クロイツフェルト・ヤコブ病は「きわめて急速に進行する認知症」と「全身の不随意運動」を主徴とする中枢神経の変性疾患である.プリオンが原因である点は狂牛病と共通する.診断は,臨床症状に加え,脳波(徐波化,periodic synchronous discharge;PSD),髄液検査(14-3-3蛋白,タウ蛋白上昇),頭部MRIを組み合わせて行なう.頭部MRIでは,拡散強調画像(DWI)やFLAIR画像にて,病初期より大脳皮質,大脳基底核や視床が高信号を呈する.
さて今回,日本から,発症2ヶ月前にたまたま撮像した頭部MRIにおいて異常所見を認め,その後CJDと診断された症例が報告された.症例は68才男性.姉が以前くも膜下出血で死亡したため,自分も心配になり,2005年10月,頭部MRI検査を受けた.DWIにて側頭葉から後頭葉にかけて高信号域を認めた.その他のシークエンスに異常はなかった.認知機能や神経所見は異常なし.11月,経過観察目的で行なったMRIで,軽度高信号域が拡大したものの,髄液タウ蛋白や14-3-3蛋白には異常を認めなかった.
2006年1月,右手の使いにくさにて発症,ついでミオクローヌスが出現した.認知機能(MMSE)も初診時の30/30から23/30に低下.発症から3週間後(2006年2月),認知症は進行し(MMSE 16/30)入院.MRI所見ではDWIでの高信号域は大脳皮質全体に認め,髄液タウ蛋白の上昇,脳波での高振幅徐波を認めた.プリオン遺伝子コドン129はMet/Metだった.発症から7週後,ADL制限が顕著となり,MMSEもスケールアウト(0/30),さらに無動無言状態となり,2007年1月に亡くなった.剖検が行われ,CJDの診断が確認された.
これまで,脳波,MRI,髄液タウ蛋白・14-3-3蛋白測定のいずれが,CJDの最も早期から異常所見を呈するか明らかではなかった.しかし本例では臨床症状が出現する前から頭部MRI(DWI)にて異常所見が認められた.以上より,頭部MRI(DWI)がCJDの早期診断に最も適した検査である,というのが論文の趣旨である.
なるほど,確かに発症前にたまたま頭部MRIを確認するという症例はきわめて稀で,貴重な症例報告である.ただ個人的にはこれとは別にとても気になることがある.次回,その点について述べたい.
Early detection of sporadic CJD by diffusion-weighted MRI before the onset of symptoms
J Neurol Neurosurg Psychiatry 2011;82:942-943
さて今回,日本から,発症2ヶ月前にたまたま撮像した頭部MRIにおいて異常所見を認め,その後CJDと診断された症例が報告された.症例は68才男性.姉が以前くも膜下出血で死亡したため,自分も心配になり,2005年10月,頭部MRI検査を受けた.DWIにて側頭葉から後頭葉にかけて高信号域を認めた.その他のシークエンスに異常はなかった.認知機能や神経所見は異常なし.11月,経過観察目的で行なったMRIで,軽度高信号域が拡大したものの,髄液タウ蛋白や14-3-3蛋白には異常を認めなかった.
2006年1月,右手の使いにくさにて発症,ついでミオクローヌスが出現した.認知機能(MMSE)も初診時の30/30から23/30に低下.発症から3週間後(2006年2月),認知症は進行し(MMSE 16/30)入院.MRI所見ではDWIでの高信号域は大脳皮質全体に認め,髄液タウ蛋白の上昇,脳波での高振幅徐波を認めた.プリオン遺伝子コドン129はMet/Metだった.発症から7週後,ADL制限が顕著となり,MMSEもスケールアウト(0/30),さらに無動無言状態となり,2007年1月に亡くなった.剖検が行われ,CJDの診断が確認された.
これまで,脳波,MRI,髄液タウ蛋白・14-3-3蛋白測定のいずれが,CJDの最も早期から異常所見を呈するか明らかではなかった.しかし本例では臨床症状が出現する前から頭部MRI(DWI)にて異常所見が認められた.以上より,頭部MRI(DWI)がCJDの早期診断に最も適した検査である,というのが論文の趣旨である.
なるほど,確かに発症前にたまたま頭部MRIを確認するという症例はきわめて稀で,貴重な症例報告である.ただ個人的にはこれとは別にとても気になることがある.次回,その点について述べたい.
Early detection of sporadic CJD by diffusion-weighted MRI before the onset of symptoms
J Neurol Neurosurg Psychiatry 2011;82:942-943