絵じゃないかおじさん

言いたい放題、自由きまま、気楽など・・・
ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

あ@仮想はてな物語 (逸話) 花の吉野山 (1/3)

2019-02-04 12:50:46 | 仮想はてな物語 


copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
            



 * 花の吉野山(032)


 花冷えのする日であった。
 曇っていて今にも雨が降り落ちて来そうだった。


 そうだ。
 こういう日に吉野山へ行けば、
 人出は少ないに違いないと思った。
 私は、短い脚を振り上げて、Sサヤカに跨がる。
 吉野へゆくには、石舞台から抜ける山路の方が、
 自然に親しめて楽しい。


 芋峠越えの路である。
 10km余り、約30分の山路は、
 相変わらずくねっている。
 途中数台の車とすれ違う。


 冬のこの路では、車に会うことは皆無だ。
 山のなかの自然にふれるとホッとする。
 また、この路は曲がりくねっているので、
 何度通っても気が抜けない。
 わずか数10分の緊張と弛緩。
 これがたまらない。

つづく


あ@仮想はてな物語  花の吉野山 (2/3)



copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
            


 狭い路を抜け169号に出て、
 その国道をを少しだけ走り、
 右に折れて下千本を目指す。


 行く場所は決めてある。
 蔵王堂の横を過ぎ、土産物・旅館の立ち並ぶ、
 石畳風ののきつい坂を上る。
 バイクで初めて来た時には、
 何度も転倒寸前の浮目に遭った急な坂道だ。


 こんな天気の日でも、
 桜のシーズン中は人出が多い。
 急坂と人波の間を縫って、
 走り上がって行くのだから、
 かなりの技術がいる。


 中千本上千本へとまっしぐら。
 くねくね道を花矢倉へと向かう。
 小雨が降り始めた。
 雨の降り始めはほとんどが遠慮がちだ。
 斥候を送って地上の様子を見ているようだ。
 私は、サヤカを止め青色のレインウェアを着込む。


 雨には何度もひどい目に遭わされ、
 風邪をひかされているので、
 最近では、ちょっとの雨でもすぐに着る。


 そのまま上へ上へと上がってゆく。
 人がだんだんと少なくなる。
 展望台の下でサヤカを再び止め降りる。
 全山桜の花が様々な咲き方をしている。
 しかし、全体的にはもう一歩という開き方である。

つづく


あ@仮想はてな物語  花の吉野山 (3/3)


copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
            


 膚寒い。
 風が強くなってくる。
 ふと気づくと雨が霙に変わり雪になってきた。
 四月初めの雪は珍しいぼたん雪のようだ。


 風に煽られて、
 ぼたん雪と桜の花びらが宙を舞っている。
 白い雪と薄ピンクの花びら。
 絶妙の取り合せだ。
 よく見ないと区別がつきにくい。


 じっとその様子に見入る。


 何と!! これは明らかに戦争だ!


 ぼたん雪と桜の花びらが、
 接近戦でくんずほぐれつの戦いを繰り拡げているのだ。
 天は絶え間なく戦闘員を送り込んでくる。
 それに対して桜は木についている花びらのみが手駒である。
 風が強く吹くたび桜戦闘員は飛び上がってゆく。
 ぼたん雪の方が圧倒的に優勢である。


 交じり合い舞いながらの優雅な戦闘だ。
 いつまでも続いていた。



 舞いの渦 春爛漫の 吉野山
  全山覆う 雪花戦争 
                  ち ふ


                   
 この項おわり



コメントを投稿