今日は 前回ご紹介した絵本 がらくた学級の奇跡 の主人公トリシャのその後を描いたような内容である絵本をご紹介したいと
思います。
「ありがとうチュウ先生」 わたしが絵かきになったわけ
パトリシア・ポラッコ作 さくまゆみこ 訳
岩崎書店 2013年6月30日初版
担任のドノバン先生はパトリシアが描いたスケッチを見て「才能がある!!」と言った。
ドノバン先生の紹介で、ハイスクールの美術の先生をしている「チュウ先生」が主催している美術教室に通い始めたパトリシア、
そこでチュウ先生は「ものをよく見る事、実際の物の見方」などを指導される。
絵を描くのが好きなパトリシアは楽しく通っており、チュウ先生が出した課題にも熱心に取り組む。
ある日 担任のドノバン先生のお父さんが亡くなり、しばらく休んでいる間 代わりに来た先生は、パトリシアに
「絵を描くことよりも 勉強の方が大事なんじゃないか!!」と美術教室へ行くのを辞めるように言う。
識字障がいを抱えるパトリシアは文字が読めるようになったものの、読むのが遅く テストになると、どうしても
時間が足りなくて不合格になってしまうのだった。
美術教室に行っても、気持ちが晴れないパトリシアはとうとう泣き出してしまい、チュウ先生に事の次第を話します。
チュウ先生は パトリシアが絵を描いていく様子をよく観察していたので、「テストの問題を読むのに時間がかかって、
問題を解く時間がなくなってしまうのでは?」と当てたのだった。
パトリシアの才能を見出していたチュウ先生は「美術教室を辞めさせるなんてできない!!」と 知り合いの専門家に
つないでくれて、校長先生・代わりの先生・お母さんにも集まってもらい、話し合いの場も設定する。
それから少ししてドノバン先生が戻ってきて、代わりの先生はいなくなり、パトリシアは美術教室に続けて通うことができたのだった。
チュウ先生もパトリシアを目にかけ、ほどなくして絵具を使って絵を描き始めたパトリシアの作品を「ハイスクールの美術展」に特別
に出してくれたのだった。(パトリシアはまだハイスクールの生徒ではなかった)
その後、ハイスクールに進学したパトリシアはそこでもチュウ先生に指導してもらい、先生の尽力のおかげで美術大学にも入学できた
と語っている。
作者のパトリシアさんが出会った「ご自身の人生に大きな影響を与えた合計4人の先生」のことを描いた3冊の絵本があります。
2001年12月20日初版 2013年6月30日初版 2016年6月23日初版
ドノバン先生は今回の「ありがとうチュウ先生」に登場していて、独立して1冊の絵本に取り上げられてはいませんが、パトリシアさんに大きな
影響を与えた一人だと思われます。
この3冊はパトリシアさんの自伝的絵本とされています。
3冊通して読むことで、パトリシアさんが幼少のころからどういったことに悩み、また出会った人たちとの交流の様子、どのように成長していったか
が垣間見れます。
さて、今回のチュウ先生は、美術教師で、特別支援教育の専門家ではありません。しかし、絵の描き方から パトリシアが悩んでいる様子を想像でき
適切な対応(母親に断った上で 専門家に繋げたこと)そしてかかわる大人を集めて支援会議を設けたことで、パトリシアから得意なことを奪われる危機
を回避させました。
チュウ先生は美術を教えるという経験と技術で「パトリシアをよく見ており」そしてそれが解決の糸口となりました。
時に「経験にこだわりすぎて、本質が見えてないとなかなか解決に向かえない」「逆に、経験がなくても、もしくは違う経験の事柄を生かして
状況をしっかり見てそこから考え解決策を見出せる人」もいます。
対人援助職の方々や仕事などで指導する立場にある方々にとって必要なことは「対象の相手をよく知る」ことなのではと思います。
といっても じろじろ・・・見るということではなく、このブログは仕事に関するものなので、例えば「この人は何が得意で、どういう点でつまずきやすい
のか」とかを丁寧に把握しようとする姿勢が大事なのではないかと思うのです。
そうすることで、的外れな指導に陥ることはなくなるのではないかと思います。
そして、前回のがらくた学級の奇跡の「ピーターソン先生」もそうでしたが、チュウ先生は パトリシアの自己肯定感を育てることにも長けておられたと
思うのです。 この絵本を読んでみると それがよくわかります!!
興味を持たれた方、是非3冊通して読んでみて下さるとうれしいです。
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