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もんく [とある南端港街の住人になった人]

住所変更のお知らせを絵葉書で

キャサリンさんが、今住んでいる場所が嫌だと言い、もっと歳を取る事を考えると便利な都市部へ移るのが良いと言う。便利という意味は多くの物が買えたり遊ばせてくれる施設に行き易いだったり、そして今回のようなケースで病院に近いような事だ。

一般にはそうした意見はもっともだろう。けれどこれまでにそうした都市部に住んだ経験から言えばそれはただそれだけの事だ。小さなコンクリートの箱の中で自分がそうしたいと思った時だけ外に出て何か必要なものや施設やアクテビティにアクセスする。窓は建家という物の要件として設置されているが閉め切っていて機能は無いに等しい。ドアも壁もたまに来るセールスか不審者から遮断する為のみに設置されている。大きな声や悲鳴が聞こえてもどの部屋からかは分からず知らなかった振りをするしかない。つまりその中でただ誰かの為に何かをせっせと消費する虫のような存在になるしかない。

そして最終的には、役所が家族を探して連絡するとキャサリンさんの天敵であって姉のアグリッピナや私の弟のピョートルに、「あいつら、どうせこんなものだよね、好き勝手な生き方していれば」みたいに言われるのがオチだ。まあ、当たり前だろう。なぜなら日本でのまともな生き方というのはいろいろな事に我慢して閉じた家に住んで、そして何よりディズニーランドに行きたければ行けるお金がある程度の、要は正しい消費者であり続けるというだけの意味だからだ。

その意味において自分たちの目標にすべきは何かとちゃんと考えないといけないだろう。今から10年後、たぶんうちの猫たちは寿命を迎えた後になるはずだが、スペインかポルトガルが気候穏やかで明るい漁村あたりからあの人たちに「住所変更のお知らせ」絵葉書を送る事だ。



昨日の怪我で上半身がギスギスとして痛い。逆さに落ちたせいか、どうも下半身の質量が上半身の骨と骨の間を攻めたようだ。少しストレッチすると良いようだがカーテンレールでは役不足だ。仕方ない。
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