On The Road

小説『On The Road』と、作者と、読者のページです。はじめての方は、「小説の先頭へGO!」からどうぞ。

6-11

2010-03-10 07:34:06 | OnTheRoad第6章
 「私、高校の卒業が大変で、あのころのお母さんたちのケンカはいつも私のせいで、専門学校も1年遅れて入って」とあずが話しはじめたとき、レットイットビーがかかった。
 「あずだけに教えるよ。レットイットビーって僕の勇気が出るジュモンなんだ」あずはすこし黙ってビートルズを聞いた。「わかんないけど、わかるかも」
 「遅くなったけど、これから始めればいいよ、それでいいって言われてる気がしない?」と僕は言ったけど、うんと言ってほしかったわけじゃない。あずがじっと聞いているのが答えだと思った。

 レットイットビーを3回くりかえして聞いたころ、左側にペンションの黄色い建物が見えて僕は左に寄った。時間は11時半。ちょっと早いけど予定通りだ。
 木のドアをあけたらカランカランとドアベルが鳴って、「いらっしゃいませ、タカハシさん?」とお母さんくらいの年のオバサンが言った。テーブルの上にはテーブルクロスとランチョンマットが置かれているだけで、支度の途中なのは一目リョーゼンだ。

 「早く着いちゃったから、すこし散歩してきます。ちょっと歩きたいし」と僕が言って、「トイレどこですか?」とあずが聞いた。
 大きなミッキーと向き合って待つ僕に、「女の子に言わせるなんて、デート初心者ね」とオバサンが言った。言われなければわからない初心者の僕は、オバサンのコトバをありがたく受け止めた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。