エッセイと虚構と+α

日記やエッセイや小説などをたまに更新しています。随時リニューアルしています。拙文ですが暇つぶしになれば幸いです。

渋谷探訪

2013-03-06 15:14:58 | 小説
スターバックスカフェのガラス張りの先のカウンター席からはどのような景色が見えるのだろうと思った。
スクランブル交差点をわたり渋谷のシンボルとしてそびえ立つ109とは逆の方向へ歩き出した。高架下には以前とおったときより新しい飲食店が複数できていておよそ4年の歳月がいつの間にか流れ落ちていた。目の前が開けると坂道になっていてローソンを探すために上って行く。日曜日の午後12時。人通りは少なめであった。サッカーのユニフォームを扱っているスポーツ用品店を過ぎて3分は歩いたころやっとローソンが左の視界に入ってきた。109とは逆の方向へと歩き出した私の判断は間違っていたなかった事に安堵した。警備員の静止を受けて銀色のセダンが郵便局の地下駐車場へと入って行った。郵便局と一体化しているローソンは店舗規模が小さくてLoppiはゆうちょのATMと販売スペースとの間にあった。
アイドリングのライブチケットを検索してみたのだが3月3日公演のは既に売り切れていた。一瞬戸惑い店を後にした。坂道をさらに上るながらスマートフォンでアイドリングのライブの当日券があるのか検索してみるとホームページのイベント情報のところに記載されていた。とりあえず2時30分まで時間を潰さなくてはならない。両足に滞留している乳酸が限界に達してもいたからドトールに入った。
「アメリカンコーヒーのSサイズ」と注文してからすぐにアイスコーヒーにしなかったことを後悔した。まだ冬ではあるのに暖かかった。湯気を立てているマグカップを慎重に両手で持ち地下へと降りた。奥のソファーに座った。靴の中で伸び過ぎた爪が足の指を痛めさせていた。ダウンジャケットを椅子に掛けてバッグから本とスマートフォンを取り出してテーブルの上に置いた。はぁ~とため息をつくとベルトを少し緩め明日筋肉痛になるであろう腰や足をなるべく弛緩させようとした。メモ帳とペンを家に忘れてきてしまっていた。とりあえず本を読もうと考え、落合信彦の『狼たちへの金言』を開いた。読みながら足の痛みをゾクゾクと感じてくる。歩いているときは足の痛みというものはそんなに気にならないのだが座って休めていると途端に感じる。周りの席には人があまりいない。渋谷の駅からそれなりに歩いたところにある店舗だったからだろうか・・。駅付近でも日曜日なのになんだか人が少ないとう実感は街の外れにあるドトールにおいてもやはり浮かび上がってきたのだった。本を閉じてスマートフォンのロック解除をしsafariでお気に入りのアイドルのブログをチェックする。更新はなかったようだ。タッチパネルの上方に表示されているデジタルの文字は午後1時を過ぎていることを教えてくれたのだが、アイドリングのライブの開場までにはあと1時間半ある。約50分は座っていたことで足の疲労はかなりましになった。乱れて早くなっていた呼吸やも回復した。テーブルの上の物をしまいダウンジャケットをはおって、立ち上がると肩にバッグを掛けて食器を片付けカウンターに置いて店を出た。
109の方へ戻るために坂を下る。いつのまにか曇り空になっていた。スクランブル交差点にまた来たのだが街宣のがなりたてる声が澄みきった空気の中にどこまでも通って行ってしまう。振り返る人もいなくスピーカーのざわめきは3月の澄んだ空気の中にどこまでも虚しく吸い込まれていった。交差点を渡ると本屋が出来ていたことにびっくりした。センター街の入口にである。そんなことは私が学生の頃には考えられないことだった。アイドリングのライブがあるマウントレーニアホールがどこにあるのか確認しておかなければならないと思いとりあえず109の右の通路を行くことにしてブックファーストが見える位置まで歩いたがマウントレーニアホールは見つからなかった。体内時計的におそらくまだ午後1時30分くらいでライブの開場までには1時間はある。どうしようかと迷い、惑い慣れない外出の疲れもピークになっていた。仕方がないとすぐ先にあったTully's coffeeに入ってしまった。380円でアイスコーヒーのグランデサイズを頼み透明のプラスチックの容器に入れられた琥珀色のアイスコーヒーを受け取り手前の禁煙席に腰掛けた。
バッテリーが68%になっていたがイヤホンをスマートフォンに差し込んでロックミュージックで私の中に溜まりきったさまざまなマイナスのエネルギーを洗い流すことにした。アイスコーヒーを飲みながらロックミュージックを聴いていると口内から取り込むカフェインと鼓膜から脳神経に伝達される刺激が体内で混ざり合い化学反応が起きマイナスのエネルギーを中和させた。
浸りながら目を閉じコンクリートジャングルに来ていたことさえ忘却させられ自分の部屋でいつも覚えるナルコレプシーにも似た眠気が私をひと時の意識の喪失へといざなった。店員の肩を揺すり「お客さま」と発する声に目を覚ました。店内の時計を見ると既に2時50分であった。私は急いで店を出るとスマートフォンの地図を見ながらマウントレーニアホールを目指した。人波をかき分けて109を今度は左の道を進んで行く。地図の指し示す場所がやっと一致してそれらしきビビッドな白色でデコレートされた極めて近代的なビルに着いていた。
エレベーターで6階まで上がるとそこはマウントレーニアホールであった。たくさんの人の熱気に気圧されそうになるが受付でなんとか当日券を2500円で手に入れていざライブ会場へと足を踏み入れた。
そこで私を待っていたのは10輪の可憐な華であった。およそ1時間半のライブは私にまた歩き出すプラスのエネルギーを与えてくれた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿