4 コメント コメント日が 古い順 | 新しい順 花守り人(前編) (てまり) 2006-03-26 16:06:28 「花守り人」 【前編】初めて母の実家へ行った。とんでもない田舎。小学校6年になる春のこと。その実家の裏手の桜を見たとき声も出なかった。こんなに美しくてたくさんの桜は見たことがなかったから。まるで花びらの海だ。咲き誇る桜たち。いったい何本あるんだろう。深く息を吸い込むと体の中が桜の吐息でいっぱいになりそう。「すごいすごいすごーい!」私は一番近い樹に走りよる。と、そこには先客がいた。長い髪を白い紙のようなもので無造作に束ねてじっと立っている。(男の人?女の人かしら。着物に袴なんて時代劇みたい。刀を腰にさしてる・・・。本物?男の人よね・・・。)随分じろじろと私は見ていたのだろう。「娘はこの私が見えるのか」突然かけられた言葉に私は驚き、でもちゃんと答えた。「はい。見えます。」「人が私を見てくれたのはここに立つようになって初めてのこと」やわらかな物腰と声に私は少しだけ近づく。「あの、あなたは誰ですか・・・?」「ああ・・・私は花守りだ」「花守りって何ですか?どうしてこんな着物を着ているの?私が見たの初めてってなぜ?」次々出てくる私の質問に花守りは1つずつ答えてくれた。「この桜たち、見事であろう?何本あるのか私にもわからぬ。私はこの桜たちが毎年咲くのを守っている。だから花守りだ」「ずっと、前から?」「そう、ずっとだ」「どうして誰もあなたを見ないの?」「さあ・・・それはわからぬ」「ずっと昔からだから昔の服を着ているの?」「そう、これはおそらく私が死んだ時身につけていたものであろう」ぎょっとして花守りの顔を見る。どこから見ても普通の人間にしか見えない。「・・・おばけなの。」「そうかもしれぬが自分でもわからぬのだ」私はそろりと花守りの手をちょい、とつついてみた。確かな手ごたえがある。「おばけじゃないみたい・・・。」「では、何であろうなあ」花守りは遠くを見ながらぽつりと言った。「この桜たちは私の一族であったよ。一族の誰かが亡くなると桜を1本植えるのだ。代々、 そうしてきた。ああ・・・怖がらなくても墓は別にある。大丈夫だ」「戦がはじまったのだ・・・」花守りはため息をついた。「このような田舎でも武家は武家。我が国は勝利したが一族は私と姉上を残しみな桜に なった。by.てまり 返信する 言葉も無く (ミエル) 2006-03-27 16:08:22 胸がジーンとしました。あまりにも青くて、あまりにも美しくて、駆け引きの無い潔さが胸を打ちます。見せてあげたかったですね、本当に―。 返信する ありがとう♪ (pulse) 2006-04-01 00:34:18 てまりさん2部作のお話『花守り』(桜守)ありがとうございます。 返信する ありがとう (pulse) 2006-04-01 00:35:59 ミエルさんありがとうございますm(_ _)m 返信する 規約違反等の連絡 コメントを投稿 goo blogにログインしてコメントを投稿すると、コメントに対する返信があった場合に通知が届きます。 ※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます 名前 タイトル URL ※名前とURLを記憶する コメント ※絵文字はJavaScriptが有効な環境でのみご利用いただけます。 ▼ 絵文字を表示 携帯絵文字 リスト1 リスト2 リスト3 リスト4 リスト5 ユーザー作品 ▲ 閉じる コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。 コメント利用規約に同意する 数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。 コメントを投稿する
初めて母の実家へ行った。とんでもない田舎。小学校6年になる春のこと。
その実家の裏手の桜を見たとき声も出なかった。こんなに美しくてたくさんの桜は見たこと
がなかったから。
まるで花びらの海だ。咲き誇る桜たち。いったい何本あるんだろう。
深く息を吸い込むと体の中が桜の吐息でいっぱいになりそう。
「すごいすごいすごーい!」
私は一番近い樹に走りよる。と、そこには先客がいた。
長い髪を白い紙のようなもので無造作に束ねてじっと立っている。
(男の人?女の人かしら。着物に袴なんて時代劇みたい。刀を腰にさしてる・・・。本物?
男の人よね・・・。)
随分じろじろと私は見ていたのだろう。
「娘はこの私が見えるのか」
突然かけられた言葉に私は驚き、でもちゃんと答えた。
「はい。見えます。」
「人が私を見てくれたのはここに立つようになって初めてのこと」
やわらかな物腰と声に私は少しだけ近づく。
「あの、あなたは誰ですか・・・?」
「ああ・・・私は花守りだ」
「花守りって何ですか?どうしてこんな着物を着ているの?私が見たの初めてってなぜ?」
次々出てくる私の質問に花守りは1つずつ答えてくれた。
「この桜たち、見事であろう?何本あるのか私にもわからぬ。私はこの桜たちが毎年咲くの
を守っている。だから花守りだ」
「ずっと、前から?」
「そう、ずっとだ」
「どうして誰もあなたを見ないの?」
「さあ・・・それはわからぬ」
「ずっと昔からだから昔の服を着ているの?」
「そう、これはおそらく私が死んだ時身につけていたものであろう」
ぎょっとして花守りの顔を見る。どこから見ても普通の人間にしか見えない。
「・・・おばけなの。」
「そうかもしれぬが自分でもわからぬのだ」
私はそろりと花守りの手をちょい、とつついてみた。確かな手ごたえがある。
「おばけじゃないみたい・・・。」
「では、何であろうなあ」
花守りは遠くを見ながらぽつりと言った。
「この桜たちは私の一族であったよ。一族の誰かが亡くなると桜を1本植えるのだ。代々、
そうしてきた。ああ・・・怖がらなくても墓は別にある。大丈夫だ」
「戦がはじまったのだ・・・」
花守りはため息をついた。
「このような田舎でも武家は武家。我が国は勝利したが一族は私と姉上を残しみな桜に
なった。
by.てまり
あまりにも青くて、あまりにも美しくて、
駆け引きの無い潔さが胸を打ちます。
見せてあげたかったですね、本当に―。
2部作のお話『花守り』(桜守)ありがとうございます。
ありがとうございますm(_ _)m