ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin-induced thrombocytopenia; HIT)は、出血に次ぐ、ヘパリンの重大な副作用のひとつである。欧米からの報告が多いが、本邦ではその認識は案外十分ではない。HITの病態としては、①(未分画、低分子分画を問わない)ヘパリン投与中に発症し、急激に血小板数が減少すること、②ヘパリン投与中止により血小板数が速やかに回復すること、③動静脈塞栓症をしばしば合併すること、が挙げられる。ハイリスク群が知られていて、重度の冠動脈硬化症の患者、糖尿病腎症、悪性腫瘍、血管合併症を認める透析患者(導入期)、手術後などが報告されている。
病型としてはtypeⅠ と typeⅡに分類される。typeⅠは、ヘパリンによる血小板に対する直接刺激により血小板数減少が引き起こされる。投与2~3日後に10~30%の血小板減少が生じる。通常、血小板数が10万以下になることは少ない。頻度は使用例の約10%、使用量依存性に発症すると言われる。一般にヘパリンを中止することなく、血小板数は自然に回復する。
一方、重篤な合併症が問題となるのはtypeⅡである。このタイプではヘパリンと血小板第4 因子(PF4)からなる複合体に対する抗体(HIT抗体)が血小板に結合し、血小板を活性化し、血小板数減少と血栓形成を引き起こす。免疫学的機序を介するため、ヘパリン使用量が少量でも発症する(ちなみにPF4は血小板活性化に伴いα穎粒から放出されるヘパリン結合蛋白で、ヘパリンと結合しその抗凝固作用を中和する)。発生頻度は0.5~5%という欧米からの報告がある。HIT抗体は、ヘパリン開始後5~14日以内に出現するが、ヘパリン投与開始後急速に発症するタイプがあることも知られている(もともとHIT抗体を持っている人と考えられている)。血小板板が2万/μL程度にまで急激に減少する。検査としては、ELISAによるHIT抗体の検出(最近はキットが売られている)や、ヘパリン惹起血小板凝集能の測定が有用である。Type Ⅱは免疫疾患なのでヘパリンの再使用は避ける。点滴のヘパロックも禁忌である。
治療としては、病態の中心となるトロンビンの産生抑制とすでに産生されたトロンビン不活性化が目標となる。つまりヘパリンの速やかな中止と、抗トロンビン剤の使用を行う。代替の抗凝固剤としては、選択的かつ直接的抗トロンビン剤であるアルガトロバンが推奨される。これはヘパリンと構造上相同性がないこと、分子量が小さいため抗原性に乏しいことが理由である。アルガトロバンはトロンビンによる血小板凝集を強力に阻害するが、血小板刺激作用はない。(ちなみにFDAが承認した抗トロンビン剤はアルガトロバン、lepirudin、bivalirudinの3種類あるがで、本邦で使用できるのはアルガトロバンのみで、現在、医師主導型の治験が開始されている)。ワーファリンや血小板の輸血はtype 2の急性期治療には原則禁忌である(むしろ増悪させる)。抗血小板剤はHIT抗体によって活性化された血小板を抑制する作用は強くないので通常使用されない。アルガトロバンは高価な薬ではあるが、これを使用するしかないのが現状である。
実際、私自身幸い経験したことはないのだが、結構、経験された方はいるのでしょうか?(欧米並みに発生しているはずという指摘もある)。ご経験のある方は書き込みなどしていただけると勉強になります。ちなみにHITについては以下のホームページにおける記載が詳しいのでご紹介したい.お勧めです.
HIT情報センター
病型としてはtypeⅠ と typeⅡに分類される。typeⅠは、ヘパリンによる血小板に対する直接刺激により血小板数減少が引き起こされる。投与2~3日後に10~30%の血小板減少が生じる。通常、血小板数が10万以下になることは少ない。頻度は使用例の約10%、使用量依存性に発症すると言われる。一般にヘパリンを中止することなく、血小板数は自然に回復する。
一方、重篤な合併症が問題となるのはtypeⅡである。このタイプではヘパリンと血小板第4 因子(PF4)からなる複合体に対する抗体(HIT抗体)が血小板に結合し、血小板を活性化し、血小板数減少と血栓形成を引き起こす。免疫学的機序を介するため、ヘパリン使用量が少量でも発症する(ちなみにPF4は血小板活性化に伴いα穎粒から放出されるヘパリン結合蛋白で、ヘパリンと結合しその抗凝固作用を中和する)。発生頻度は0.5~5%という欧米からの報告がある。HIT抗体は、ヘパリン開始後5~14日以内に出現するが、ヘパリン投与開始後急速に発症するタイプがあることも知られている(もともとHIT抗体を持っている人と考えられている)。血小板板が2万/μL程度にまで急激に減少する。検査としては、ELISAによるHIT抗体の検出(最近はキットが売られている)や、ヘパリン惹起血小板凝集能の測定が有用である。Type Ⅱは免疫疾患なのでヘパリンの再使用は避ける。点滴のヘパロックも禁忌である。
治療としては、病態の中心となるトロンビンの産生抑制とすでに産生されたトロンビン不活性化が目標となる。つまりヘパリンの速やかな中止と、抗トロンビン剤の使用を行う。代替の抗凝固剤としては、選択的かつ直接的抗トロンビン剤であるアルガトロバンが推奨される。これはヘパリンと構造上相同性がないこと、分子量が小さいため抗原性に乏しいことが理由である。アルガトロバンはトロンビンによる血小板凝集を強力に阻害するが、血小板刺激作用はない。(ちなみにFDAが承認した抗トロンビン剤はアルガトロバン、lepirudin、bivalirudinの3種類あるがで、本邦で使用できるのはアルガトロバンのみで、現在、医師主導型の治験が開始されている)。ワーファリンや血小板の輸血はtype 2の急性期治療には原則禁忌である(むしろ増悪させる)。抗血小板剤はHIT抗体によって活性化された血小板を抑制する作用は強くないので通常使用されない。アルガトロバンは高価な薬ではあるが、これを使用するしかないのが現状である。
実際、私自身幸い経験したことはないのだが、結構、経験された方はいるのでしょうか?(欧米並みに発生しているはずという指摘もある)。ご経験のある方は書き込みなどしていただけると勉強になります。ちなみにHITについては以下のホームページにおける記載が詳しいのでご紹介したい.お勧めです.
HIT情報センター
私の視力回復先進医療トレーニングの視力回復専門サイトで
こちらの記事をリンク紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。
また遊びに来させていただきます。
お時間のあるときに私のブログにも遊びに
来ていただけたらとても嬉しいです。
紹介記事は
http://sirilyokukaifuku1002.blog98.fc2.com/blog-entry-27.html
です。
これからもよろしくお願いいたします^^
以前勤めていた病院の症例で詳しい病歴を失念してしまいましたが、記憶している範囲です。
たしか高齢女性の方で超急性期脳梗塞(ワーファリンの内服暦のないchronic-Afからの塞栓)で経動脈的血栓溶解後、ヘパリンを12000単位/dayで数日間使用したところPltの減少、DIC様にD-ダイマーの上昇があり、HITを疑って即時ヘパリン中止にしました。しかし、確かそれとほぼ同時くらいに意識状態が悪くなり、頭部MRIを取ってみたところ、両側散在性にあっというぐらいの無数の新規脳梗塞が見つかった症例があります。その症例ではSRLに抗ヘパリン-PF4複合体抗体を12000円でお願いして陽性の結果でした。その後、ヘパリン中止にした1-2日後からアルガトロバンの使用を行い、データは改善したのですが意識状態の改善はなく、寝たきりとなり、最終的に半年後ぐらいと記憶していますが肺炎でなくなられました。アルガトロバンをいつまで使用するのか、ワーファリンの開始をいつぐらいからするのかで悩んだ記憶がありますが、なんといっても超急性期治療後、ADLの改善を得られて、そろそろワーファリンに切り替えようかと思っていた矢先のことでいまだに悔やまれます。
最終的によくなったという症例ではありませんので、あまりご参考にはならないかもしれません。
ところで最近は,循環器の領域でヘパリンコーティング技術が適用された抗血栓作用カテーテルがあるようです.ヘパリン中止にもかかわらずHITがなかなか治らない場合,このようなものが使用されていないか確認する必要もあるようです.
さて,やや遅くなってしまいましたが,HITについてのコメントを僭越ながらさせていただこうと思います.
自身での経験といいますと,今から考えるとI型だったのかという1例のみ(確かDVTに対してヘパリンを開始したら1週間程度で血小板が軽度減少し,しかし併用のワーファリンが至適用量となっていたためヘパリンをどちらにしても中止し,血小板は回復したという症例です:当時研修医で指導医からHITの話は少し聞かされてはいましたが,詳しくつっこまずに過ごしてしまいました.いい加減でスイマセン)ですが,神経内科領域でのHITの症例を調べましたら,大分大学から下記の報告がありました.
この報告では,心原性脳塞栓症に対しヘパリンを投与したところ血小板減少・多発性の動脈血栓症をきたし,HIT抗体陽性となり,ヘパリン中止・アルガトロバン投与にて血小板正常化・血栓消失したとのことでした.また,これまでの報告もまとめてありますが,神経内科領域でのHITはこの症例を含めて6例しかなかったそうです.この理由についての考察はありませんでしたが,透析症例に比べてヘパリンへの曝露時間/回数が少ないこと(免疫学的機序を考えるとあまり関与はないかもしれませんが),および症例(脳梗塞にヘパリン使用の)数が少ないためかと思われました.
加隈 香苗ら,神経治療23:509-514.2006
ご参考になれば幸いです.
先生の知識に比べればコメントできるほどのものを持ち合わせていないのが実情ですので,あまりコメントを投稿できないかもしれませんが,毎回楽しみにしていますのでぜひ続けていただけることを願っております.
荒井元美,武田康男,小澤鉄太郎,ほか:進行性脳梗塞の治療中に起こったヘパリン誘発性血小板減少症の1例.臨床神経 1995; 35: 667-669
父が脳梗塞で倒れて3週間。現在脳の方は安定してきているようですが、こんどは血小板の減少中で、危ない状況と認識しています。
2日前に血小板6万でヘパロック中止。昨日3万。先生からはDICを疑っていると言われました。今日2.8万。1万台になったら輸血を考えていると言われています。
昨日、HITというものを知り、DICなのかHITなのか、早く診断してもらわないといけないのでは?と素人考えをめぐらせています。
ヘパロックを中止してたことで、主治医の先生の頭にはHITもあるのでは?と勝手に思っておりますが、まだ先生からHITという言葉は聞けていないのが少し不安で。素人の私が先生にどう言っていいか悩んでいる状況です。
HIT抗体の検査はどういう伝え方・経路で主治医の先生にお願いしたら良いでしょうか?
今さっき先生に思い切って聞いて来ました。
「血小板が下がり始めたときから両方見てきましたが、下がり方、紫斑などの症状、薬の効き方からHITではなくDICと判断しました」と言う感じの回答を頂けて、少し安心しました。
今の先生を信頼して治療してもらうことにしました。思ったことは遠慮せず聞いて。
背中を押していただいて本当に感謝です。