噛みつき評論 ブログ版

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鳩山政権を支援する朝日社説

2010-06-03 09:25:57 | Weblog
 鳩山首相はついに辞任を表明しました。それにしても不思議なのは、地位と仕事を中途で放棄せざるを得ないという厳しい境遇の只中にあって、奇妙に明るい首相の表情です。この表情は国のために立派な仕事を成し遂げた直後なのかと一瞬錯覚するほどです。これは普通の人間にはきっと解けない謎でしょう。それはさて措き、辞任表明の前に書かれた6月2日の朝日社説は鳩山首相の政権維持を求める極めて異色の内容です(以下、一部を引用)。

「目前の参院選を何とか乗り切るために、鳩山由紀夫首相に辞めてもらう。そういう狙いが見え見えである。考え違いというほかない」
「確かに深刻な失政である。外交・安全保障分野に限らず、首相の言葉の軽さと判断のぶれは目に余る。国の指導者としての資質に疑問符がつき、内閣支持率の危機的な水準は世論が首相を見放しつつあることを示している」
「しかし、時代は決定的に変わったはずではなかったのか」
「トップリーダーの力量、理念政策の方向性、政治手法や体質といった政党の持つ統治能力そのものを有権者が見比べ、直接選ぶ。それが時代の政治の姿であるはずだ」
 「鳩山政権の迷走でかすんだ感があるとはいえ、政治の質を根本的に変える試みの意義は大きい」
 「いま民主党がなすべきは、政権8カ月の失敗から何を学び、どこを改めるのか、猛省することである」

 つまり有権者が直接選んだ政権であり、政治の質を根本的に変える試みの意義が大きいから、深刻な失政があっても資質に重大な疑問があっても継続しなければならない、というご主張になりましょうか。

 これは政権の機能よりも選挙という民主的な手続きを経て成立したことを重視する非現実的な形式論であります。大事なことは国民が無能な政権によって不利益を被らないようにすることです。また「民主党が8カ月の失敗から学び、改める」というのは抑止力に関して鳩山氏の「学ぶにつけ・・・思いに至った」という発言と符合します。勉強は政権を取る前にしておくものであり、また資質が勉強によって改まるとは考えられません。

 5月29日の社説でも「首相は歩み続けるしかない」と継続を支持しています。ついでながら、同社説では、普天間飛行場の移設問題に関して「私たちは5月末の期限にこだわらず、いったん仕切り直すしかないと主張してきた」と述べ、これは社民党の主張と一致します。5月末決着を反故にすれば12月のトラスト・ミー発言で失った米国政府に対する信用をさらに失うことになると考えられますが、朝日の「腹案」でもあるのでしょうか。

 朝日新聞は民主党政権の成立に力を貸してきたわけですから、少しはこの政権に責任を感じてもよい立場です。「トップリーダーの力量、・・・」などが期待外れとなった以上、、形式論を楯に政権の継続を主張するのは見苦しいことです。いさぎよく「衆院選前、私たちは民主党の姿を誤って伝え、有権者の期待を煽って投票を間違った方向に誘導しました」と認める程度の度量があってもよいと思います。