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大湖郷 大窩温泉

2013年04月14日 | 台湾
 
苗栗県の大湖郷は台湾随一のイチゴの名産地。幹線道路沿いで営業している多くの観光農園は、通行客の目を惹くべく、大きな看板を出して己の存在をアピールしています。


 
バス停にも大きなイチゴが飾られていました。とにかく街中イチゴだらけなんです。私が当地を訪問したのは3月の中旬でしたが、バス停真裏の畑では収穫期を迎えたイチゴが鈴なりでした。


 
観光農園に集まるお客さんの目当てはイチゴ狩りをすること。どの畑でも皆さん夢中になってイチゴを摘んでいました。


 
イチゴ狩りをしなくても、店頭に並んでいるイチゴを買うだけでも勿論OKです。箱には形の良い大粒のイチゴがギッシリ詰め込まれており、一箱200元ですから日本円に換算すると約600円ですね。ボリュームとしては日本のスーパーマーケットで売られているパックの倍はありますので、日本と比べると相当お買い得でした。実際に購入して食べてみますと、酸味が抑えられている代わりに甘さが強く、とっても美味しかったですよ。


さて私がこの大湖へやってきたのはイチゴが食べたかったからではなく、当然ながら温泉の存在が第一目的であります。街の郊外に人知れず湧き出る秘湯があるという情報を得ていたのです。しかしその温泉に関しては事前に得られる情報が非常に少なく、ググってみても検索されるのは苗栗県大湖郷公所のウェブサイト内にある簡単な記事か5年前に投稿された個人ブログくらいしか見当たりません。手がかりが非常に少なく、新しい情報も無いため、現在は閉鎖されている可能性もあります。このため、はじめから期待せずにダメ元で行ってみることにしました。



大湖の街を抜けて幹線道路の台3線を少々南下すると、左手に大きなアーチの「大窩橋」という橋が目に入ってきますので、この橋で川の東岸へ渡って川沿いの路地を更に南下します。橋から数百メートルでちょっと気になる箇所に遭遇したので、車をとめて(上画像の地点)辺りを見回してみますと…


 
イチゴ畑の前に「露天温泉区 100m」と記された小さな道標を発見しました。今回の目的地を見つけるための、唯一無二の目印がこの道標です。他に看板などはありません。



道標に従って私有地に入ってゆくと、本当に100メートルほどでプールの廃墟みたいな構造物に出くわしました。これが今回の目的地「大窩温泉」であります。温泉というより溜め池か養魚場のような佇まいのこのコンクリの水槽にはぬるめの温泉が溜められているのですが、長い間放置されているのか周囲は雑草が生い茂っており、人が入浴して楽しめるような状況では無いほど荒れていました。でもこんな佇まいだからこそ、温泉ファンとしては是非とも入ってみたくなるものです。


 
プールサイドには一応受付のような建物がありますが、中はガランとしていて人の気配が感じられません。自販機も設置されていますが、機械も商品見本も色褪せていて実際に稼働しているか不明です。でもその前のテーブルに置かれていたドライヤーはちゃんと使えました。ドライヤーが使えるってことは、こんな有様でも一応温泉として営業しているのか…。
受付と思しき建物には平屋の住居が棟続きになっているのでその民家を尋ねますと、一人のヨボヨボお爺さんが窓から顔を出してくれました。入浴が可能か訊いてみますと、何やらゴニョゴニョと喋ってから「五十塊」というワードを口にしたので、今でも50元で入浴可能であることが判明。私は大喜びで50元玉をお爺さんに手渡しました。


 
プールサイドにはシャワールームやトイレが設置されているのですが、いずれも荒廃してほとんど廃墟と化していたので、周囲に誰も居ないことをその場で水着に着替えちゃいました。
お湯が張られたプールは結構大きなものなのですが、ぱっと見ただけではこれが温泉だなんて気づきませんよね。



他にもプールはあるのですが、いずれも空っぽでした。郷公所の記事や個人ブログで紹介されていた画像は、おそらくこのプールを写したものなんでしょう。数年前までは多くのお客さんで賑わっていたようですが、今ではすっかり寂れてしまったんですね。周辺には新しくて快適な温泉施設が次々に誕生していますから、このようなプリミティブな造りの温泉は見捨てられてしまったのかもしれません。


 
温泉が溜められている唯一のプールも、日除けの黒いネットがだらしなく垂れ下がっているため、とても営業中の施設とは思えません。放置されたまんまだから野湯みたいな衛生状態なのかな…。そう覚悟しながら恐る恐る入ってみますと、案の定、底はヌルヌルして滑りやすかったのですが、意外にもゴミや落ち葉・沈殿物などは無かったので、固形物を取り除く程度の最低限のメンテナンスは行われているようでした。お湯の温度は37.5℃。この日は好天に恵まれてちょっと汗ばむような陽気でしたので、むしろこのくらいの湯加減が気持ち良く感じられました。


 
プールには2本の太くて黒いホースが突っ込まれており、湯面の上まであげてみるとホースの口からはかなりの量のお湯が吐出されていました。意外にも湯量は豊富であり、このおかげでプールのお湯の鮮度はなかなか良好です。お湯は無色透明で、湯口ではタマゴ味およびタマゴ臭が感じられ、非鉄系の金気味やほろ苦みも確認できました。なお湯口では41.1℃でした。



こんな原始的な温泉ですから、必然的に湯使いは完全かけ流し。湯面に突き出たパイプより惜しげも無く排水されていきます。


 
特筆すべきは夥しい泡付きです。ものの1~2分で全身が泡だらけになっちゃいました。拭っても拭っても、泡はしつこく肌を覆います。この泡付きとお湯に溶けている重曹のおかげで、ツルツルスベスベとした浴感がとても強く、また湯上りの爽快感も素晴らしいものがありました。



あまりのお湯の良さと、周囲の長閑すぎる環境にすっかり惚れてしまい。ついつい自己撮りしてしまいました。不感温度帯の湯加減と爽快な浴感のため、何時間でも浸かっていられます。お湯の質は非常に良質なんですけど、あまり一般の方にはおすすめできない状態であるのが残念です。まさに知る人ぞ知る秘湯ですね。泉質重視のマニアックな方は是非どうぞ。私個人としては大満足でした。


泉質名不明

まず台鉄・苗栗駅から新竹客運バスで大湖へ。さらに大湖から新竹客運の卓蘭(景文経由)行バス(5663番)に乗車して「老糖廠」バス停下車、徒歩約300m(ただし大湖から先は本数僅少な上に運行時間に偏りがあるのでバス利用は非常に不便)
苗栗県大湖郷大寮村大窩山口大窩農路  地図

営業時間不明
50元
ドライヤーあり
水着着用

私の好み:★★★
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台湾のレンタカー初体験

2013年04月13日 | 台湾
※2023年1月18日 内容を大幅修正しました

・2023年1月時点の情報は別の記事で紹介しています。こちらをご覧ください。

当たり前ですがレンタカーを使うと旅行中の行動範囲が格段に広がりますよね。特に鄙びた僻地の温泉を巡ろうとすれば、どうしてもバスの便が悪かったり、あるいは路線バスそのものが無かったりしますので、車を利用は欠かせません。しかし、ネット上では、台湾の交通マナーの悪さを理由に、レンタカーは絶対に避けるべきというご意見も散見されます。確かに普段は柔和で穏やかな台湾人も、なぜかハンドルを握ると性格が豹変してアグレッシブな運転をしがちです。これまで数度に亘る訪台体験によって私も台湾の交通事情は多少は知っているつもりであり、それゆえに車を運転することに対して及び腰になっていたのですが、恐れてばかりでは新しい世界に出会えない、虎穴に入らずんば虎児を得ず。列車やバスだけでは行動範囲に限界があるため、今回は思い切ってレンタカーを利用してみることにしました。結果を申し上げますとレンタカーを利用して大正解でした。今回は実体験をもとに、台湾におけるレンタカー利用について述べて参ります。なお今回の記事で取り上げた内容は、あくまで私の体験談にすぎませんから、取り上げ方や記述内容に偏りや思い込みがありますのでご了承下さい。


●レンタカーが便利な場所、不便な場所
闇雲にレンタカーを借りたって意味がありません。たとえば国内観光でも、都内や京都・大阪を巡る際にわざわざレンタカーを利用したら、駐車場や渋滞などが支障となって非常に不便ですよね。これと同じく、台湾でも台北やその近郊(北投・金山・烏来など)を巡るのでしたら、公共交通機関を利用したほうがはるかに便利で経済的です。いや、一度台北を訪れたことのある方ならお分かりでしょうけど、市街に溢れるバイクの洪水を目にしたら、とてもじゃないけど車を運転する気になれません。
一方、地方ですと鉄道路線が無いところが多く、路線バスも本数が少なくて利便性に劣りますから、レンタカーを借りてしまった方が楽ちん。タクシーをチャーターしても良いのですが、タクシーを1日貸し切る料金とレンタカー代金を比較しても大して変わりませんし、タクシーの場合はドライバーの質に当たり外れがありますから、それなら自分の意志で自由に行動できるレンタカーの方が良いに決まっています。


●事前に用意すべきもの
(2023年1月 JAFに関して内容を修正しました)
皆様御存知の通り、日本と台湾との間に国交はありません。また台湾はジュネーヴ交通条約に非加盟であるため国際運転免許証も通用しません。しかしながら二国間の協定により、以下のものを用意すれば、日本国籍の人でも台湾で運転することが可能です。
・日本の運転免許証
・JAF(日本自動車連盟)あるいは財団法人交流協会が発行した免許証の中国語翻訳文。
翻訳文に関してはJAFの専用ページを御覧ください。
原則としてJAFの専用ページからウェブ申請することになっていますが、郵送での申請も可能です。 
ウェブ申請については拙ブログのこちらの記事をご覧ください。なお自作の翻訳文ではダメです。
この他、レンタカー会社との契約に際してクレジットカードが必要となってきます。
なお上述の理由により国際運転免許証は台湾においては全く役に立ちません。


●レンタカー会社と予約
(2023年1月 レンタカー会社に関する内容を修正しました)
経済力のある国には大抵の場合、国際資本の大手レンタカー会社が進出しており、台湾の場合はAVISが進出して徐々にネットワークを拡充させていますが、まだHERTZやBUDGETは進出しておらず、台湾では現地資本の業者がメインとなっています。ここでは台湾の大手レンタカー会社とそれぞれの予約方法について簡単に紹介して参ります。

・格上租車
公式サイト
大手レンタカー会社のひとつで、空港や高鉄(台湾新幹線)の駅にも窓口があります。WEBは英語と中国語のみで日本語対応はしていないようですが、私はいままで何度か利用したことがあり、予約時の金額提示やメールのやりとり、貸し出された車の状態など、いずれも良好で安心できる業者でした。なお私は予約の際に英語を使ってメールで連絡を取り合いました。
料金は後述する和運租車と同程度ですが、トヨタ系の車が多い和運租車と異なり、格上租車はいろんなメーカーの車を取り揃えているので、普段乗ったことが無い車種のハンドルを握ってみたい場合は格上租車を選ぶと良いかもしれません。特に台湾オリジナルのLuxgen (納智捷)を運転したければ格上租車がおすすめです(格上租車の親会社はLuxgenを生産販売している裕隆汽車です)。

・AVIS(艾維士)
台灣艾維士租車
言わずと知れた国際的なレンタカー会社。私も他国で何度かお世話になっていますが、まだ台湾では利用経験がありませんので、簡単な概説のみお伝えいたします。現地資本のレンタカー業者が多い台湾において、この国際的な業者も2012年頃から台湾でも営業を開始しました。この記事を投稿した当時はまだ当地における展開が途上段階でしたが、その後一気に各地で営業所を構えるようになり、この数年で格段に使いやすくなりました。

・愛旺(IWS)租車
(2023年1月の利用体験に基づき全面的に記載内容を変更しました)
公式サイト(中文)
公式サイト(日本語)

以前は別の漢字表記でしたが、某大手海外資本から指摘を受けたのか、現在では「愛旺」という表記に替えています。この業者は日本語サイトがあるので、車種や料金、営業拠点などを調べやすいでしょう。あまりメジャーな業者ではないのかもしれませんが、台湾の代表的な大手2社(和運と格上)より安く、しかも比較的便利なところに営業所があるので、私はこの業者を気に入っています。2023年1月の記事でもご紹介しましたが、トヨタのSUVを定価4500元/日のところ、2200元/日で借りることができました。しかも実際に貸し出された車はまだ7000km程度しか走っていない新車同然の綺麗な車だったので、非常に満足しています。営業所のスタッフは日本語はおろか英語も怪しい感じでしたが(偶々かな)、営業所に日本語の説明マニュアルやパンフレットがあるので、利用開始時の際にはそれらを提示されながら手続きが進められました。
ネットで予約する際は、メールだとなかなか返信が来ない場合があるので、公式サイトに出ているLINEや各種SNSから問い合わせてみると、その後の流れがスムーズです。なおその際の言語は英語で構いません(日本語はちょっと厳しいかも)。

・和運租車
https://www.easyrent.com.tw/Japanese/
台湾最大のレンタカー会社です。営業所が多く、格上租車と同様に空港や高鉄の駅にも窓口があります。トヨタと業務提携しているため、用意される車はほとんどトヨタ車であり、車の状態も常に良好です。当然ウェブからの直接予約も可能ですが、実際に対応するのはピックアップする営業所のスタッフであるため、返答のスピードにはムラがあり(めちゃくちゃ早い時もあれば遅い時もある…)、日本語によるコミュニケーションもほとんど期待できません(以前あった日本語サイトも現在は無くなってしまいました)。もし返答が遅い場合は、現地スタッフが言語的に困っていることが多いため、問い合わせページから英語でメールを再送してみてください。

以下、この記事では具体例として、和運租車を利用した際のことをご紹介します。予約の際にHP内の問い合わせページにあるメールフォームから、日本語と英語を併記してメールを送信したところ、滞り無く予約することができました。なおメール文中では難しい言葉なんて使っていません。簡単な挨拶文、レンタカーを予約したい旨、貸出や返却の日時と営業所、希望車種、付属品(GPS)の希望、氏名や連絡先などを、ごくごく普通のことを箇条書きにしただけです(営業所名などの固有名詞のみHP内の中国語をコピペしました)。

●料金の目安
リーズナブルなトヨタ・YARISの場合ですと、各社とも各種保険込で1日2,500元前後が相場となっているようです。実際に私がトヨタ・YARISを借りた際の料金も定価2,500元でしたが、曜日によって割引が設定されており、週末は定価の85%、平日は同75%で計算されました(定価は旧正月などの繁忙期にだけ適用されるようです)。もちろん料金設定に関しては会社によって異なりますから、各社のHPでご確認ください。また会社によってはGPSのレンタル料や乗り捨て料金が加算されますが、今回利用した和運租車ではいずれに対しても追加料金は発生しませんでした。

●ピックアップ

さて現地での手続きへと移ります。今回私は高鉄(台湾新幹線)の台中駅にてピックアップすることにしました。改札の横にあるレンタカー会社のカウンターで名前を告げると、係員が誘導して駅の外にある営業所へと車で送迎してくれました。
営業所では免許証・免許証の中国語翻訳文・パスポート、そしてクレジットカードを提示し、予約内容を確認の上、契約書類に署名して料金を先払いします。その際、金額欄が空白となっている書類にも署名とクレジットカードの番号記入を求められるのですが、これはもし交通違反した際の請求書となるもので、万が一違反金が発生してしまったらこの書類によって後日クレジットカードから引き落とされ、違反が無ければそのまま請求ゼロで書類は破棄されます。この書類は台湾独特であり、日本や他国ではありませんから、予備知識が無いと戸惑ってしまいますね。
なお和運租車のカウンターには、利用に際しての諸注意や保険内容に関する日本語で記された説明書類が用意されていました。


今回借りたのはトヨタのYaris(日本名Vitz)。予約に際して特にミッションの指定はしませんでしたが、AT車が用意されました。出発前にちゃんと外観の傷チェックが行われます。なお台湾のレンタカーは燃料の満タン返しが求められず、ほとんど空の状態で返却しても文句は言われません。ということは、利用開始時早々からガソリンの残量が僅かであるケースもありますので、その点は要注意です。

●返却
 
今回の返却先は台北市街の台北忠孝営業所です。忠孝東路という交通量の多い幹線道路沿いに位置しているのですが、営業所そのものはその側道に面しているため、台北名物のバイクの洪水や他の車の煽りに巻き込まれず事務所の駐車場へ車を入れることができました。またMRT(地下鉄)の駅からもさほど離れていないので便利でした。返却後はスタッフが外装チェックの後、高速道路の料金を現金で精算し(当記事の下部「高速道路」の項をご参照ください)、問題なければ書類にサインして終了です。

※本記事初回投稿時に記載していたGPS(カーナビ)に関する記事は、GPS端末を使用する機会が激減しているため、削除させていただきました。カーナビはスマホをご活用ください。


●運転に関して
・左ハンドル
これはいわずもがなですね。海外で運転されたことのある方なら問題なし。左ハンドルの経験が無くても、しばらく走っていれば慣れちゃいます。ただし慣れないうちはウインカーやワイパーを逆に出しちゃうミスをやらかしてしまうので、出発前によく確認しておくことをおすすめします(皆さんご存知かと思いますが、左ハンドル車はウインカーやワイパーが日本と逆です)。

・オービス
 
日本でもおなじみの自動速度違反取締装置です。高速のみならず一般道にもかなりの高密度で設置されています。旅行先での記念撮影は想い出を残すために欠かせませんが、この手の写真は一枚たりとも残したくありませんよね。日本では設置個所の手前に必ず事前警告標識が立っていますが、これは台湾でも同様でして、規制速度とともに「常有測速照相」(もしくは同じ意味の文言)と記された警告が必ず立っていますから、これを見つけたら速度を落として運転しましょう。なお台湾在住のWさんの体験談によりますと、10km/hオーバーでしたら確実、7km/h超でも後日警察から違反切符が送付されてきたんだそうです。かなりシビアなんですね。レンタカーの場合は、上述のように契約時にサインした金額欄がブランクの用紙が違反金の請求書類になります。


これがオービスの本体です。日本と違って後ろ向きに撮られるんですね。実際に運転してみると都市部や僻地を問わず、かなり頻繁に取締の警告標識やカメラと遭遇するのですが、その全てが稼働しているわけではなく、機能していないもの(ダミー?)もあるみたいです。そのあたりの事情は現地の方がよくご存じですから、走っている道の流れに合わせておけば問題ないでしょう。

・山道におけるライト
 

上の3枚の画像はいずれも山間部区間(見通しの悪い区間)における「常時ライト点灯せよ」の標識です。これまたWさんのお話によれば、台湾では前照灯点灯が義務付けられている区間での取り締まりも行われているんだそうでして、うっかり点灯せずに走っているとたまに違反切符を切られることがあるんだとか。この種の標識は繁体字の漢字がたくさん羅列されているので、慣れないとその意味が読み取りにくいのですが、「開車頭燈」という文言が含まれている標識を見つけたら、ライトを点灯させておけば問題ないかと思います。

●バイクが多い
台湾ではバイクを「機車」と表記します。日本のテレビ番組でもしばしば紹介されているのでご存知の方も多いかと存じますが、とにかくどこへ行ってもバイクが多く、都市部のラッシュアワーにおいてはバイクが怒涛のように道に溢れます。多いだけではなく、2ケツや3ケツは当たり前、先を急ごうとするバイクは隙間があればガンガン割り込んで、我が物顔で縦横無尽に走っています。文章だけでは迫力に欠けるため、Youtubeで見つけた台北市街の様子を撮影した映像を御覧ください。
台北のバイクの多さは特別ですが、地方都市ではこれほどひどくないものの、多いことは同様です。下の動画は私が2012年に高雄市街で私が撮影したものです。


都市部ではこのようなバイクの洪水の中で運転するわけですから、信号発進時や車線変更などでは巻き込み事故を防ぐために周囲をきちんと確認しましょう。
バイクに限らず、路上駐車の多さ、急な車線変更、煽り運転の多さ、複雑な車線(台北都市部)などなど、台湾では様々なトラップが路上に「仕掛けられて」いるので、都市部では気が抜けません。でも実際のところ、都内や大阪などで運転している方だったら、意外と大丈夫かと思いますよ。たとえば都内でも、いきなり二重路駐するタクシー、急に飛び出す自転車やオシャレ気取りのスケボーの兄ちゃん、当たり前のように信号無視する歩行者のオッサン、ウインカーもつけずに車線変更して割り込む黒塗りベンツ、車間をギリギリまで積めて煽る業務用ハイエース、複雑な立体交差、直進していたらいつのまにか右折レーンになっている車線の数々、などなど慣れていないとヒヤヒヤするような場面って多いですけど、台湾での運転もそれと大して変わらないような気がします。余談ですが、関東人の私としては、東京や台湾よりも大阪の新御堂を走る方が余程緊張します。ま、それはともかく、東京と台湾、両者の最大にして決定的な違いは、万が一の時、東京ならば自国語で対処できるものの、台湾ではそれが非常に困難である、という点に尽きるかと思いますが、こればかりはどうしようもありません。

 
(新竹県竹東の街中の様子)

むしろ私の実感としては、都市部よりも山奥の原住民集落の方が怖い印象があります。都市部から地方へ行けば交通量は一気に減るのでビギナーでも安心して運転できるのですが、更に奥へ進んだ僻地に点在する原住民の集落では、交通量が少なくてマナーを守る必要が無いためか、たとえばバイクはノーヘルで3ケツは当たり前(子供を乗せた4ケツも目撃しました)、確認せずにガンガン突っ込んで出来ますし、道を塞ぐような駐車もしばしばで、治外法権かと勘違いしてしまうほどでした。山奥の集落に遭遇したら、田舎であると軽視せずに最徐行することをおすすめします。

●給油
石油元売企業はいくつかありますが、GSが最も多いのは「台湾中油」ですね。台湾のGSはほとんどがフルサービスですから(近年徐々にセルフも開店し始めました)、スタッフに油種と給油量(台湾では希望金額を告げるのが一般的)を告げればOKです。なお油種は柴油(ディーゼル用の軽油)の他、92・95・98という3種類のガソリンがあり、それぞれの数字はガソリンのオクタン価を示しています(欧米と同じですね)。日本のレギュラーガソリンは95、ハイオクは98が該当しますので、日本の5ナンバークラスの車でしたら95をチョイスすればOKです。
上述にて「台湾では希望金額を告げるのが一般的」と申し上げましたが、旅行者がガソリンの相場を把握できるわけないので、給油の際はとにかく満タンでお願いしましょう。
 日本語:95のガソリンを満タンで! → 中国語:95加滿! (発音としてはjiu4 wu4 jia1 man4)
この4文字だけで十分なのですが、口に出す自信が無ければメモに「95加滿」と書いてスタッフに見せればOKです。


この画像は実際に私が給油してクレジットカード(信用卡)で支払った際のレシートです。95無鉛ガソリンを30.07リットル給油し、リッターあたりの単価は34.9元であることが記されています。34.9元ということは日本円で約120円ですが、同じ時期(2013年3月)の日本のレギュラーガソリンは円安の影響で150円台でしたから、台湾の方が30円近くも安かったことになるわけです。ま、日本の場合は税金が高いんですけどね…。

レンタカーのピックアップのところでも軽く触れましたが、台湾では返却時に満タン返しをする必要がありません(もちろん会社によるかと思います)。なお私が利用した和運租車では「ピックアップ時と同じ目盛で返してください」とのことでしたので、燃費をおおまかに計算しながら給油して、指示通りの状態で返却しましたが、あまり神経質にならなくてもアバウトでよろしいかと思います(個人的見解ですが)。


ちなみに上画像は、最近少しずつ開設されはじめたセルフスタンド(自助加油)の一例です(2016年3月に台中市烏日区で撮影)。私が利用したGSでは、フルサービスのポンプの隣に、このセルフのポンプが併設されていました。2台あるポンプの真ん中に利用方法がイラスト付きで説明されていましたが、全て中文ですので、言葉がわからないとちょっと難しいかも。

●駐車場
大抵「停車場」などと表記されています。温泉めぐりで訪れるような地方の施設でしたら、大抵は無料駐車場が用意されているかと思います。今回の旅で駐車料金を支払うようなことは一度もありませんでした。都市部ですとコインパーキングもありますし、また路肩の白線に囲まれたゾーンに駐車すると、巡回している係員がワイパーに料金票を挟んでゆくので、コンビニでこの料金票を差し出して料金を支払えばOK。
(2023年1月補記)
2023年に台中市内や日月潭で大型の公共駐車場を利用した際には、入場時にナンバープレートと入場時間が読み取られ、事前精算もしくは退場時の支払い時に、料金機のモニターに表示されるナンバーを確認して利用時間に応じたの料金を支払うシステムになっていました。ナンバーを読み取る駐車場は日本でも増えていますね。ただし日本と異なって駐車券を不要としていいる駐車場もありますので、そのような駐車場では券が無くても心配ご無用です。注意を要するのは料金の支払い。台中市の某駐車場では現金支払いができず、悠遊カード等の交通系ICカードやスマホ支払いのみとなっていました。駐車場に限らず台湾では悠遊カードがあらゆる場面で有効に使えるので、予め所持した上で若干多めにチャージしておきましょう。


●高速道路

広くて快適な台湾の高速道路。一部区間は大陸との有事を想定した軍用飛行機の代替滑走路に指定されているため、日本の高速道路よりはるかにゆとりのある造りになっています。標識や地図で「國道」と表示されている道、あるいは梅のマークの道が高速道路です。
高速道路は主に台北や台湾西部の都市部に路線網を広げているため、中央山脈より西側を移動する際にはお世話になるかと思います。

・高速料金は全てETC
台湾の高速道路は有料ですが、2014年1月より全面的にETCが導入され、現金での利用が不可能になりました。つまりETCに対応していない車は高速道路の走行ができません。でもレンタカーで貸し出される車は全車ETC対応ですので、私たちのような外国人旅行者でも心配はご無用。以下、具体的にその利用方法を解説してまいります。

 
日本のETC車載機はカード挿入型ですが、台湾ではカードを使わず、車にシールで貼ったタグ"eTag"がその役割を果たします。上画像はフロントガラスに貼られたETCタグの実物を、外側と内側から撮ったものです。シールの中央部分にタグがあり、道路に設置されたアンテナでこのタグの情報を読み取ります。

 
タグのシールはフロントガラスに貼られているとは限りません。別の日に借りたこの車では、ライトのケースに貼られていました。

 
一方、こちらは高速道路の本線上に設置されているETCアンテナです。本線上にたくさん設置されており、各出入口間ごとに細かく区切って利用状況を把握しています。アンテナからは青い光が放たれており、その光によって通過する車のタグを読み取っています(直下を通過すると、瞬間的に青い光に照らされるのがわかります)。かなりの高速で通過してもしっかり読み取ってくれる優れものです。なお日本の高速道路のように、出入口にバーはありませんので、いちいち徐行や一時停止をする必要はありません。


各アンテナが読み取った情報は逐次センターのサーバへ送信され、利用状況が管理されます。
各レンタカー会社の営業所には、ETCの利用履歴を表示させる端末がありますので、車を返却する際、営業所のスタッフに請求された利用料金を現金で一括精算すればOKです。全てオンラインで管理されているので、あっという間に利用履歴がわかり、料金が算出されます。
上画像は、レンタカー会社の営業所で返却精算時にプリントアウトされた、某日における私の高速道路利用履歴です。用紙の下半分に利用区間・時間・料金が列挙されています(画像加工済)。これを見ますと、ものすごく多い区間を利用しているように見えますが、上述したように、各出入口毎に利用状況を把握しており、その全てがリストアップされるため、走行距離が長くなって通過する出入口が増えると、どうしてもリストにあがる区間数が多くなってしまうのです。
ちなみに料金は利用距離に応じた体系となっており、走行距離が20kmまでなら無料、20kmから200kmまでは1kmにつき1.2元、200km以上は1kmにつき0.9元となっています。日本と比べてはるかに安いので、料金を気にせず高速道路のドライブが楽しめます。
※参考1:クミさんのブログ「タビアルキ☆タベアルキ~旅の目的はいつも食2~」の2014年1月6日付記事「レンタカーで台湾東部を巡る旅 ☆はじめに☆」
※参考2:ワイズコンサルティング・経済ニュース 2013年12月19日付記事「世界初の高速道路全面ETC化、来年1月2日スタート」



・サービスエリア

サービスエリアもあるんですよ。標識には「服務区」と表記されています。今回は國道3号の泰安服務区を利用しました。


広くて停めやすい駐車場。日本と同様、駐車エリアは大型車と小型車に区分されています。普通の乗用車は小型車エリアへ。

 
大きなトイレはもちろん、コンビニやスナックカウンター、そしてスタバなど各種設備や店舗があり、日本のPAと大差ありませんでした。とっても綺麗です。

安全運転でよい旅を!

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コメント (40)
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