めざめていても夢はみる

ぼくはいつまでもさまよいつづける、
夜が明けても醒めない夢のなかを…

いそがしい日(前篇)

2015-12-09 18:36:13 | ちょっとしたおはなし



その日…
シーズンオフで暇を持て余していた〔丁字路メニーマネーズ〕のギラファノコギリ・軟骨外野手は、『地元の消防団長』を名乗る人物から送られてくるメールに書かれた指示にしたがって行動していた。
メールは朝からひっきりなしに送られてきていて、昼の時点でゆうに100通を越えている。

これまでにそのメールの指示どおり、彼は、
高級料亭〔つちふまず〕で、メニューには当然ないモンブランを無理に作ってもらった上に10個食べ、
「砂の器」の小説と映画版の差異を400字詰原稿用紙4枚にまとめ、
家電量販店の店頭の扇風機の風を3時間浴びつづけ、
国会議事堂の前でUFO観測をした(見つけるまでつづけること、という条件があり、実際彼はコタツ型UFOを一機写真に収めることに成功した)。

もちろんここに挙げたのはほんの一部にすぎない。



「けっ! シーズン中よりいそがしいじゃねぇか‼︎」

……そして、
こなした指示はいくつになったろう、
『30分以内に、コンビニを10軒まわり、各店のATMで1000円ずつおろす(コンビニ店内で必ず左手の小指を立てていなくてはいけない)』
というのをやっと終えると、彼はいつの間にか見知らぬ町にいた。
陽も暮れかかり、恐ろしく心細くなる。
やけに風が冷たく感じられてくる。

そこへ、
「軟骨! 軟骨!」
彼を呼びとめる声が……


つづく





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