乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

どこでもドア発見~大蔵高丸の防鹿柵を一人見学

2013年08月15日 | シカ対策


8月15日,旧大和村(現甲州市)の湯ノ沢から大蔵高丸(山梨百名山のひとつ。標高1770m)を歩いてきました。目的は,昨年秋に設置されたという大規模防鹿柵をこの目で確かめることでした。
家から登山口まで車で1時間でした。途中,大和の林道で特徴的な光景を見ました。


ひとつは伐採跡を囲んだ防鹿(たぶん)柵。「なんで伐採跡に防鹿柵?」「柵があってもなくても変わりはないのでは?」という疑問を持ちました。



もうひとつは,これも伐採跡なのですが,尾根から尾根までのだだっ広い伐採地に点々と,もこもこした木が生えているのです。庭木のように見えます。双眼鏡で見ても樹種までは分かりません。


少し車を走らせ「これと同じに違いない!」という木を見つけたところで車を止めて,その木を観察しました。枝に葉がついているだけなので同定が難しいですが,手触りと臭いから,オオバアサガラではないかと推測しました。たぶん合ってます。というのも,オオバアサガラはシカが嫌い,したがって,シカが増えた地域で多くなる傾向があるというのを読んだ覚えがあり,以降,乙女でもオオバアサガラに注目していたからです。




さて,登山道入り口の駐車場に着きました。すると,大きな虫取り網を持ったおじさんが二人。その網の大きさからチョウの採集者に違いありません。「ここは山梨県の県有林です。昆虫採集するには許可(入山許可申請)が必要ですがご存じですか?」と,やんわりと注意しました。

登山道は尾根道に出るまで,斜面を登ります(ほんの数分ですが)。その間,なんか変な違和感を持ちました。尾根に出て,今度は尾根に沿って歩くようになっても同じ違和感が続きました。そして,違和感の理由がようやく分かりました。笹の丈です。ここの笹は乙女でも少し標高の低いところで普通にみられるスズタケでした。今も普通に見られますが,シカが増えてからというもの,乙女のスズタケはまばらになったり,丈が低くなったりして,スズタケ本来の姿が見られなくなっていました。ですから,久しぶりに見る人の背丈を超える本来のスズタケの姿なのですが,それは乙女では見られなくなって久しい笹原なのです。それでただの違和感ではなく,「変な」「違和感」になったのだと思います。




少し歩いたら,玄関が見えてきました。比喩ではありません。本当にアルミサッシの玄関があるのです。レバー式のドアノブを回して,ドアを開けると防鹿柵の中にお邪魔できるようになっていました。遊歩道に突然ドアが現れるのですから,ドラえもんの「どこでもドア」みたいでした。


玄関の両脇から防鹿柵が,延々と視界の先まで続いていました。網はナイロンか何かでしょうか。直径1.5ミリほど。触ると柔らかく,なんだか頼りない感じです。3メートルおきぐらいに立っている支柱は,おそらく塩ビ製。直径3.5センチ,長さ2メートルほどでした。途中についている付属物から,もともとは電柵用の支柱だったことがわかります。


草原の遊歩道を歩いていきましたが,ずっと防鹿柵の中でした。どうも湯ノ沢の草原全体が柵で囲われているようです。20分歩いたら(観察しながらですが…),ようやく柵の出口に着きました。柵で囲った面積は乙女高原の草地部分より広そうでした。


柵の中に花は咲いていましたが,2010年7月に訪れたときに比べ明らかに少なくなっていると思いました。花の顔ぶれは乙女高原とほとんど同じですが(とはいえ,ハクサンフウロだけは乙女にないなあ…),それぞれの花の数が少ないのです。

特にヨツバヒヨドリ,キオン,ヤマハギ,ツリガネニンジン,コオニユリが少ないなと思いました。一方,少なくはないなあ・普通にあるなあと感じたのはタチフウロ,コウリンカ,ノハラアザミ,コウゾリナです。

そういえば,さっきからどうも耳が淋しいなあと感じていました。夏の草原の定番であるハチやアブのうるさいぐらいの羽音が聞こえないのです。サイレント・スプリングならぬサイレント・サマーだと思いました。赤とんぼは普通にいるなと思いましたが,ちょうちょの種類が少ない。ジャノメチョウはたくさん見ましたが,草原といえば…のヒョウモンの仲間ではギンボシ(とツマグロ1頭)しか見かけませんでした。アカタテハ,クジャクチョウとも見られたのは1頭だけです。
(ジャノメチョウ)
(ギンボシヒョウモン)



コマドリやメボソムシクイの声を聴くと,「おお,山ん中に来たなあ」と感じるのですが,それらと外来鳥であるガビチョウが合唱しているのですから,興ざめてしまいました。笹がこれだけあって,ガビチョウまでいるのですから,同じ外来鳥であるソウシチョウがいてもおかしくないなと思いました。ソウシチョウは山の中の笹藪が大好きです。



遊歩道は「どこでもドア」を抜けて,大蔵高丸に向かいます。森の中の道でしたが,両側の木々の下には立派な笹原。普通です。でも,道脇を注意深く観察すると,イタドリやミヤマニガイチゴの葉が食われていたり,サラシナショウマが蕾だけ残って丸坊主にされていたり。笹の中ではオオバアサガラだけが幅をきかせているように見えました。シカの影響が大きいのかそうでもないのか,わからなくなりました。
(左上に見えるのがオオバアサガラ)




大蔵高丸の頂上に着きました。お盆だというのに,人っ子一人いません。歩いていてこれまでに会ったのは2人だけ。みんなどこへ行っちゃったの? 頂上を少し過ぎたところでお昼にしました。空模様が心配だったので,早めに出発しました。
(丘の上が大蔵高丸のピーク)



早い時間に降りてきてしまったので,久しぶりに遠回りして,大菩薩経由で帰ることにしました。途中,「親水公園」とあったので,寄ってみました。山の中に都市公園的な発想で作られた親水公園があり,しっかり草刈りされていましたが,誰もいませんでした。

上日川峠に着きました。上日川峠は大菩薩で一番賑やかなところ。ゴールデンウイークやお盆にでも行けば車は止められず,交通整理の人の誘導でかなり遠くまでいかなければ止められない。そんなイメージがあったのですが…。車はガラガラ。おかげでトイレに一番近い場所に駐車できました。みんなどこへ行っちゃったの?
途中,予定通りの雷雨に会いながら,帰ってきました。
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