何だかいろいろとつまらなくて、歯医者に行った。
なんとなく、ふらっと。
不可解な理由だけれど、本当にそういう理由で。
実に15年ぶりくらいに。
どこか痛かったわけでも、詰め物が取れたとかいう理由も一切なく。
まあしいていうなら、15年も歯医者に行ってないのはどうなんだということと、親知らずの状態を診てもらいというのはあった。
大学生の頃、矯正歯科医院でバイトしていたことや、虫歯だとか歯周病だとかの記事をライターの仕事として書いたことがあるので、なんとなく検査や治療の内容は知っていた。
歯周病は、20歳を過ぎると8割以上の人が罹患しているらしいということも、歯周病とは何かもおよそ知っていた。
けれど、さすがに15年ぶりともあり、歯医者というそのイメージだけで私はビビっていた。
問診票の年齢の箇所に、迷わず「30」と書いていた。
本当は「29」なので、二重線で修正したのだが、年を多めに間違う人はいるのだろうか。
早生まれである私は世間的によく言われる「30」という節目の年を早めに認識しすぎてしまって、年を聞かれると既に「30」と答えてしまっている。
1月に「30」になったらもう1年「30」というのか、それともまた先に一つ年を重ねて「31」というようになるのだろうか。
私次第だけれど、どっちだろう。
先に全体を検査してもらい、レントゲンを撮り、下の歯の歯石を取ってもらう。
超音波という機械で歯石を破壊していくらしいのだが、普段絶対に触られることのない場所に触れられるの痛くすぐった痛い。
15年も歯医者に一度も行ってなかった割にはキレイです、下の親知らずはいずれ抜いた方が良いかもしれません、1本だけ治療した方が良い虫歯があります、治療は次回1回で終わります、少しだけ歯肉が下がっている箇所があり歯周病が疑われます、歯ブラシの力が強いと思います、年に2~3回は歯医者でクリーニングする方が良いです。
ということだった。
「15年も歯医者に行ってなかった割には」と連発されたので、「その割には」まあまあの状態だったのだろう。
あまり考えてこなかったけれど、歯は一生ものだし、痛いのは嫌だし、よく言われるように定期的にメンテナンスに行った方が良さそうだ。
次回の予約を入れて、とてもすっきりした気分だったので、自転車を走らせる。
帰れなくなるといけないので遠くまでは行けないけれど、東京の道を走るのは気持ちがいい。
本当に知らないところばかりで。
一か所に長くいたことはないので、東京はどの土地もいつまで経っても借りもの感覚である。
東京は、私にとってずっと自由の象徴であり、憧れの対象なのかもしれない。
どんなにど真ん中に居続けても。
しかし思えば、実家の近くの土地だって、知らないところだらけだとも思う。
15年ぶりの歯医者から帰って、ハンバーグを作る。
何てことはないことだけれど、これは私にとっては偉業、というか枠外のことである。
ひき肉を手でこねるなんて、手もボウルも皿も汚れるので絶対やらない、というのがポリシーと言えるくらいにあった。
しかし、なんだか今日は15年ぶりの新しいことをした気分で、枠を破る行為そのものがしたくなった。
だから、ハンバーグが食べたかったと言われればそういうわけではない。
なので、材料は十分にはそろっておらず、パン粉の代わりに片栗粉を、しなびそうなピーマンを、かさ増しにしめじを、牛乳の代わりに酒を。
ハンバーグの正しい材料はよく分からないけれど、ちょっと違うなと思いながらも、手にビニールをして肉をこねる。
手では触りたくないので、スプーンで成形する。
水分が多くてタネがゆるく、随分とふわふわでひっくり返すのに苦労したけれど、ハンバーグはできた。
ソースのことははじめから考えておらず、玉ねぎを炒めたときの塩コショウしかしなかったのでウスターソースをかけて食べる。
劇的においしいわけでは全然なかったけれど、普通にはおいしかった。
だいたい、肉メインの料理で不味くなるということは、生焼けとか丸焦げとか以外にはあまりないように思う。
それだけ肉は肉様なのだと思う。
熟れ過ぎたソルダムを買ってしまった。
どうしてこんな状態のものを売っているのだろうかというほどぶよっとしていて、それに気づいたのは冷蔵庫にしまうときに赤い果汁が滴っていたからだ。
食べられるのか、と思って、血みたいな真っ赤な果汁滴るソルダムをシンクの上で食べてみる。
ブチュっと果汁が飛び出して、まな板に血しぶきみたいにかかった。
床に落ちた果肉は血痕みたいだった。
私の作る句に、意図せず2回「血」という言葉が出てくるし、「血」は度々私の言葉の中に出てくるのだけれど、私はモチーフとしての「血」に特別なこだわりは持っていない。
「それよりももっと赤い血が体中に流れてるんだぜ」というブルーハーツの「夕暮れ」を思い出すくらいだ。
そう、当然、そうなのだ、ということくらい。
なんとなく、ふらっと。
不可解な理由だけれど、本当にそういう理由で。
実に15年ぶりくらいに。
どこか痛かったわけでも、詰め物が取れたとかいう理由も一切なく。
まあしいていうなら、15年も歯医者に行ってないのはどうなんだということと、親知らずの状態を診てもらいというのはあった。
大学生の頃、矯正歯科医院でバイトしていたことや、虫歯だとか歯周病だとかの記事をライターの仕事として書いたことがあるので、なんとなく検査や治療の内容は知っていた。
歯周病は、20歳を過ぎると8割以上の人が罹患しているらしいということも、歯周病とは何かもおよそ知っていた。
けれど、さすがに15年ぶりともあり、歯医者というそのイメージだけで私はビビっていた。
問診票の年齢の箇所に、迷わず「30」と書いていた。
本当は「29」なので、二重線で修正したのだが、年を多めに間違う人はいるのだろうか。
早生まれである私は世間的によく言われる「30」という節目の年を早めに認識しすぎてしまって、年を聞かれると既に「30」と答えてしまっている。
1月に「30」になったらもう1年「30」というのか、それともまた先に一つ年を重ねて「31」というようになるのだろうか。
私次第だけれど、どっちだろう。
先に全体を検査してもらい、レントゲンを撮り、下の歯の歯石を取ってもらう。
超音波という機械で歯石を破壊していくらしいのだが、普段絶対に触られることのない場所に触れられるの痛くすぐった痛い。
15年も歯医者に一度も行ってなかった割にはキレイです、下の親知らずはいずれ抜いた方が良いかもしれません、1本だけ治療した方が良い虫歯があります、治療は次回1回で終わります、少しだけ歯肉が下がっている箇所があり歯周病が疑われます、歯ブラシの力が強いと思います、年に2~3回は歯医者でクリーニングする方が良いです。
ということだった。
「15年も歯医者に行ってなかった割には」と連発されたので、「その割には」まあまあの状態だったのだろう。
あまり考えてこなかったけれど、歯は一生ものだし、痛いのは嫌だし、よく言われるように定期的にメンテナンスに行った方が良さそうだ。
次回の予約を入れて、とてもすっきりした気分だったので、自転車を走らせる。
帰れなくなるといけないので遠くまでは行けないけれど、東京の道を走るのは気持ちがいい。
本当に知らないところばかりで。
一か所に長くいたことはないので、東京はどの土地もいつまで経っても借りもの感覚である。
東京は、私にとってずっと自由の象徴であり、憧れの対象なのかもしれない。
どんなにど真ん中に居続けても。
しかし思えば、実家の近くの土地だって、知らないところだらけだとも思う。
15年ぶりの歯医者から帰って、ハンバーグを作る。
何てことはないことだけれど、これは私にとっては偉業、というか枠外のことである。
ひき肉を手でこねるなんて、手もボウルも皿も汚れるので絶対やらない、というのがポリシーと言えるくらいにあった。
しかし、なんだか今日は15年ぶりの新しいことをした気分で、枠を破る行為そのものがしたくなった。
だから、ハンバーグが食べたかったと言われればそういうわけではない。
なので、材料は十分にはそろっておらず、パン粉の代わりに片栗粉を、しなびそうなピーマンを、かさ増しにしめじを、牛乳の代わりに酒を。
ハンバーグの正しい材料はよく分からないけれど、ちょっと違うなと思いながらも、手にビニールをして肉をこねる。
手では触りたくないので、スプーンで成形する。
水分が多くてタネがゆるく、随分とふわふわでひっくり返すのに苦労したけれど、ハンバーグはできた。
ソースのことははじめから考えておらず、玉ねぎを炒めたときの塩コショウしかしなかったのでウスターソースをかけて食べる。
劇的においしいわけでは全然なかったけれど、普通にはおいしかった。
だいたい、肉メインの料理で不味くなるということは、生焼けとか丸焦げとか以外にはあまりないように思う。
それだけ肉は肉様なのだと思う。
熟れ過ぎたソルダムを買ってしまった。
どうしてこんな状態のものを売っているのだろうかというほどぶよっとしていて、それに気づいたのは冷蔵庫にしまうときに赤い果汁が滴っていたからだ。
食べられるのか、と思って、血みたいな真っ赤な果汁滴るソルダムをシンクの上で食べてみる。
ブチュっと果汁が飛び出して、まな板に血しぶきみたいにかかった。
床に落ちた果肉は血痕みたいだった。
私の作る句に、意図せず2回「血」という言葉が出てくるし、「血」は度々私の言葉の中に出てくるのだけれど、私はモチーフとしての「血」に特別なこだわりは持っていない。
「それよりももっと赤い血が体中に流れてるんだぜ」というブルーハーツの「夕暮れ」を思い出すくらいだ。
そう、当然、そうなのだ、ということくらい。