乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

谷地坊主の観察会  7月6日(土)

2024年07月06日 | モニタリング調査
 7/6は年に一度の谷地坊主の観察会です。いつもなら午後までかけて行うのですが、午後から雨予報となっています。この観察会は湿地の中にも入りますから、できれば雨は避けたくて、午前中にまとめて行うことにしました。参加者は6人でした。この観察会プログラムは3つのアクティビティから成り立っています。

その1 谷地坊主の湿地が見下ろせる、ちょっとした高台まで、遊歩道を歩いて移動しました。今の季節、谷地坊主を見てもボッサボサの草むらにしか見えません。ですから、秋・冬・雪をかぶったところ・春先・谷地坊主の「頭皮」から草の芽が出て来たころ・・・などの写真を用意して、四季の変化を想像してもらいました。今度は、別の季節に来てくださいね。
 そして、谷地坊主がどうして盛り上がっていくかを、紙芝居で説明しました。キモは「冬になると地面の中が凍って、土が持ち上げられる」ことと、「持ち上がった地面が、春先の雪解け水で流されてしまい、相対的に持ち上がっていく」ことです。冬に持ち上がった地面は春に元通りに下がるんだから、「だんだん」高くなることはないと思うのですが・・・このあたりのメカニズムは、自分もまだ理解できていません。
 「冬、モーレツに寒いこと」「かといって、雪が降ったら、地面はかえって冷やされないので谷地坊主はできない」「水の流れがあること」「かといって、流れが速すぎても、全部流れてしまうからNG」「地面が持ち上げられても切れない、密で強靭な根を持つ草(スゲ)が生育していること」などが谷地坊主発達の条件です。
 ちなみに、ここ(アスファルト駐車場南。看板があるところ)の谷地坊主は山梨市によって天然記念物に指定されています。全国で、谷地坊主が天然記念物に指定いされているのは釧路市と山梨市だけです。また、スゲ属植物に詳しい元神奈川県博学芸員の勝山さんによると、タニガワスゲによる谷地坊主は乙女高原以外に見つかっていないのだそうです。

その2 高台から湿地まで遊歩道を降りて来ました。谷地坊主がすぐそばに見えます。参加者に茎に触ってもらいました。「断面は丸ですか?」茎が角張っていて、集中して触ると、断面が三角であることがわかります。そっと一株だけ残し、あとの葉を手でどかしてみると・・・株から葉が120°ずつの角度で(3方向に)出ているのがわかります。葉の感じはイネ科植物に似ていますが、イネ科は茎の断面が丸いのに対して、スゲ属を含むカヤツリグサ科は三角です。

『スゲ・カード』を使って、湿地で他のスゲ属植物を探してもらいました。ゴウソ、オオカワズスゲ、オタルスゲなどが見つかりましたが、谷地坊主を形成していたのはタニガワスゲのみでした。

その3 別の沢に移動しました。ここも上から谷地坊主の湿地を眺めます。

沢に沿って丘の上を移動していくと・・・途中から沢に谷地坊主がなくなります。「代わりに何が見えますか? 」岩が見えるようになります。つまり、ここからは斜度がきつくなって、土が削られ、流されてしまい、岩が見えるようになっているということです。谷地坊主があるところは、決まって、谷底の傾斜が緩やかで、土砂が平らに溜まっているところです。
 湿地に降りて、すでに印がしている5つの谷地坊主の「身体検査」をしました。「髪の毛」が自然な状態で地上何センチか、幅は何センチか、「頭皮」までの高さと幅は何センチかを二人一組で計測してもらいました。

 計測を始めて9年目になりますが、「本当に谷地坊主は生長しているのか」未だにわかりません。折れ線グラフを書いても不安定で、大きくなったり小さくなったり、中には小さくなっいる個体もあります。そもそも、毎年測る人が違うので「計測誤差」はつきものですし、湿地にはまわりから土が流れ込んだり、反対に、流れ出したりしているので、そもそも地面の高さが一定とは限りません。「自然を知る」は一筋縄ではいかないですね。

 とはいえ、9年もやっていると、おもしろい事実にぶつかることもあります。「谷地坊主5号」は、年々、水脈筋が近づき、そのうち、「水の流れに足元をすくわれ」、倒れて、行方不明になってしまいました。谷地坊主にはこんな「人生」もあるんだなと思いました。

   ※        ※        ※

※伊佐治さんが参加レポートを書いてくださいました。

「キュロロン キュロロン チー」
こんな特徴的な鳴き声でありがとう。私にも覚えられそう。因みにチーは付け加えなので小さく軽く。アカハラと言う鳥ですって。姿は見えなかったけれど次に聞いたら「アカハラが鳴いてる!」って誰かに教えてあげられるかも。
 そんなことを思いながらお目当ての谷地坊主の溜まりへ。
 へぇ~、茎が三角なのがスゲ属の仲間の特徴なのか。三角なら丸よりも強いのかな?でも丸の方が風にしなって折れにくい気もする。スゲ属はなぜ三角を選んだんだろう。それにしても谷地坊主が生まれるには、たくさんの条件が揃わないとこうはならないらしい。ここは奇跡の立地条件だったんだ!
 身体測定の最中にバディを組んだ加藤さんが、「あれ、ここにもある。」と谷地坊主1番さんのすぐ隣を指した。手でモゾモゾ1番さんの根本から触っていく。「これ、別の株だよ。」
あ、ああああ!そうか!
 「谷地坊主の英名がtussockで『かぶ』の意味です」と植原さんが出発前に話してくれた。なぜカブなんだろうと思っていた。葉っぱもカブの葉とは似ても似つかない。頭の中はずっと???だった。カブ(蕪)じゃなくて(株)なんだ!
 それからは自分の思い違いを思い出すたびに笑いが込み上げてきて仕方がなかった。
 アハ体験山盛りの初めての乙女高原だった。 

   ※        ※        ※

※加藤さんも参加レポートを書いてくださいました。

 谷地坊主の観察に行きました。谷地坊主という響きに惹かれてちょっとだけ調べて、春先のたくさんの鬼太郎が露天風呂に浸かっている姿(写真)にますます惹かれて会いたくなり会いに行きました。
 雲行きは怪しい曇り空。雨が降りそうな空模様。でも、体感温度は寒くもなく暑くもなく丁度いい感じです。
 出発前に植原さんから「谷地坊主は英名がtussock『カブ』の意味です」と聞いて「カブ(蕪)?なぜカブ?」と思ったのは私と伊佐治さんだけでしょうか?
 「キュロロン、キュロロン、チー」という可愛いくも逞しい縄張り宣言(?)のアカハラの声や、里よりも鮮やかに咲くアヤメやアザミを眺めながら湿地帯に向かいました。
 「これが谷地坊主です」と緑一面の湿地帯を指す植原さん。
 「???どれ?」とよーく見ると緑の塊が見えます。そう!谷地坊主の頭に緑の髪の毛(スゲの葉っぱ)が生えてモジャモジャ頭になってた!!
 谷を降りスゲ属の調査。茎を触ると「あれ?三角?まるじゃない!」とスゲ属の不思議を発見。
 そして、谷地坊主の身体測定に。
 1号から5号まで札の着いた谷地坊主を2人1組みで調査開始。
 1号を調査中「この子、どこまで1号さん?」と緑の髪の毛をかき分けモゾモゾ手探り。
 「あ、これ、別の株だよ」と私
 「あ、ああああー!カブってそっち?」とバディを組んだ伊佐治さん
 tussockが『蕪』ではなく『株』だと気づき大爆笑の2人。
 隣にいた小さな谷地坊主さんありがとう、あなたのおかげで謎が溶けたよ。

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草原に出て来た草の芽はどう生長する?プロジェクト2-1

2024年06月17日 | モニタリング調査
4月、草原内に出てきた芽に札を付けて、継続的に写真を撮り、記録することにしました。「 札付きの植物」たちです!! 札付きといっても、悪い子たちじゃないですよ。

こんな感じです。全部で21の「札付き植物」。5/5以降は各植物の草高(植物を引っ張ったりしないで、そのまま自然の状態で地面からの高さを測る)も測定しました。6/16まで継続観察しました。
使った道具?は、園芸用の札に、百均シールをはったものです。これだけではじきに目立たなくなるだろうと、蛍光色テープの「マフラー」を巻きました。
来年は、札を高くする工夫をしたいと思いました。まわりの草が伸びるので、マフラーを付けても札が見つけにくくなるからです。


  


No.1
 4/25

 5/5 草高9cm

 5/11 草高11cm

 5/18 草高13cm

 5/24 草高 14cm

 6/8 草高 25cm

 6/16 草高 34cm

植原の予想・・・最初からホタルサイコを予想


No.2
  4/25

  5/5 草高17cm

 5/11 草高22cm

 5/18 草高20cm

 5/24 草高 26cm

 6/8 草高 40cm

 6/16 草高 48cm

植原の予想 最初からタムラソウを予想。生長が早い。


No.3
  4/25

  5/5 草高7cm

 5/11 草高8cm

 5/18 草高12cm

 5/24 草高 13cm

 6/8 草高 17cm

 6/16 草高 24cm

植原の予想・・・わかりません。最初の葉と、最近、出て来た葉の形が違います。


No.4
  4/25

  5/5 草高4cm

 5/11 草高5cm

 5/18 草高7cm

 5/24 草高 10cm

 6/8 草高 15cm

 6/16 草高 18cm

植原の予想・・・最初からツリガネニンジンと予想。「山でうまいはオケラにトトキ」のトトキとはこれですからね。2本あったのに、1本は倒れてしまいました。


No.5
  4/25

  5/5 草高7cm

 5/11 草高4cm

 5/18 草高10cm

 5/24 草高 13cm

 6/8 草高 15cm

 6/16 草高 14cm

植原の予想・・・最初はわからなかったのですが、次に出て来た葉に鋸歯が見られ、近くにタムラソウがあることから、タムラソウと予想。


No.6
  4/25

 5/5 草高2cm

 5/11 草高4cm

 5/18 草高4cm

 5/24 草高 6cm

 6/8 草高 6cm

 6/16 草高 15cm

植原の予想・・・最初はわかりませんでしたが、大きくなるにつれ、葉のギザギザがはっきりしてきたので、アザミの仲間だと思います。


No.7
 4/25

 5/5 草高14cm

 5/11 草高17cm

 5/18 草高20cm

 5/24 草高 25cm

 6/8 草高 40cm

 6/16 草高 50cm

植原の予想・・・早い時点でクガイソウと予想。
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草原に出て来た草の芽はどう生長する?プロジェクト2-2

2024年06月17日 | モニタリング調査
No.8
 4/25

 5/5  草高9cm

 5/11  草高10cm

 5/18 草高10cm

 5/24 草高 13cm

 6/8 草高 20cm

 6/16 27cm

植原の予想・・・最初はスミレと思ったのですが、どうも違いそうです。アキノキリンソウかなあ。


No.9
  4/25

 5/5  草高11cm

 5/11 草高6cm

  5/18 草高9cm 

 5/24 草高 16cm

 6/8 草高 37cm

 6/16 草高 50cm

植原の予想・・・この特徴的な葉はシシウドですね。急に大きくなりました。


No.10
  4/25

 5/5  草高5cm

 5/11 草高7cm

  5/18 草高10cm 

 5/24 草高 15cm

 6/8 草高 20cm

 6/16 草高 24cm

植原の予想・・・小さいときから「丸葉」ダケブキなんだなあと思いました。マルバダケブキ。


No.11
  4/25

 5/5  草高17cm

 5/11 草高20cm

  5/18 草高25cm 

 5/24 草高 30cm

 6/8 草高 40cm

 6/16 草高 49cm
植原の予想・・・最初はまったく見当がつかなかったのですが、おそらくヤナギタンポポ。

No.12
  4/25

 5/5  草高5cm

 5/11 草高8cm

  5/18 草高9cm 

 5/24 草高 10cm

 6/8 草高 13cm

 6/16 草高 22cm

植原の予想・・・最初のうちは鋸歯ありの葉だったのに、途中から出て来た葉には鋸歯がありません。これ、だれの子??? ノコンギク?


No.13
  4/25

 5/5  草高6cm

 5/11 草高5cm

  5/18 草高8cm 

 5/24 草高 8cm

 6/8 草高 7cm

 6/16 草高 7cm

植原の予想・・・不明。ヘビノネゴザの陰になって、大きくなれません。


No.14
  4/25

 5/5  草高10cm

 5/11 草高12cm

  5/18 草高13cm 

 5/24 草高 10cm

 6/8 草高 25cm

 6/16 草高 25cm

植原の予想・・・カラマツソウかヤマオダマキか迷いましたが、小葉が比較的大きいので、ヤマオダマキと判断。ススキと背高競争を繰り広げています。
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草原に出て来た草の芽はどう生長する?プロジェクト2-3

2024年06月17日 | モニタリング調査
No.15
  4/25

 5/5  草高5cm

 5/11  草高 6cm

 5/18 草高 9cm

 5/24 草高 13cm

 6/8 草高 30cm

 6/16 草高 35cm

植原の予想・・・この管になっている葉はネギの仲間。となると、 ヤマラッキョウ。最近、ニューッと伸びました。


No.16
  4/25

 5/5  草高6cm

 5/11 草高 7cm

  5/18 草高 9cm 

 5/24 草高 8cm

 6/8 草高 7cm

 6/16 草高 8cm

植原の予想・・・葉の厚ぼったいところからしてキリンソウと予想。なかなか大きくなれません。


No.17
  4/25

 5/5  草高5cm

 5/11 草高 9cm

  5/18 草高 9cm 

 5/24 草高 13cm

 6/8 草高 17cm

 6/16 草高 22cm

植原の予想・・・最初はメマツヨイグサだと思いましたが、葉にギザギザがあることと、さわってみると、毛がいっぱい生えていることからコウゾリナと予想。


No.18
  4/25

 5/5  草高9cm

 5/11 草高 7cm

  5/18 草高 6cm

  5/24 草高 11cm

 6/8 草高 27cm・・・ノアザミ

 6/16 草高 52cm

植原の予想・・・葉からしてアザミの仲間であることは間違いありませんが、種まで同定はなかなかできませんでした。6/8に蕾を付けていたことからノアザミと同定。6/8から6/16の8日間で、なんと25cmも伸びました。 


No.19
  4/25

 5/5  草高6cm

 5/11 草高 6cm 

 5/18 草高 7cm

 5/24 草高 7cm

 6/8 草高 12cm

 6/16 草高 11cm

植原の予想・・・これもアザミの仲間ですが、種までは不明。


No.20
  4/25

 5/5  草高12cm

 5/11 草高 12cm

  5/18 草高 14cm

  5/24 草高 18cm

 6/8 草高 20cm

 6/16 草高 24cm

植原の予想・・・葉の感じと対生であることからオトギリソウと予想していましたが、じつはトモエソウかもしれません。


No.21
  4/25

 5/5  草高13cm

 5/11 草高 15cm

  5/18 草高 17cm 

 5/24 草高 20cm

 6/8 草高 30cm

 6/16 草高 37cm

植原の予想・・・このボサボサな感じが何なのか、ちっとも検討がつきません。強いて言えばキオン・・・いや、ちがうなあ。6/16になって、アキノキリンソウなんじゃないかと思うようになりました。

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訪花昆虫調査6月

2024年06月15日 | モニタリング調査
 今年2回目の訪花昆虫調査は賑やかでした。参加者は11人。プラスアルファ山梨CATVの取材がありました。

 みんなで自己紹介をした後、高槻さんから調査方法の説明がありました。説明が終わったと思ったら、高槻さんがバッグから何か取り出しました。まずは女性が頭に付けるカチューシャ・・・から2本の針金?が伸び、その先にかわいいポンポンが付いています。「これは・・・井上さんがいいなあ」と井上さんに付けていただきました。井上さんには、ピロピロ笛も渡しました。ピロピロ笛は吹くと伸び、吹くのを止めるとクルクルッと巻き戻りますよね。これはチョウチョを表しています。

高槻さんご自身は、マスク・・・に何か仕掛けてあるものを取り出し、付けました。「私はハエです」。マスクに付いていたのは、ハエの口(の手作り模型)。人間の魂がハエに転送してしまうというSFホラー映画「ハエ男の恐怖(原題The Fly)」がありましたが、そんな感じです。コロナウィルス流行時に多用されたフェイスガードにマジックペンで「サングラス」が描かれたものも装着。ハエの目です。

さらに、紙皿で作った「浅い花」とペットボトルで作った「深い花」も取り出しました。もうわかりましたね。ハエの口では「浅い花」からは蜜が吸えても、「深い花」では口が届きません。一方、チョウチョの「ピロピロ笛」細長い口だと「深い花」でも蜜が吸えます。そのような花と昆虫の関係が、この調査からわかってくる・・・という説明のための小道具だったわけです。楽しかったですよ。


 その後、5チームに分かれ、それぞれ巻き尺・ペグ・折り尺・記録用紙・調査マニュアルなどを持って、担当の遊歩道を歩きながら、花を訪れる昆虫を探し、記録していきました。遊歩道に沿って巻き尺を伸ばし、往路で遊歩道の右側2mの訪花の様子を記録し、復路は遊歩道の反対側を調べます。それが終わると、巻き尺を巻き取り、次の区間に進みます。
 2023年の記録を見ると、6月90データ、7月299データ、8月2,268データ、9月1,297データですから、8月とその前後の調査は大変になりそうですが、6月は「楽勝」です。案の定、今回は調査員も多かったこともあって、午前中で終わってしまいました。次回からは記録するデータも多くなります。ぜひご参加ご協力ください。

訪花昆虫ではありませんが、こんなシーンも。

アヤメが咲き始めていました。


なお、乙女高原ファンクラブで行っている2018~2023年の訪花昆虫調査ですが、調査日のべ21日、参加人数のべ103人です。
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