C型肝炎ウイルス(HCV)は様々な肝外症状を呈することが知られており,筋炎もそのひとつである.その発症機序として自己免疫が関与している可能性が指摘されていたが,その詳細についてはいまだ不明である.今回,本邦よりHCV陽性の筋炎患者の筋組織において,初めてHCVウイルスの存在が確認された.
対象はHCV抗体陽性・HCV-RNA陽性である4名の筋炎患者(進行性,近位筋優位の筋炎).方法は筋生検を行い,通常の筋病理検査に加え,muscle homogenateを用いたHCV-RNAに対するreal time-PCRと,HCV-RNAを検出するantisenseおよびsenseのds-cDNA probeを用いたin situ hybridization(ISH)を行った.結果として2名でmuscle homogenateにおけるHCV-RNAを検出し,さらにISHにおいて,同じ2名の患者において筋線維内のHCV-RNAを検出した.筋線維内のHCV-RNAのパターンはびまん性で,これらの筋線維は萎縮していた.いずれの患者でもHCV-RNA陽性筋線維は約5%であった.さらに筋線維周囲に浸潤するリンパ球においてもHCV-RNAが検出された.筋線維内にHCV-RNAを検出した2名の患者はステロイド(40 or 60 mg/day)に対する治療反応性が,その他の2名より良好であった.
これまでHCV関連筋炎において筋組織内におけるHCV-RNAは検出されておらず,直接のウイルス感染より自己免疫がその病態において重要だろうと推測されてきた.しかし,今回の結果はウイルスによる筋組織への直接感染が病態に重要である可能性を示唆するものである.ただし,今回のケースでも,HCV-RNAが検出された2名ではステロイド反応性が良好であったことから,自己免疫的機序が関与している可能性は十分考えられる.ただ個人的にステロイドが効きにくいHCV陽性の筋炎患者も経験している.このような場合は,偶然,HCV陽性を合併したほかの筋疾患を考えるか,もしくは重症のHCV筋炎で,HCVに対する抗ウイルス薬をトライし,その効果を判定すべきなのかもしれない.
Neurology 64; 1073-1075, 2005
対象はHCV抗体陽性・HCV-RNA陽性である4名の筋炎患者(進行性,近位筋優位の筋炎).方法は筋生検を行い,通常の筋病理検査に加え,muscle homogenateを用いたHCV-RNAに対するreal time-PCRと,HCV-RNAを検出するantisenseおよびsenseのds-cDNA probeを用いたin situ hybridization(ISH)を行った.結果として2名でmuscle homogenateにおけるHCV-RNAを検出し,さらにISHにおいて,同じ2名の患者において筋線維内のHCV-RNAを検出した.筋線維内のHCV-RNAのパターンはびまん性で,これらの筋線維は萎縮していた.いずれの患者でもHCV-RNA陽性筋線維は約5%であった.さらに筋線維周囲に浸潤するリンパ球においてもHCV-RNAが検出された.筋線維内にHCV-RNAを検出した2名の患者はステロイド(40 or 60 mg/day)に対する治療反応性が,その他の2名より良好であった.
これまでHCV関連筋炎において筋組織内におけるHCV-RNAは検出されておらず,直接のウイルス感染より自己免疫がその病態において重要だろうと推測されてきた.しかし,今回の結果はウイルスによる筋組織への直接感染が病態に重要である可能性を示唆するものである.ただし,今回のケースでも,HCV-RNAが検出された2名ではステロイド反応性が良好であったことから,自己免疫的機序が関与している可能性は十分考えられる.ただ個人的にステロイドが効きにくいHCV陽性の筋炎患者も経験している.このような場合は,偶然,HCV陽性を合併したほかの筋疾患を考えるか,もしくは重症のHCV筋炎で,HCVに対する抗ウイルス薬をトライし,その効果を判定すべきなのかもしれない.
Neurology 64; 1073-1075, 2005