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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* 汐吹岩(033)
汐吹岩は、日ノ岬の少し手前にある。
奈良県S市にある自宅からは、
24号を通って和歌山から阪和自動車道に入り、
海南で降り42号を白浜の方に向かって走る。
御坊市で右に折れ煙樹ケ浜を抜けると左前方に見え始めてくる。
海岸から少し離れたところに岩山がぽっとりと浮かんでいる。
その日、太平洋の波は荒かった。
そういう日でないと鯨の汐吹き現象は見られないのである。
荒い波が岩にぶつかり、その力で岩場の隙間から潮が、
あたかも鯨が汐吹くように、豪快に天に吹き上がるのだ。
私は一度その様子を見たかった。
それにもう一つ目的があった。
その汐が吹きあがった瞬間、ある呪文を唱えると、
ありがたい塩が貰えるという。
不可思議な能力を持つわが愛バイク・Sサヤカが、
こっそり教えてくれたのだ。
吹き上げの高さ3m以上で、
その最高の高さになった瞬間、一秒以内に呪文を
唱えなければならない。
呪文は、何と[ソルト・トルゾ]
何か下手なダジャレみたいだが、
サヤカの言うことだから間違いないのだろう。
それがまた、小憎ったらしいことに3回失敗すると、
その日はもう通用しないという。
こんな所にまでキャッシュ・ディスペンサー並みのチェックが、
押し寄せてきているのだ。
2回も失敗してしまった。
150km近く走ってきて、次に来られるのはいつになるのか
検討もつかない。
だんだんと顔が引きつってくる。
今度こそはと思うのだが、
吹き上げの高さが足りなかったり、
呪文を度忘れしたりで、
なかなか思うようにはいかない。
ドバババーン。
それ!
つづく
あ@仮想はてな物語 汐吹岩 (2/3)
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[ソルト・トルゾ!]
おお、旨くいった。
吹き上げた汐の先から何かが、こちらに向かって飛んでくる。
あれをうまく取らなければ、とそちらにばかり
気を取られていた為、受け取った途端岩場に転んでしまった。
左手から転んだ。
手の平からサッと鮮血が吹いた。
しかし、右手にはしっかりと贈り物を掴んでいた。
幸い革ジャン・革ズボン・ロングブーツに身を固めていたので、
被害は左手のみ。
だが、かなり深く切ってしまった。
消毒薬・傷薬・包帯・絆創膏は常備しているので、
サヤカの荷台に積んである、
バッグから取出して手当てする。
手当てが終わって、授かり物をじっくりと見入った。
塩がビニールパックされていたのだ。
ホントかいな?
つづく
あ@仮想はてな物語 汐吹岩 (3/3)
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しかし、これは間違いなく、私が直接受けとめた物だから、
現実の出来事だ。
この塩は痩せる特効薬であるという。
わが妻Oさんの為に貰いに来たと言っても過言ではないだろう。
結婚する前は50kg足らずでほっそりしていたのが、
今では60kgを超す中年オバはん。
食べる物は、人一倍食べて痩せたいとのたまっている。
しかしながらそれも一利ある。
なんかいい方法ないかいなとサヤカに聞くと、
この汐吹岩の話を教えてくれたのだ。
この塩で三段腹を数日続けて揉むと、てきめんに痩せるという。
折角、ここまで来たのだからと、
その痩せ塩を抱えて日の岬を見学して、
一路帰路についた。
あのほっそりとした昔のOさんが見られるぞ、
頭の中は、そんなことを考えていた。
厚雲に のしかかられて 煙る海
太平洋は ちっちゃく縮む
ち ふ
この項おわり
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