私はつい最近まで、死はとても怖いもので、自分にとっては遠い遠い次元の出来事で、考えたくない 見たくないことのひとつでした。
生きているうちから死のことなんて考えていては、生きようとする力が萎えてしまう。。という考えもあったように思います。
でも、昨年の秋に父の死を体験してから、死に対する考え方は変わりました。
それは、父が95歳で天寿を全うするそのときまで、全力で生き抜いてくれたという、素晴らしい死の姿を見せてくれたからだと思います。
亡くなる2ヶ月前まで、父は家で生活できていました。
でも、徐々に食が細くなり、昼間でもうとうと眠ってばかりいるようになり、少しずつ進行していた心不全が悪化し始め、入院し、最後の2週間くらいは点滴だけで命をつないでいた状態でした。
それでも父は、亡くなるギリギリまで、昏睡状態にも陥らず、気丈に生きていたようです。昏睡状態が長く続けば、父の最期に間に合ったのかもしれませんが。
結局私が最後に父に会えたのは、亡くなる2日前でした。
食べられなくなってからの父は、喉にものを通していないせいか、声を出すのがやっとの状態になってしまいました。
その日も、私の「どお? 大丈夫?」という問いかけに、
全身から絞り出すような声で
「だいじょうぶ」 と伝えてくれ さらに
「お母さんは だいじょうぶ?」 と、毎回必ずする 母親を心配する質問も投げかけてきました。
父が亡くなる2年間くらいの間は、やはり入院もあり、通院もあり、たくさんのつらい検査も頑張ってこなしていた姿を思い出します。
最後に家で過ごしていた1週間くらいの間も、ほとんどものが食べられなかったのに、たくさんの薬だけは無理して飲んでいた姿を思い出すと、涙が出ます。
父はマイペースな人で、頑張り屋という印象はどちらかといえば薄い人でしたが、人生の最後には、命ある限り必死で生きようとする姿を 圧倒されるほどリアルに見せてくれました。
そして、死は必ずしも重く暗い悲しみだけ後に残すものではない、ということを実証して見せてくれた気がするのです。
父のことを思い出すと、それはもちろん悲しいですが、父の死を思うことが、私のこれからの人生において、力強く生き抜く力になっていくことは確かだと感じます。