いやだった……といってもここは田舎だ。地元ではない。なので小頭としては結局足軽……となってる鬼と一緒にいるしかないのである。
もしもここが小頭にとっての地元である場所なら、それこそ友達の所に逃げる……とか出来た。でもこの田舎には知り合いなんていない。友達……といえるこの田舎の知り合いなんて生まれてから小頭も何回も来てるといっても知り合いなんて今までいなかった。
だからこそ逃げ場はない。けど現代ならスマホという最強の暇つぶしツールがある。なのでその気になれば、小頭は足軽……いや鬼に対して「一人でいってよ」といっても問題はなかった。
この田舎で一人っきりでもスマホがあれば世界に繋がれるのだ。でも小頭は思った。
(これを一人行かせたら、育代ちゃんがどうなるか……)
それが不安だったから結局二人で向かう事になった。ようやくできた田舎の友達である育代。彼女を一人でこの鬼に出会わせる? 鬼はタンクトップに短パンをパツパツに履いてる。それはきっと野々野足軽の物だからだろう。タンクトップもその肉体のせいでぴちぴちだ。
なにせ鬼は野々野足軽よりも大分デカい。本当の兄である足軽はきっと百七十台だとろうと小頭はおもってる。足軽を見上げてもそこまで首は痛くならない。けど今の鬼の顔を見るとなると、小頭は首が痛くなる。
それだけ身長差がある……ということだ。きっと百八十は超えてる。後半くらいあるだろう。だって近くに来るとその圧が壁みたいに感じる。それは……小頭にとって明確に足軽とは違った。
むしろそれが一番違うと感じる。ただこの鬼の前に立つと圧によって体が震えてくる野々野小頭だ。けどこうやって感じると違うんだ。
(お兄ちゃんは私に圧なんて掛けてこないもん)
だからこそ、こいつは絶対にお兄ちゃんじゃない。そう確信する小頭だ。小屋から自転車を出してきた鬼は、サドルにまたがって小頭を待つ……本当は触るのも嫌だが……でもそんなのも言ってられないから、後ろの方に足を掛けて……肩に手を……手を……
(とどかない!)
足軽とは体格差がありすぎて、鬼の肩に手が届かない。そうなると、腰に手を回す? でもそんなのしたらギュッとしないといけなくなる。密着度が段違いだ。
それは流石に……と思ってたら小頭を見てくる鬼。それに怯えてすぐに腰に手をまわした。だって逆らえるわけもない。機嫌を損ねたら何されるか……
とりあえず準備完了したわけで、鬼がペダルに足を乗せて漕ぎ出す。すると――
ベギャ!!
――そんな汚い悲鳴を自転車が出したのだ。二人の間に微妙な空気が流れる。
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