Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

Twitter @pkcdelta
https://www.facebook.com/GifuNeurology/

家族性脊髄小脳変性症14型(SCA14)の遺伝子解析

2005年05月19日 | 脊髄小脳変性症
SCA14は常染色体優性遺伝形式を示す遺伝性脊髄小脳変性症のひとつで,本邦からは北大から症例が報告されている.臨床的には,小脳失調,構音障害,眼球運動障害を主徴とするが,知能低下,てんかん,視力障害,末梢神経障害,パーキンソニズムは伴わない.生命予後は良好.特徴として発症年齢の多様性が指摘され,5~60歳に及ぶ(平均33.8歳).原因遺伝子はprotein kinase C gamma(PRKCG)遺伝子である.遺伝性脊髄小脳変性の多くはCAG リピート病であるが,本疾患はひとつの遺伝子のミスセンス変異にて生じることが判明し,小脳変性の機序の解明に有効な手がかりになるのではないかと期待されている.
 さて今回,ワシントン大やミネソタ大,北大などの多施設により,SCA14の頻度,遺伝子変異の種類,さらに表現型との関連について検討した研究が報告された.まず遺伝子解析の結果,既報と合わせ9家系8つの遺伝子変異を明らかにした.今回,新たに分かったことは,①エクソン4及び5がミスセンス変異のホットスポットであること(ただしこれ以外でも生じうる;18エクソン中5エクソンで変異が発見された),②ミスセンス変異以外にも,6塩基欠失とsplice donor siteに影響を及ぼす変異でも発症すること,③60歳になっても未発症のキャリアが存在していて,浸透率が高い疾患ではない可能性があること,である(以上を考え合わせると,遺伝子診断はなかなか容易でないことが分かる).また遺伝子変異と表現型の関係についてはQ127Rが若年発症,かつaxial myoclonusを呈する(北大),とか,F643L変異のフランスの家系がうつとミオクローヌスを呈するといったことが示され,若年発症例は錐体外路症状を呈する可能性が指摘されている.
 問題はなぜPKCgammaで小脳変性が起きるかだ.PKCgammaにはC末のキナーゼとしての活性領域と,N末の制御領域があるが,アミノ酸変異はC末に存在している.また1995年にはPKCgammaのKOマウスも報告されているが神経症状を呈していないことから,おそらくPKCgammaの変異によりtoxic gain of functionが生じたものと思われる.今後はPKCgammaによるリン酸化の標的(とくにプルキンエ細胞に存在するもの)は何か?変異によってリン酸化能が変わるのか,もしそうならリン酸化によってどのシグナル伝達経路に変化が生じるのかが検討されていくことになるのだろう.

Neurology 64; 1258-1260, 2005
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Becker型・Duchenne型筋ジス... | TOP | 遺伝性脊髄小脳変性症26型(S... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 脊髄小脳変性症