一般にてんかん発作は,病歴と身体所見だけで患者の85%が診断できるとも言われるが,実際には難しいものである.例えばてんかんと鑑別が必要な疾患として,急性症候性けいれん,失神発作(血管迷走神経性失神),偽性てんかん発作(心因性非てんかん発作,ヒステリー性てんかん発作とも呼ばれる;女性,幼児期性的虐待,性的不適応や鬱・不安症状などが素因となる),片頭痛,一過性脳虚血発作,不随意運動,チック,夜驚症などが挙げられるが, video-EEG(ビデオ・脳波同時モニタリング)がない施設だと自信を持って診断を下すことは難しいのではないか.
その際,てんかんと他の疾患の鑑別に血清プロラクチン測定が有用だと報告されている.例えば,日本神経学会・てんかん治療ガイドラインのなかにも「偽性てんかん発作などとの鑑別のためプロラクチン定量を診断に要することもある」との記載があるが,ほんの1行のみの記載でよく分からない.調べてみるとてんかん発作後の血清プロラクチン上昇は1978年にはすでに知られており,最近の考え方では,下垂体からのプロラクチン分泌を,抑制因子(おそらくドパミン)により調節している視床下部を,さらに調節している内側側頭葉がてんかんによる影響を受け,結果としててんかん発作後に血清プロラクチン値が上昇するらしい.ただ個人的には測定したことがないし,どう用いるべきかも知らなかった.最新号のNeurologyにこの血清プロラクチン測定のてんかんの診断における意義のreviewが掲載されている(AANの小委員会からのsystematic review).
方法としては,過去の文献のreviewで396論文の中からcontrol studyをしている41編の論文を取り上げ,meta-analysisを行っている.ほとんどの論文は通常の値より2倍以上の上昇を有意な変化としている.結論として,血清プロラクチン測定はてんかん発作と偽性てんかん発作の鑑別に有効で,そのsensitivityはegneralized tonic-clonic seizure(GTC)との間で60.0%,complex-partial seizure (CP)で46.1%(specificityは両者とも96%).simple partial seizureと偽性てんかん発作との鑑別には有用でない.Tilt-test後に失神を来たした症例における検討では血清プロラクチンは上昇していた.
最終的な提言としては以下の通り.
1.発作のあと,10~20分後に正確に測定した血清プロラクチンは,GTCおよびCPと偽性てんかん発作との鑑別に有用(Level B).
2.血清プロラクチンの基礎値は発作後6時間以上経過した血清プロラクチン値で代用できる(Level B).
3.血清プロラクチンは失神とてんかん発作との鑑別には有用でない(Level B).
4.血清プロラクチンの重積発作や新生児てんかんにおける意義は不明(Level U).
どなたか血清プロラクチンをてんかんの補助診断に使ったことがある人がいたら,実際にはどんなものか教えていただけると嬉しいです.
Neurology 65; 668-675, 2005
追伸;1週間程度,更新をお休みしす.
その際,てんかんと他の疾患の鑑別に血清プロラクチン測定が有用だと報告されている.例えば,日本神経学会・てんかん治療ガイドラインのなかにも「偽性てんかん発作などとの鑑別のためプロラクチン定量を診断に要することもある」との記載があるが,ほんの1行のみの記載でよく分からない.調べてみるとてんかん発作後の血清プロラクチン上昇は1978年にはすでに知られており,最近の考え方では,下垂体からのプロラクチン分泌を,抑制因子(おそらくドパミン)により調節している視床下部を,さらに調節している内側側頭葉がてんかんによる影響を受け,結果としててんかん発作後に血清プロラクチン値が上昇するらしい.ただ個人的には測定したことがないし,どう用いるべきかも知らなかった.最新号のNeurologyにこの血清プロラクチン測定のてんかんの診断における意義のreviewが掲載されている(AANの小委員会からのsystematic review).
方法としては,過去の文献のreviewで396論文の中からcontrol studyをしている41編の論文を取り上げ,meta-analysisを行っている.ほとんどの論文は通常の値より2倍以上の上昇を有意な変化としている.結論として,血清プロラクチン測定はてんかん発作と偽性てんかん発作の鑑別に有効で,そのsensitivityはegneralized tonic-clonic seizure(GTC)との間で60.0%,complex-partial seizure (CP)で46.1%(specificityは両者とも96%).simple partial seizureと偽性てんかん発作との鑑別には有用でない.Tilt-test後に失神を来たした症例における検討では血清プロラクチンは上昇していた.
最終的な提言としては以下の通り.
1.発作のあと,10~20分後に正確に測定した血清プロラクチンは,GTCおよびCPと偽性てんかん発作との鑑別に有用(Level B).
2.血清プロラクチンの基礎値は発作後6時間以上経過した血清プロラクチン値で代用できる(Level B).
3.血清プロラクチンは失神とてんかん発作との鑑別には有用でない(Level B).
4.血清プロラクチンの重積発作や新生児てんかんにおける意義は不明(Level U).
どなたか血清プロラクチンをてんかんの補助診断に使ったことがある人がいたら,実際にはどんなものか教えていただけると嬉しいです.
Neurology 65; 668-675, 2005
追伸;1週間程度,更新をお休みしす.
しかし、丁寧にお返事いただいて大変有難うございます。
PRLが偶々、216出るのは何が考えられるでしょうか?
質問場所が違っていれば申し訳ありません。
普段は 正常値です。10以下です。9とか6とかのようです。
因みに、採血時は、生理直前で、久々に嘔吐・過換気などありました。
pseudoとの鑑別には・・・最終的にはどちらとも
判断できなかった事の方が多かったような・・・。