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岩手県一関市生まれで、盛岡市在住の作家・中津文彦(なかつ・ふみひこ)さんの連作時代小説『塙保己一(はなわ・ほきいち)推理帖・亥ノ子の誘拐(いのこの・かどわかし)』(『塙保己一推理帖・観音参りの女』改題)と『塙保己一推理帖・枕絵の陥し穴(まくらえのおとしあな)』(『移り香の秘密・塙保己一推理帖』改題)と『つるべ心中の怪・塙保己一推理帖』(以上、光文社発行)を読みました。
最初に『塙保己一推理帖・亥ノ子の誘拐(いのこのかどわかし)』を読み始めた時、前に読んでいるように思って調べたら、単行本の『塙保己一推理帖・観音参りの女』(カッパ・ノベルス:新書版)を改題したものでした。
内容(「BOOK」データベースより)初冬の浅草で、吉原の大店の一粒種が誘拐され、2日後には大川端で哀れな骸となって見つかった。だが、犯人はどうやら別の子と間違えて連れ去ったらしい。この誘拐劇が、吉原独自の風習である亥ノ子の祝い日に起きたのはなぜか。苦界に生きる女の情念の炎を描く表題作のはか、享和2年の江戸を舞台に、盲目の大学者・塙保己一の推理が冴える時代ミステリーの傑作。
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文庫本も単行本と同じで、第1話 観音参りの女、第2話 五月雨(さみだれ)の香り、第3話 亥ノ子の誘拐(いのこのかどわかし)、あとがき の順で構成されています。
内容(「BOOK」データベースより)年明け早々からしばしば烈風に襲われた、享和2年(1802)の江戸市中。検校・塙保己一は、幼馴染の河田屋善右衛門を訪ねた根岸の里で、不審な失火事件を聞いた。大店の隠居所が焼けて、若い母親と赤子の2人が逃げ遅れて死んだ、というのだ。両眼は光を失って久しいが、保己一には、研ぎ澄まされた感覚と、群を抜く記憶力があった。杖代わりの和三郎と共に焼け跡に足を運んだ保己一が「見た」ものは何か!~時代小説に新風を吹き込む塙保己一シリーズの幕開きを告げる傑作中編小説「観音参りの女」ほか、著者渾身の書下ろし連作時代小説。
内容(「MARC」データベースより)捕り物帖に新しいヒーローが登場!「群書類従」を著した盲目の大学者・塙保己一が、友人の南町奉行と協力して事件を解決。歴史的人物も多数登場する、文政年間の江戸市井もの。
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2冊目は、 光文社文庫『連作時代小説・枕絵の陥し穴(まくらえのおとしあな)塙保己一推理帖』(『移り香の秘密・塙保己一推理帖』改題)2010年1月20日 初版1刷発行。
文庫本も単行本と同じで、第1話 移り香の秘密、第2話 三番富の悲劇、第3話 枕絵の陥し穴(まくらえのおとしあな)、あとがき の順で構成されています。
内容(「BOOK」データベースより)裏稼業の枕絵で潤う地本問屋の北野屋に押し入った賊が、主人とその内儀を惨殺した。奪った金子は150両。重傷を負った一人娘の意識が戻らないなか、疑いをかけられた刷り師の丑蔵が頑なに口を閉ざすのは、なぜなのか。秘め事の夜が招いた一家の悲劇を描いた表題作のほか、文化爛熟期の江戸を舞台に、盲目の大学者・塙保己一が活躍する大好評シリーズ第2弾。
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(下2つ)B6判347ページ、単行本、『移り香の秘密 塙保己一推理帖』は書下ろし作品です。2006年3月25日初版1刷発行。
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(下2つ)B6判323ページ、『つるべ心中の怪(つるべしんじゅうのかい)塙保己一推理帖』2008年1月25日 初版1刷発行。
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これらの本の主人公は、江戸時代の国学者で、『群書類従』『続群書類従』の編纂者として有名な塙保己一(はなわ・ほきいち)という盲人(歴史上の人物)です。名前だけは知っていても、どんな生涯だったのか知らない者にとってはとても感動する物語でした。
著者が「あとがき」に書いていることですが、「学者としての塙保己一については『群書類従』編纂の大偉業によってよくしられているが、その人物像となると探るべき手だてもあまり残されていない。先人の著した伝記や、わずかな伝承などによって垣間見るしかないのだが、多少の想像力を添加してそれらを凝視してみると、意外なほどに魅力的で人間味あふれる姿が浮かび上がってくる。超人的な記憶力に恵まれていただけでなく、すぐれた推理力の持ち主だったことがわかるし、階層を超えた多くの人々との交流もあった。学者然とした、近寄りがたい人物ではなかったのだろう。(中略)本書の物語は、享和3年(1803)というから今から200余年前を舞台にして綴ったもので、翌春には登勢がめでたく中津金十郎と華燭の典を挙げる。そして、保己一の腹積もりでは、この金十郎という若者を将来は跡継ぎにしようと決めているのだが…。
実は、この先には大きな”どんでん返し”が待ち受けているのだ。イヨは、これから保己一の男児を続けて2人生むのである。このため、塙家の跡取り問題はちょっと面倒な経緯をたどることになるのだが、それはこの後の続編でご紹介していくことにしよう。
もちろん、この連作物語では、こうした塙家の内情について興味本位で綴っているつもりはない。不世出の大学者である保己一の生涯を知っていただきたい、というのが第一の眼目である。ただ、保己一はきわめて人間味あふれる人物だったために、その身辺にはさまざまな波瀾も生じ、事件も起きた。それらを避けて通ろうとせずに、多忙の中で胸を痛めたり、あれこれ推理をはたらかせたりする保己一の姿に、共感と魅力を覚えていただければありがたいと思っている。2006年早春 著者」
[書下ろし連作時代小説『移り香の秘密~塙保己一推理帖』(2006年3月25日 初版1刷発行、単行本)より]
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A1%99%E4%BF%9D%E5%B7%B1%E4%B8%80 [塙保己一:Wikipedia]
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%B4%A5%E6%96%87%E5%BD%A6 [中津文彦:Wikipedia]