絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 汐吹岩 (1/3)

2019-02-04 12:52:31 | 仮想はてな物語 


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 * 汐吹岩(033)


 汐吹岩は、日ノ岬の少し手前にある。
 奈良県S市にある自宅からは、
 24号を通って和歌山から阪和自動車道に入り、
 海南で降り42号を白浜の方に向かって走る。
 御坊市で右に折れ煙樹ケ浜を抜けると左前方に見え始めてくる。
 海岸から少し離れたところに岩山がぽっとりと浮かんでいる。

 その日、太平洋の波は荒かった。
 そういう日でないと鯨の汐吹き現象は見られないのである。

 荒い波が岩にぶつかり、その力で岩場の隙間から潮が、
 あたかも鯨が汐吹くように、豪快に天に吹き上がるのだ。
 私は一度その様子を見たかった。


 それにもう一つ目的があった。
 その汐が吹きあがった瞬間、ある呪文を唱えると、
 ありがたい塩が貰えるという。
 不可思議な能力を持つわが愛バイク・Sサヤカが、
 こっそり教えてくれたのだ。

 吹き上げの高さ3m以上で、
 その最高の高さになった瞬間、一秒以内に呪文を
 唱えなければならない。

 呪文は、何と[ソルト・トルゾ]

 何か下手なダジャレみたいだが、
 サヤカの言うことだから間違いないのだろう。
 それがまた、小憎ったらしいことに3回失敗すると、
 その日はもう通用しないという。
 こんな所にまでキャッシュ・ディスペンサー並みのチェックが、
 押し寄せてきているのだ。


 2回も失敗してしまった。
 150km近く走ってきて、次に来られるのはいつになるのか
 検討もつかない。
 だんだんと顔が引きつってくる。

 今度こそはと思うのだが、
 吹き上げの高さが足りなかったり、
 呪文を度忘れしたりで、
 なかなか思うようにはいかない。

 ドバババーン。

 それ!



つづく


あ@仮想はてな物語  汐吹岩 (2/3)



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 [ソルト・トルゾ!]

 おお、旨くいった。
 吹き上げた汐の先から何かが、こちらに向かって飛んでくる。
 あれをうまく取らなければ、とそちらにばかり
気を取られていた為、受け取った途端岩場に転んでしまった。
 左手から転んだ。

 手の平からサッと鮮血が吹いた。
 しかし、右手にはしっかりと贈り物を掴んでいた。
 幸い革ジャン・革ズボン・ロングブーツに身を固めていたので、
 被害は左手のみ。
 だが、かなり深く切ってしまった。
 消毒薬・傷薬・包帯・絆創膏は常備しているので、
 サヤカの荷台に積んである、
 バッグから取出して手当てする。
 手当てが終わって、授かり物をじっくりと見入った。
 塩がビニールパックされていたのだ。

 ホントかいな?



つづく



あ@仮想はてな物語  汐吹岩 (3/3)



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 しかし、これは間違いなく、私が直接受けとめた物だから、
 現実の出来事だ。
 この塩は痩せる特効薬であるという。
 わが妻Oさんの為に貰いに来たと言っても過言ではないだろう。
 結婚する前は50kg足らずでほっそりしていたのが、
 今では60kgを超す中年オバはん。


 食べる物は、人一倍食べて痩せたいとのたまっている。
 しかしながらそれも一利ある。
 なんかいい方法ないかいなとサヤカに聞くと、
 この汐吹岩の話を教えてくれたのだ。
 この塩で三段腹を数日続けて揉むと、てきめんに痩せるという。
 折角、ここまで来たのだからと、
 その痩せ塩を抱えて日の岬を見学して、
 一路帰路についた。

 あのほっそりとした昔のOさんが見られるぞ、
 頭の中は、そんなことを考えていた。


 厚雲に のしかかられて 煙る海 
  太平洋は ちっちゃく縮む 
                       
                   ち ふ


                   
  この項おわり



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