Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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薬剤によりギャンブル依存症(病的賭博)が引き起こされる?

2005年07月13日 | パーキンソン病
日本でpathological gambling(病的賭博・ギャンブル依存症)という問題が社会的な注目を浴び始めたのは,パチンコ店駐車場における乳幼児の「車中死亡事故」が契機と言われている.病的賭博は,DSM-III(1980)で初めて精神障害の中に加えられたが,高い罹病率,患者の人生と周囲の人々,社会に及ぼす深刻な影響にもかかわらず,この疾患の研究は他の精神疾患の比べ明らかに遅れているそうだ.まずICD-10によると,病的賭博は,疾患分類上,窃盗癖、放火癖、抜毛癖などとともに衝動制御の障害の中に含まれている.本障害の本質的な特徴は以下の2点である.
(a)持続的に繰り返される賭博
(b)貧困になる,家族関係が損なわれる,そして個人的生活が崩壊するなどの不利な社会結果を招くにもかかわらず,持続ししばしば増強する
罹病率についてはアメリカの報告で,生涯罹患率は1.5%(ちなみにアルコール依存症14.1%,薬物依存症7.5%)と報告されている(1999).陥りやすい対象としては若年者,マイノリティー(アフリカンアメリカン,ヒスパニック,ネイティブアメリカン),低学歴者,低所得者,失業者などが指摘されている.病因については良く分かっていない.
今回,Mayo Clinicから病的賭博を呈したパーキンソン病患者11名に関する検討が報告された.例えば過去5年間で1度しかギャンブルをしたことがない53歳女性のパーキンソン病患者が,pramipexole(ビ・シフロール®)使用後,カジノに行きたいという強い衝動に駆られ,週1回通いだしたという具合である.11名の臨床的特徴を検討してみると,まず全例でドパミンアゴニストを内服していた(このうち3名はL-DOPAによる治療を受けていなかった).さらに11名中7名では,病的賭博はドパミンアゴニストを開始,もしくは増量後3ヶ月以内に出現していた.ドパミンアゴニスト使用後,すぐには発症しなかった残りの4名でも,ドパミンアゴニストを中止したところ,病的賭博は消失した.ドパミンアゴニストの種類に関してはpramipexoleが11名中9名を占め(使用量は4.5mgが6名と最多),過去の文献を検索しても17例中10名を占めていた(計28名中19名;67.9%).
 以上の結果はドパミンアゴニストが可逆性の病的賭博の原因となる可能性を示唆する.とくにpramipexoleはD3受容体への刺激を介して病的賭博を惹起している可能性が疑われる.いずれにしても神経内科医は病的賭博という疾患が存在すること,ならびにドパミンアゴニストがその原因になりうることを認識すべきである.

Arch Neurol 62; 1-5, 2005
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