『殺人毒ギョーザ』『食品テロか』『いまも農薬食品は「野放し」状態』『戦慄、続々報告される死亡例』『恐怖の食品工場』『中国製食品最新リスト』
スポーツ新聞の見出しではありません。02/01朝日朝刊に掲載された週刊朝日の広告に書かれた見出しの言葉です。週刊朝日は朝日新聞社発行の比較的「上品」とされる週刊誌です。週刊朝日を購入すると、本体の目次には『中国「殺人食品工場」の実態』という語句まであります。品性を疑いたくなります。
死亡続発の「殺人食品工場」製の食品は危険だから中国製食品最新リストを手に入れて身を守ろう、というメッセージが伝わってきます。中国ギョーザの恐怖につけ込み、さらにその恐怖を拡大しようとする意図が見えます。
記事の中身は見出しから想像がつくとおりで、中国での事故例やひどい話の記述が中心です。「家計を節約しても命を落としては元も子もない」が結語であります。
一方、同日の朝日新聞社説では冷静な対処を呼びかけています。一部を抜粋します。
『中毒が起きたことが公表されると、日本では中国食品への不安の声が一気に高まった。中国製というだけで、今回のギョーザとは無関係の冷凍食品がスーパーから撤去されたり、外食産業でメニューからはずされたりする動きが出た。
だが、日本人の食生活はいまや中国食品なしでは成り立たない。中国にとっても、輸出先として日本はなくてはならない存在だ。中国食品の安全は日中の共通の利益なのだ。中国人技術者を日本に招いて食品安全の研修をする構想があるのも、共通の利益があるからだろう。
今回の事件は、長い間の停滞から再出発したばかりの日中両国にとって、大きな試金石といえる。冷静に協力し合って解決に導けば、中毒事件の打撃を減らし、成熟した関係への一歩ともなる』
大変まともな主張であり、同じ会社のものとはとても思えません。この会社には表の顔とは異なった裏側の顔があるのでしょうか。
少なくとも現時点では、事件が中国の生産・流通システムに起因したものと断定できるわけでなく、日本での混入が否定されたわけでもありません。意図的なものであれば日本でも起こりえますし、事実過去にはありました。
原因が確定しない段階で中国製品のすべてが危ないと思わせるような報道は慎むべきです。可能性は低そうですが、もし原因が中国側でなかったらどうするんだろうと、他人事ながら心配です。
翌日(02/06)の日経には「冷凍食品の販売量が4割減」との記事が出ていますが、6割の人は煽られずに買っているわけですから、冷静な人も結構いるものです。
メタミドホスの経口急性毒性については、半数致死量(LD50)が体重1kgあたり30mgとされています。これは60kgの成人では1800mg(個体差があり、子供ではかなり少なくなります)に相当します。今回検出された最高値は130ppmですから、ギョーザ1kgにつき130mg含まれているわけです。この濃度で半数致死量に達するには計算上13.8kgのギョーザが必要です。
子供の重症例もあり、もっと高濃度のものが存在する可能性を否定できませんが、少なくともいまの段階で殺人ギョーザなどと呼ぶのは余計な恐怖を招き、不適切でしょう。誇大な報道の影響は、一般の消費者にとっては買うものを変更するだけですみますが、関係業界には深刻な影響を与えます。罪のない失業者を必要以上に生むという、理不尽な可能性があることを週刊朝日の記者は想像しているのでしょうか。
週刊誌で火をつけて、新聞で水をかける、もっとも水はあまり読まれない社説だけであり、新聞の主要部は火をつける方の役割です。結局、火勢が強くて、社説はおそらく焼け石に水でしょう。それを承知の上のことだろうと思います。
モラルと使命感を捨て、販売量だけを考えれば、こんな週刊誌ができ上るのでしょうか。もし、すべてを承知の上での恐怖の煽動記事なら、悪質です。反対に使命感に基づく恐怖報道ならば、見識が疑われます。
いずれせよ、一時の販売には寄与しても、長期的には信用を失うことになるのではと心配してしまいます。週刊誌ってものは元々こんなもんだ、と言われればそれまでですが。
スポーツ新聞の見出しではありません。02/01朝日朝刊に掲載された週刊朝日の広告に書かれた見出しの言葉です。週刊朝日は朝日新聞社発行の比較的「上品」とされる週刊誌です。週刊朝日を購入すると、本体の目次には『中国「殺人食品工場」の実態』という語句まであります。品性を疑いたくなります。
死亡続発の「殺人食品工場」製の食品は危険だから中国製食品最新リストを手に入れて身を守ろう、というメッセージが伝わってきます。中国ギョーザの恐怖につけ込み、さらにその恐怖を拡大しようとする意図が見えます。
記事の中身は見出しから想像がつくとおりで、中国での事故例やひどい話の記述が中心です。「家計を節約しても命を落としては元も子もない」が結語であります。
一方、同日の朝日新聞社説では冷静な対処を呼びかけています。一部を抜粋します。
『中毒が起きたことが公表されると、日本では中国食品への不安の声が一気に高まった。中国製というだけで、今回のギョーザとは無関係の冷凍食品がスーパーから撤去されたり、外食産業でメニューからはずされたりする動きが出た。
だが、日本人の食生活はいまや中国食品なしでは成り立たない。中国にとっても、輸出先として日本はなくてはならない存在だ。中国食品の安全は日中の共通の利益なのだ。中国人技術者を日本に招いて食品安全の研修をする構想があるのも、共通の利益があるからだろう。
今回の事件は、長い間の停滞から再出発したばかりの日中両国にとって、大きな試金石といえる。冷静に協力し合って解決に導けば、中毒事件の打撃を減らし、成熟した関係への一歩ともなる』
大変まともな主張であり、同じ会社のものとはとても思えません。この会社には表の顔とは異なった裏側の顔があるのでしょうか。
少なくとも現時点では、事件が中国の生産・流通システムに起因したものと断定できるわけでなく、日本での混入が否定されたわけでもありません。意図的なものであれば日本でも起こりえますし、事実過去にはありました。
原因が確定しない段階で中国製品のすべてが危ないと思わせるような報道は慎むべきです。可能性は低そうですが、もし原因が中国側でなかったらどうするんだろうと、他人事ながら心配です。
翌日(02/06)の日経には「冷凍食品の販売量が4割減」との記事が出ていますが、6割の人は煽られずに買っているわけですから、冷静な人も結構いるものです。
メタミドホスの経口急性毒性については、半数致死量(LD50)が体重1kgあたり30mgとされています。これは60kgの成人では1800mg(個体差があり、子供ではかなり少なくなります)に相当します。今回検出された最高値は130ppmですから、ギョーザ1kgにつき130mg含まれているわけです。この濃度で半数致死量に達するには計算上13.8kgのギョーザが必要です。
子供の重症例もあり、もっと高濃度のものが存在する可能性を否定できませんが、少なくともいまの段階で殺人ギョーザなどと呼ぶのは余計な恐怖を招き、不適切でしょう。誇大な報道の影響は、一般の消費者にとっては買うものを変更するだけですみますが、関係業界には深刻な影響を与えます。罪のない失業者を必要以上に生むという、理不尽な可能性があることを週刊朝日の記者は想像しているのでしょうか。
週刊誌で火をつけて、新聞で水をかける、もっとも水はあまり読まれない社説だけであり、新聞の主要部は火をつける方の役割です。結局、火勢が強くて、社説はおそらく焼け石に水でしょう。それを承知の上のことだろうと思います。
モラルと使命感を捨て、販売量だけを考えれば、こんな週刊誌ができ上るのでしょうか。もし、すべてを承知の上での恐怖の煽動記事なら、悪質です。反対に使命感に基づく恐怖報道ならば、見識が疑われます。
いずれせよ、一時の販売には寄与しても、長期的には信用を失うことになるのではと心配してしまいます。週刊誌ってものは元々こんなもんだ、と言われればそれまでですが。