plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

ドラマーにとってのエコロジー

2007年02月12日 | 音楽
ある日友達から、「ドラマーって木製スティックやプラスティック製の張り皮を消費するから、環境保護団体から非難されたりしない?」と尋ねられた。今のところそんな話は聞いたことが無い。でも考える価値はあるだろう。上の画像にあるのは、ドラムの張り皮=ドラムヘッド。見た目と音色は1940年代までは主流だった動物の皮製ドラムヘッドにそっくりだけど、これは合成繊維製。動物の皮を使うよりはマシだと思う。

画像にあるタイプ、音量はプラスティックほど出ないが、繊細な反応と暖かみのある音色が出るため、オーケストラの打楽器やジャズドラムによく使われる。また素手で叩くコンガやジャンベなどのハンドパーカッションの皮にも合成樹脂製が出回ってきているが、スティックで叩くドラム用に比べると、まだ動物の皮製が多い。



金属でできたシンバルやらピンと張ったドラムの皮を叩くわけだから、スティックはいずれボコボコになる。特に先端の丸い部分=チップが欠けたら、音色と叩いた後の跳ね返り具合が変わる。たとえチップが長持ちしても、何十回も使っているうちに木が汗を吸い、重さのバランスが崩れ、振り心地が変わるから使いづらくなる。とはいえ、一人で練習するのには使えたりするので、そう簡単には捨てられない。



また大抵のスティックには滑り止めのラッカーが塗ってあり、それを落とすのには結構な手間がかかりそうな気がする。こういう木の切れ端を再利用するのがどれだけ有効なのか、正直よく分からない。

1980年代後半から90年代にかけて、アルミなどの軽金属の筒状の芯に合成樹脂を巻いたスティックが出回っている。僕もこれを1ペア買って使ったことがある。微妙な音のニュアンスよりも、とにかく爆音で長時間ブッ叩けるだけのタフなスティックが必要なら、これは結構いけると思う。中にはスティックの真ん中が関節のようになっていて、衝撃を和らげる造りにして売り出しているのもある。普段そこまで肉体的に激しい演奏をしない身としては、そうまでして激しく叩くのか?・・・と思うけれど。

これは自戒の念を込めて書くけれど、最も豊かな音色が出るようにチューニングしたドラムを、無理な力を抜いた叩き方で叩けば、それほどスティックやドラムヘッドを消耗することは無い。原始の頃から人間が、遠くに意思を込めた音が届くようにと作ったのがドラムなのだから。