WIND AND SOUND

日々雑感 季節の風と音… by TAKAMI

「冬ソナ」のレッスン

2006-11-29 | アーティスト魂
今年の8月下旬からピアノのレッスンを始めた、初心者のSさん。60歳。
動機は、「冬ソナ」にハマって、この美しい曲を自分で弾いてみたいとのこと。
まだ今のところ、ただ1人の生徒さんです。
ご主人が調律師さん。私のピアノを調律してくださった方の奥様というわけです。

先日Sさんに、私のブログにSさんのことを書いてもいいですよという了承を得たので、

思い切り長々と書かせていただきます(*^_^*)

9月には、せっかくレッスンをスタートしたのにぎっくり腰になったとかで、2,3週お休みし、治ったと思ったらすぐに、医療事務の講座を4ヶ月間無料で受けられるという選考に抜擢され、平日9~16時の講座を受けながらのレッスン通いです。
それまでなさっていたお仕事を退職され、時間がたっぷりあるからピアノの練習を…といって始められたのでしたが、とんでもないハードなことになっています。
おいおい、だいじょうぶなんだろうかなぁ~

…と思っていたら、
たった3ヶ月足らずで、1曲め(あなただけが)をクリアー。
レッスンは毎週月曜日。
医療事務の講座の終わったその足で、すぐにバスに乗っていらっしゃいます。
家に着いたときには、まだ頭の中が切り替わっていない状態。
そりゃそうだ~、、6時間みっちり授業を受けた直後なんだもん。
試験の前日にも、休まずにいらっしゃいます。
「明日は試験だから」といって、フツー休むだろ~~、、、
ところが、彼女は気分転換になるからといって、どんなに忙しくても、ピアノを弾く時間は必ず作っているようです。
あまりにも上達が早いので、
「無理なさってないですか? ツラくないですか?」
と、こちらから聞くほどです。
でも、彼女は、全く「辛い」と感じることはなく、これは、期限があるわけでもなく、自分のペースでできることなので、むしろ楽しんでやっているとおっしゃいます。
そのおっしゃり方が、「飄々、淡々」としてるところがさすが、生きてきた歳月の重みを感じます。

1曲目を予想以上の早さでクリアーしたので、今度は、ちょっと難しい2曲め(My Memory)に挑戦しているのですが、忙しい中、時間をみつけてコツコツとやった痕跡がみられて、感心しながら聞かせていただいていると、最後のページの2小節めのところで、いきなり弾くのをやめて「ここまでです。」とおっしゃるのです。

ピアノの練習って、ひとつひとつのパーツを確実に作って組み立てていく、プラモデル作りと似ています。だらだらと全体を撫で回すように弾くだけでは、なかなか上達しないのです。子供は、この「パーツを確実に」っていうのがなかなかできなくて、早く完成形を手にしたいあまり、手を抜きまくって、結局中途半端になってしまう。私もそうだったもんな~。学習雑誌の付録作りなんかも、せっかちで、きちんと仕上げることができなかったもんね(^_^;)
でも、大人は、「急がば回れ」も理解できる。
だから、コツコツと、小さなパーツにじっくり取り組んで、少しずつ組み立てていくことができる。
「ここまでです」が言えるのは、そういう取り組みの証しなのです。

パーツのなかには、「ペダリング」というのもあります。
私は、大人の生徒さんには、最初からペダルを使って曲を仕上げていただこうと思ってます。(もちろん、ペダルに頼って、両手の音の繋ぎ方、切り方をおろそかにしないことが前提)
Sさんは、ペダリングを教えてあげたとたん、自分がこんな音楽の世界をつくれるんだと嬉しくて、もう、それはそれはハマりまくって、練習しまくったようです。
レッスンで、成果を披露して下さるのを聴いていて、私も感動してしまいました。

私にも、とても勉強になることがたくさんあります。
普通、初心者の方は、ピアノの基礎から、じっくり「バイエル」や「ハノン」などという練習用テキストを経て、「楽曲」に挑戦していくのですが、そういうのが全くなく、いきなり自分の弾きたい曲に取り組んでいるのですから、いろいろと壁があります。
その中で、私が今回気づいたのは、「初心者は、薬指、小指を使うことを敬遠する」ってこと。これが、普通の人の当たり前なのですよね(^_^;)
PCのキーボードだってそうじゃん。

「冬ソナ」の譜面には、全く指番号が書いてありません。
なので、私がかなり細かく書き込んで差し上げているつもりなのですが、「ここは放っといても自然にこの指になるから」と思って、書き込まずにいると、翌週とんでもないことになっていたりします。
なんでわざわざそんなややこしい指使いにするんじゃ~~!!
…しかし、初心者にとっては、日常で使い慣れている指を使ったまでのこと。
こういうことは、「バイエル」から入門している人にはあり得ません。
私は、バイエルを否定してるわけでは決してないのです。ただ、せっかく「この曲」が弾きたくてピアノに入門したんだから、早く好きな曲を弾けるようにしてあげたい、でも、そのためには、その曲をテキストにして、この曲に必要なテクニックは、この曲の中でマスターしてほしい。
そんな中でレッスンを進めていくと、こんなびっくりするようなことがあっり…。この人をここまで駆り立てる「冬ソナ」も、全巻、観ました(^_^;) 。

韓流ドラマにハマっているSさんは、韓国に行ったり、ハングル語を習ったり、韓国料理を習ったり、そこで交友を広げて、いつか、みんなで韓国のどこだかのコンドミニアムを借りて、スーパーで買い物して、韓国料理を作って楽しむのが夢だそうです。

Sさんは、私から見て、特に音楽やピアノの才能が突出しているわけではないのです。
彼女が、たった3ヶ月で「あなただけが」が弾けるようになったのも、この「夢を叶えようとする」ベクトルに他ならないと思います。
今挑戦している「My Memory」は、私も大好きな曲で、Sさんがこれをきれいに弾く日がとっても楽しみ♪

私は、東京のアパートで、長い間電子ピアノしか自宅に置けない生活をしてきたので、今でもピアノの倍音を伴った響きが部屋の中をうねっているのが、とっても新鮮で嬉しいのです。
初めてペダルを使って、自分で好きな曲を弾けるときの感動って、こんななんだろうな。
この気持ちは、絶対に忘れてはいけないことだと思います。

     
鮭、ホタテ、アスパラ、コーンの包み蒸し・ほうれん草&油揚げ炒め・豆腐、えのき、水菜の味噌汁 / オムライス(チョリソ、人参、ねぎ)・大根、白菜、ベーコンのスープ
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10 Comments

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老後 (おゆき)
2006-11-29 16:50:10
老後と言ったら失礼だけど
私もある程度の年齢になったらSさんのような生活を
する予定だったのよ~~~
なのに死ぬまで働かねばならない状況だわ(・Θ・;)アセアセ…

好きこそ物の上手なれ・・・
情熱 夢 って凄いね~~~

★そっか・・・ピアノはダラダラ全部弾かせるのでなく
 短く区切ってやらせるのね〆(._.)メモメモ

★美味そうなご飯だ・・・御腹空いた・・・・
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Unknown (TAKAMI)
2006-11-29 17:25:07
♪おゆき
そうよそれそれ!
「好きこそものの上手なれ」よ。
すごいわ~~ホントに。これからもたぶん、彼女のことは記事にさせていただくと思います(*^_^*)
オムライスはね、Takのは大成功ですっごくきれいに包めたのよ。でもヤツは、せっかく作ったドミグラスソースをかけなくていいって言うの( ̄‥ ̄)=3 フン
でっ、私のだけかけた(っていうか、下に敷いた)んだけど、こっちは失敗よ(T_T)
返信する
基礎訓練と実践的訓練 (hawk)
2006-11-29 20:18:15
ぼくは仕事柄 いろいろなプログラム言語を使いますが
いずれも基礎教育なし
実際に目下の仕事を解決するという環境下で
半ば実地に覚えてきたものです

確かに ちゃんと基礎教育を受けた人にまける部分もあります
しかし逆にぼくの方がすぐれている部分もあります

ぼくも基礎教育過重視の訓練プログラムにはむしろ反対です

(もっともぼくも 年とともにだんだん第一線を離れ
 特に 今の世の中で一番大事なネットワーク部分が
 ぼくは弱く だんだん使い物にならなくなってきていますが…)

ぼくの英語もそうです
ほとんど基礎教育がなく
実践のなかで覚えてきました

音楽と いっしょにはならないかもしれませんが…
返信する
Unknown ()
2006-11-29 23:57:40
一瞬ROMっちゃおうかと思ったのですが、おゆきさんやhawkさんのコメントを読んでいて、私も「そうそう!」と思うことがあったので、書かせていただきます!

そーですよ!学校に通わなければ写真が撮れないわけじゃない。
英語塾に行ってりゃ英語が堪能になるってわけでもない。
デザイン学校に通ったことがなければ、デザインができないってわけでもない。
要するに“本気”と“やる気”の問題だと思っております。
(もちろん“センス”の問題ってのもあるけど)
でもって、何よりも“実践”に勝るものはないと思っております。
私もどちらかと言うと身体で憶えるタイプなの。
でも、その分憶えたら結構しっかりと身になるのよ~!
それだけは自慢できる!
(ただ私の場合“やる気”が“本気”に変わるまで時間がかかるのが難点なのです・・・)
演奏にしても写真にしても心がこもってなければ、とてもツマラナイ作品になってしまいます。
大切なのは、何をどう表現したいのか?ってことなんじゃないかと・・・最近になって、ようやくわかりかけたところだす・・・(遅い?
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ピアノ (kaede)
2006-11-30 06:12:31
時々猛烈にピアノが弾きたくなることがあります。
私ももう少し自分の時間ができたら、Sさんのように自分のためにピアノを習いたいな。

習っていた頃は「自分のために」という意識が薄かったから…でも最後の方(高1ぐらいかな?)は習うことも楽しかったし部活でも腱鞘炎になるまで弾きまくってました。今はバイエルもハノンも、ソルフェージュさえも「なくてはならなかったもの」と理解できます。今だからね。
返信する
Sさん (ikehirochan2)
2006-11-30 09:55:29
素晴らしいですね。
皆さんもコメントしてらっしゃるようにやっぱり『やる気』です。
何かを始めるのに年は関係ない。
それを思い知らされたのが私の従姉妹です。
従姉妹は昨年55歳で大学に入りました。
第2外国語にスペイン語を選択。
入学して半年後の昨年秋に自分で(業者を介して)ホームスティ先を見つけ単身スペインに渡り、3ヶ月スペインの大学で語学研修。
週1回程度の授業を半年受けただけで、片言すら話せないのに、ですよ。
今年の4月にも再度スペインに行き、今度は1ヶ月同じ大学でもう1つ上のクラスで語学研修を受け、日常会話は不自由なし。電話もOKまでに。
先日、南米からこちらにきた家族がいて奥さんがスペイン語しか話せないということで、従姉妹と一緒にそちらに伺ったのだけど、2時間ほどの間会話が途切れることなく続いたのにびっくり!
本当に感心してしまいました。
彼女は将来エルサルバドルに永住したいという夢があって、その夢の為、スペイン語を頑張っているのです。
『やる気』が違いますもん。そして楽しみながらやってる、ってとこがSさんも従姉妹も素晴らしいと思います。
遅まきながら私もいたく刺激を受けまして、ちょっと始めています。(何を?かは聞かないでね)
返信する
時間は作るもの♪ (K3B)
2006-11-30 10:06:27
Sさん☆
素敵な方ですね◎

わたしもず~~~~っと
“なにか楽器がやりた~~い”って悶々としてて,
約2年ちょっと前にサックスと出逢い
水を得た魚のように
『うおりゃ~~!!
  この曲吹きたかったんじゃぁ~~~~
 絶対モノにしたるぞぉ~~~!☆』
ってな感じで
 仕事と家庭の合間をぬっていろんな曲に取り組んでおります◎
返信する
Unknown (TAKAMI)
2006-11-30 17:29:54
♪hawkさん
なるほど~~~~~
「基礎教育過重視」か。
楽器の練習(芸術)と一緒にするなと、一部アカデミックなところから言われそうですが、やっぱり私、hawkさんのコメントを拝見して、私の考え方はこれで良いのだ!と思いました。
片や、まっきーがご自身のブログで「武道」について、「基礎」「真髄」について書かれているのを読んで、これまた然り…
私が今回の記事で書いたことは、「武道」でいえば、夜道で怪しい人物に襲われそうになったとき、すぐに使える護身術を短期間で身につける」っていうことかもしれません。
動機がどうであれ、手法がどうであれ、「音楽」や「武道」の真髄は変わらないのですよね。
「真髄」なんて、私自身にもわかっていませんけれど。
指導者は、どんな入り口から来た生徒でも、その少し先を一緒に歩いて、案内してあげればいいのだと思います。
うんと先に立って、立ったままで御託を並べてはいけないのだと思います。

♪凛ちゃん
力強いコメントありがとう!
私も、「本気」になるまで時間がかかるわ(^_^;)
しかも私なんて、まだまだ「時間がかかってる途中」だわ(^_^;)
「基礎」はね、真剣にやってれば「必要だ」と思うときがいずれくるような気がするのよ。
そこで「基礎」に立ち返っても、全然遅くはないと思うんだよね。
やりたい、表現したいって気持ちが、全部を引っ張っていくんだと思う。

♪kaedeちゃん
猛烈にピアノが弾きたくなるんだ~~
そういうときは、何でもいいから、鍵盤に触ってみたら?
なんか曲を弾こうと思わず、適当に音を鳴らすだけでもかなり楽しいと思うよ。
自分の好きな響きをみつけるのよ。
コレ、実は私もたまにやります。

♪ikehirochan2さん
ひゃあ~~~
ほんとにすごいです!
人って、そんなパワーが、生きている限り、あるんですね。
「エルサルバドルに永住」という夢が原動力なんですね!
人間、辛いことはあんまりやりたくないですよね。
「夢」とか「目標」があれば、辛くないんです。
ほんとに、励みになるお話ありがとうがおざいます。
それにしても、ひろさんの親族の方たちは、みなさん、インテリジェントで、素敵です。
またぜひ、後日談をきかせてくださいね。
それに、いずれはひろさんの「ちょっと始めている」ことも、披露してくださいね!

♪K3Bさん
そうそう、時間は作るものです。
「時間がない」といっているうちは、まだ乗り気じゃないんです。
まだその時じゃない…と思っているのです。
ホントにやりたかったら、時間をつくるってのは、私も経験しまくってきました。
サックスの今後の進展を、ぜひおきかせ下さい。
全く関係ない記事のコメントでもいいですよぉ~
楽しみにしてますから!

返信する
Unknown (cosmos)
2006-12-03 23:08:05
う~んSさん すてきですね~

目標がきっちり定まると ヒトは果敢に挑戦できるのですね

わたしもだんだんに目標を絞って 全力尽くしたいなあっておもうのです
触発されますね。
現実を見据えながら見守り、サポートするTAKAMIさんもすてきだー
返信する
Unknown (TAKAMI)
2006-12-04 22:04:00
♪cosmosさん
そうなんです。
年配の方は、自分の目的や目標がかなりはっきりとあるので、「自分のやりたいことだけを指導してほしい」という気持ちが強くて、自分の指導法を押し付けるようなレッスンは成り立ちません。
cosmosさんも、だんだんに目標を絞っていらっしゃるんですね… これからが楽しみ~(*^_^*)
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