On The Road

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6-23

2010-03-14 20:43:05 | OnTheRoad第6章
 あずの涙が止まるまで、ドリカムの曲で3曲分の時間がかかった。僕は何も言わずに車を走らせた。だんだん見慣れた景色が見えてきて、ドライブがもうすぐ終わるんだと思った。
 あんなに急いで走ってきたのに、もうすぐ別れてしまうと思うとあわててソンした気もする。泣いているあずを見たのははじめてだと思うけど、絶対守るから泣いてもいいよって思うほどイジラシイ。
 「昔飼ってた犬が死んじゃったことまで思い出しちゃった」と切れ切れにあずが言った。
 「犬のためにも泣いてあげなよ」と僕が言って、「うん」とあずは答えた。

 「僕は昔からけっこういい子だったんだ。それなのに志望の大学に落ちて、好きな女の子にフラレて、就職に失敗して。ちょっと恨んでた。僕のまえに道を用意してくれなかった親とか学校とか社会とか」。あずのせいとは思ってない。
 「でも、道は自分で作るものかなって気付いたら、甘かったなーって」

 「今日、私たちはなでしこから一宮まで行ったよね」。あずがハンカチを目からはなした。「砂浜で走って」「僕が転んで」「砂浜で抱き合って」「あずはやわらかかった」「コージ君は大きかった」。そんなに大きくないけど。

「遠回りだけど、夏に花火をやる公園まで行って」。商店街主催の花火大会が開かれる公園は僕の家から車で5分くらいのところにある。もちろん僕にイゾンはない。


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