Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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進行性核上性麻痺(PSP)様の症候を呈する自己免疫性脳炎と傍腫瘍性神経症候群を見逃さないために注意すべきこと

2024年10月17日 | 自己免疫性脳炎
ご紹介する論文は当科の大学院生,山原直紀先生が初めて挑戦して英文総説です.共著者も意見をしたりチェックをしたりしましたが,ほぼ自分で書き上げて立派なものだと思いました.進行性核上性麻痺(PSP)は核上性注視麻痺,姿勢保持障害,パーキンソニズムなどを呈するタウオパチーですが,稀ながら自己免疫性や腫瘍に関連したケースでも似た症候が現れることがあります.治療可能であることから,近年,注目されています.

私たちは,自己免疫性脳炎(AE)や傍腫瘍性神経症候群(PNS)が引き起こす,いわゆる「PSP mimics」に注目し,これらの症例をいかに診断し,どのように治療すべきかを検討するためにナラティブレビューを行いました.IgLON5抗体,Ma2抗体,Ri抗体などの自己抗体が関与する症例についての詳細なレビューを行っています.いかに診断をするかが重要で,その要点は下記のTable 3にまとめられていますが,このような特徴を持つ場合にはAE/PNSの可能性を考慮する必要があります.

【PSPに類似したAE/PNSを示唆する臨床的特徴】
(1) 若年発症(40歳未満)
(2) 急性または亜急性の進行
(3) 腫瘍の合併
(4) 脳脊髄液異常(蛋白上昇,細胞増多,IgG idex↑,OCB陽性など)
(5) PSPを示唆するMRI所見がない
(6) PSPで認めない各種抗体に特徴的な症状(IgLON5抗体では睡眠障害,行動変化,呼吸不全,起立性低血圧,Ma2抗体ではナルコレプシー様症状など)
(7) PSPではあまり認めないその他の症候(顕著な体重減少,運動失調など).

オープンアクセスでフリーにDLできますので,ご一読いただければと思います.
Yamahara N, Takekoshi A, Kimura A, Shimohata T. Autoimmune Encephalitis and Paraneoplastic Neurological Syndromes with Progressive Supranuclear Palsy-like Manifestations. Brain Sci. 2024, 14(10), 1012; https://doi.org/10.3390/brainsci14101012

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