「くはっ――はぁはぁ……え?」
草陰草案の体からこぼれた汗が武骨な駅構内のタイルに広がっていく。ガシャンガシャンガンガン!! ――と飛んできた外にあったのだろう看板が悲しいくらいに粉砕された。
普通に木の三角形的な看板じゃなく、もっとデカい、電飾とかついてる大きな看板である。そんなのが飛んできて、かなりの勢いで飛んでる女性にぶつかった。けど弾かれるようにして飛んで行ったのは看板の方だった。彼女はちょっとずれはしたが、その大きな羽を展開してまだ空中にいる。
(あれだけのモノがぶつかったのに……)
全く動じてない悪魔のような女性。けどこの隙でなんとかアンゴラ氏達を草陰草案は力で守ることが出来た。まあけど泣く状態は解消できてない。
(どうしたら……)
とか思ってると床に転がってるカメラを発見した。何やら色々とくっついてて、ただのカメラがかなりゴツイ見た目になってる。その全てがどういう役割を果たしてるのか……草陰草案にはわからない。
でもとりあえずかなり高そう……というのはわかる。だからこっちも無事なのか確かめようと思った。なにせさっきからさらになんか飛んできてた。それは最初の看板とかではないもっと手軽な鞄や靴とか、本とかだった。けど最初の看板ほどの勢いはなくて、悪魔のような女性に当たるのもあれば全然明後日の方向へと飛んでいくのもある。
本当なら一時撤退とかしたいと、草陰草案は思ってるが、皆がこの状態ではそれもできない。けど力で覆ってるから、なんとか抵抗は出来るって思ってた。それに女の意識は飛んできてる物がある方向へと向いてる。
「とう!」
「草案! 無事!?」
「え? 小頭ちゃん!?」
なんと野々野小頭がこの場所にやってきた。それは草陰草案からしたら驚きでしかない。まさか彼女がこんな危険なことをするなんて……という意味で。
「よかった草陰草案は無事なようですね。けど周囲の者たちは……何が?」
野々野小頭がおろされて草陰草案との再会を喜んでると、後ろの大男が牽制するように構えをとって空中に浮いてる女性と向かい合いながらそういった。
確かにこれは混乱するよね……と草陰草案も思う。
「それに……そこの人は不思議な力を使ってた筈では?」
「私にもわかりません。けどきっと彼女から攻撃を受けてるんだと思います。別のタイプの力だから私にも……」
「なるほど……治せますか? 彼の力は貴重だ」
そう大男が言う。草陰草案は実際、この状態にした力を観測もできてない。けど……
「少し時間があれば、私が治して見せます!」
草陰草案はいつの間にか大仰なカメラを抱えてそう言ってた。そこにはきっと自分の力に対するプライドもあったんだろう。
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