最近、「スマート」という単語が、商品、特にICT関係の製品、施策に使用されています。英和辞典で調べると、単純に「賢い」と訳されますが、ICTの 世界では「コンピュータ制御により状況に応じた対応をする」というのが一番ふさわしいと解釈だと思います。そして、スマートグリッドとは、「情報通信技術 を活用することによって、電力の需要と供給を常時最適化する、次世代の電力網。水力・火力など既存の発電施設と風力・太陽光発電など新エネルギーによる分 散型電源を制御し、効率・品質・信頼性の高い電力供給システムの構築を目指す。地球温暖化対策の一つとして各国で取り組みが進められている。」と定義されています。
スマートグリッドはオバマ大統領が2009年1月20日の就任演説のなかで、グリーンニューディール政策の一つとして掲げたことでも知られています。
1990年代、インターネットが普及し始めたころ、サンフランシスコベイエリア周辺のシリコンバレーでは、NPO法人のスマートバレー公社がネットの民生利用を産学官の連携で活用を推進するために誕生しました。そのころから、スマートという単語がコンピュータ制御と結びついたものだと思います。
ス マートグリッドは、インターネットのような大きなビジネスチャンスをもたらすと指摘されています。それは各家庭にスマートメーター(通信機能付きの電力量 計)を取り付けることから始まります。そして、その通信機能が各家庭、各事業所と電量供給側とつながり、自動的に電気量を最適化します。日本は電気の供給 としては成熟しており、1年間の停電の時間は19分とアメリカの97分、イギリスの88分、フランスの51分 と比較して群を抜いています。日本の場合、夏の暑い日の午後を、最大の電気需要として電力網のインフラを整備されていますので、オーバースペックといわれ ています。それでも、事業所は、夏は日曜日を出勤日にしたり、電気料金の安い夜間電気量を使ったり、基本料金を下げるためにピークカットをするよう努力し ております。近い将来、電気自動車(EV)が飛躍的に伸びれば、電気需要が供給量を超えることは、明らかです。更に、温暖化対 策として化石燃料を使用しない、太陽光発電、風力発電を使用しなくてはなりません。電気自動車が普及すれば、いつも自動車を使うわけではありませんので、 各家庭の蓄電池として利用でき、スマートメーターの制御により、電気料金、需要を最適にコントロールし、電気料金が安いときに充電し、高いときに売電する ことも可能です。
一方、日本以外の国、特にこれから飛躍的に電気需要が伸びると予想される、中国や新興国では、温暖化対策としても、またエネルギーコスト対策としても、スマートグリッドを利用した体制の整備に取り掛かっています。