めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

道案内3

2014-06-26 19:41:03 | 色鉛筆



……そして、
ぼくはもう帰るのをあきらめる。

……それに、
考えてみれば、本当に帰りたい家、帰るべき家は、もうなくなってしまっているんだ。


通りすがりの男が、いかにも落ち込んでる風で云う。
「おれはクズだ」

聞けば、仕事でミスしてしまったらしい。
しかしぼくは、話の内容よりも、彼の喋り方が気になって仕方がない。
もし彼の発する言葉を、文章に起こさなくてはならなくなって、さらにその文章で、彼の喋り方から受ける印象を最大限に表現しなくてはならないとしたら、その語尾のすべてに(笑)を付けるべきだろう。
内容は論じる価値もない。落ち込み、ひどく反省している風を装いつつも、結局は、自分は悪くない、と云い訳をほざいているだけなのだ。


けれど、あんたはクズじゃないよ。云い分は間違っているけど、みんなは正しいと云ってくれるに決まっている。
みんなあんたを守ってくれる。
愛してくれる。


ほんとのクズは、ぼくさ。


今までがんばってきたけど、もう無理だよ…。ほくがやってきたことはすべて無駄だったんだ。結局は独りぼっちさ。

……ようやく決心がついた。

道案内をありがとう。

突然現われたこんな男にとどめを刺され、人生に幕を下ろすのも、いかにもぼくらしくていいんじゃないでしょうか。






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