「貪ってる……」
空から落ちて来た人の手足の様なそれに群がる砂獣たちを見て、戦場の誰かがそうつぶやいた。そう、砂獣はその手足に集まって何をしてるのか? といえば、どうやらその落ちて来た手足に群がって我先にと貪ってるみたいだ。
そもそもが砂獣という存在は食事を必要としない。それは長年の付き合いでわかってることである。奴らはこの世界の生命の輪に入ってる存在じゃない。あれは生物――ではないのだ。あれはただの存在だ。そう……人間を殺すための存在でしかない。だからこそ、人を襲うし、人以外に興味はない。実際その目的は都市核ではあるが、でも散発的に発生するだけの砂獣は街の中枢にある都市核を目指したりはしない。
ただ人を襲うためだけに現れる。だからどっちが優先なのかは判明はしてない。都市核の方が優先順位が高いのか、人の方が優先順位が高いのかは不明だ。
でも基本、その二つにしか砂獣は反応しない。その砂獣が変な物体に群がってる。それは砂獣の意思か? それとも教会の指示なのか? でもそれも教会側の反応をうかがえばわかる。ドローンを通してみてみると、彼らも混乱してることがわかる。それに……だ。それに教会の奴らの関心は目の前の敵やら、それこそ自分たちが頑張って召喚しようとしてた空のアレ――をぶった切った勇者の方へと向いてる。
つまりは砂獣には関心がない。それだけきっとあの空を割って出てこようとしてた存在は強力な何か……だったんだろう。それはわかる。でもそれも所詮はこの世界での話だ。この世界一つだけしか知らない奴らの基準。
でも私たちは違う。世界を渡ってきた私たちはその範疇に納まってはない。だからこそ、勇者の攻撃で教会の期待の星だったであろう存在は倒された。
「砂獣が手足を求めて拡散してる! 全員注意しろ! 反撃は奴らが手足にかみついてるときにやれ!」
そんな指示が飛んでる。ただ前だけを目指してた砂獣が手足が落ちて来たことで、その行動を180度変えてる。それぞれが近くの手足、そうじゃなかったら遠くに落ちた手足を求めて走ってる。だから先に砂獣を無視して後方に行った兵士たちの方にも砂獣がやってきてた。けどそれは攻撃の為じゃない。劣勢の教会の奴らを助けるためでもない。
ただ落ちた手足を求めてってだけだ。でも……それでも意識の外から砂獣の巨体にぶつかられると人間なんてプチっとされる。この世界の人たちは頑丈だから一撃で死ぬなんて事はないが、それでもダメージは入る。だから注意喚起をしてる。
焦らずしっかりと状況を確認して、それで奴らが餌に群がってるときに攻撃をする。それだけで一網打尽にできるのだから、ある意味でこちら側にとってはいい状況といえるかもしれないからだ。
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