アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

「(8.6風に)ヌガーってなんですのぉ?」

2015年06月18日 | Weblog
 ブドウの葉の天ぷらを食べました。天ぷらという食べ物は…日本の食文化の最高峰にあるものだと思っていますねえ!
 タラの芽、ウドの芽、ヨモギ、青じそ、行者ニンニク、桑の葉…これらの天ぷら、こんな旨いものがあるのかっ!あるんですけどね。ブドウの葉も、我が家のブドウ棚から失敬したものなのですが…旨いです。かすかな酸味が絶品。 
 金銭的には貧しい老後ですが、天皇陛下より旨いものを食べていると感じます。「贅沢させていただいているなあ」と、申し訳ない思いです。もっとも、私には食べ物で、「不味いもの」は、皆無なんですがね。

 旨いものを並べ立てる…私にも出来ますが、内田百間さんにはもちろん及びません。戦争で食料不足になった1944年(昭和19年)、随筆「餓鬼道肴蔬目録(がきどうこうそもくろく)」を書いておられる。
 どんな目録かって?早い話がぁ…記憶の中のうまい物をひたすら並べただけなのですがね。

註 昭和十九年夏初メ段段食ベルモノガ無クナッタノデセメテ記憶ノ中カラウマイ物食ベタイ物ノ名前ダケデモ探シ出シテ見ヨウト思イツイテコノ目録ヲ作ッタ 昭和十九年六月一日昼日本郵船ノ自室ニテ記

 どんな食べ物があげられているかって?…全てを挙げることは、著作権侵害ですから無理。まずは、目録の中から私が食べたいものを挙げさせていただくと…

 さわら刺身、たい刺身、霜降りとろノぶつ切、ふな刺身、こちノ洗い、こいノ洗い、あわび水貝、寒雀だんご、オクスタン塩漬、牛肉網焼、にがうるか、このわた…きりがない。酒の肴ばかりじゃないかって?そうとも言えますね。

 おもしろいなあと思ったものは…
 三門ノよもぎ団子、かのこ餅、鶴屋ノ羊羹、大手饅頭、広栄堂ノ串刺吉備団子、日米堂ノヌガー…鶴屋、広栄堂、日米堂が出てくる!ヌガーを知らない人が急増しておりますがぁ…日米堂のヌガーとは…明治43年(1910年)に、「日米堂芥河商店の洋造氏が米国で学んだチョコレートの製造技術をもってチョコレート、キャンデー類の製造を始めました…ぜんぜん売れなかったみたい。戦時中に、「日米堂}を堂々と出すあたり内田百間の面目躍如ってとこでしょうか。

 山北駅ノ鮎ノ押鮨、富山ノますノ押鮨、岡山ノお祭鮨、駅売リノ鯛めし、押麦デナイ本当ノ麦飯…各地を旅して食べたのでしょうねえ!「押麦デナイ本当ノ麦飯」…私は押麦の麦飯しか食べたことがないので、「本当の麦飯」ってのが気になってます。

 「…段段食ベルモノガ無クナッタノデセメテ記憶ノ中カラウマイ物食ベタイ物ノ名前ダケデモ…」内田百間さんが意図したものではないと思いますが、この目録…「うまい物をひたすら並べただけ」なのに、読んでいると、なぜか満足感を得られます。「日本の食の力」を感じます。

 「少シ前ハ英字ビスケット」ってのがありました。第二次世界大戦前は、「英字ビスケット」が売られていたんですねえ!ヌガーも…。それにしても…「英字」「ヌガー」…太平洋戦争中に…。腹が減っては戦は出来ぬ…。