On The Road

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2010-02-15 21:42:21 | OnTheRoad第4章
ガラス戸がガラガラとあいて、ハルさんと娘さんが入ってきた。2人ともまっすぐ立って優しくほほ笑んでからゆっくり頭を下げて、「おはようございます」と言った。
サトウさんはシンミョーな顔で「おはようございます」と頭を下げた。茶道なんて何もわからないけど、サトウさんとハルさんたちのちがいは茶道なのかなと思う。

2人が春っぽい和菓子を見ている間、サトウさんははじめて大会に出た陸上選手のような顔で和菓子と2人をかわるがわる見ていた。はじめて書いたラブレターを渡した中学生とか。 「どれも先生が好きそうなお菓子だわ」とハルさんは言ってから「アキちゃんは?」と聞いた。
「アキエはちょっと体をこわして寝込んでます」とサトウさんが言って、「残念だわ」とハルさんが言った。「ハルとアキが揃わないと、お茶会はさびしいわ」
僕は2人の会話のなかに入っていけなかったけど、疎外感とはちがう気持ちだった。ハルさんの娘さんもひょっとしたら似たような思いだったんじゃないかな、と僕は思った。 英語では共感ってコトバはたしか同情と同じだけど、同情ではなく共感を僕は感じていた。
「アキエさんは明日から店に戻ります。お茶会やりませんか?」と僕が言った。ハルさんは昼間はしっかりしている。アキエさんも茶道をやっていた人だ。僕が決めることじゃないけど、アキエさんの退院パーティとしてお茶会はぴったりだと思った。


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