植物のふしぎ

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パフィオペディラム属の花

2025年02月26日 | 園芸

今回は洋ランの中でも特に風変わりな花をもつパフィオペディラム属の話題。

パフィオペディラムの基本構造を下の写真で説明します・・

 

花の中で一番目につくのは、手前に突き出している唇弁です。唇状のためリップ、または袋状のためポーチと呼ばれることもあります。これは食虫植物と似た構造をしていますが、虫を消化吸収するわけではなく虫を捕らえてポリネーターとして受粉に関わらせるという重大な役割を負っています。ポーチの内側には細かい毛が生えていたり、縁に「返し」がついていたりとポリネーターの動きをコントロールする工夫がいくつもあります。

次に他の花被片の特徴について。他のラン科の花では3枚あるはずの外花被片が2枚しか見あたりません。これは、左右の側萼片が合着して1枚の下萼片ベントラルセパル or シンセパル)になっているからです。下萼片は幅広くなっており、前方のリップを目立たせる役割があると考えられます。

そして、一番注目すべき点は、ラン科に典型的なずい柱(コラム)が見られず、仮雄ずい(Staminodeスタミノード)が発達していることです。スタミノードは品種によって独特の色や形をしており、品種同定にも役立っています。その役割は、多くの場合ポリネーターをおびき寄せることのようです。”雄しべ”に相当するのは、ずい柱の基部近くで左右二つに枝分かれしてその先端に葯室が付いている所です。また、写真には写っていませんが、(花柱)と示した棒の下面に柱頭が付いています。


以下に2025年2月に長野市芸術館で開催された第51回洋ラン展で展示されていたパフィオの品種を紹介します。品種名は展示ラベルを書き写しましたが不正確かも。あしからず。

Kimuras Present Papa Aloha

あごがしゃくれて笑っている顔にも見えます。鼻に当たる部分がスタミノード、目に当たる部分が褐色で丸い二つの葯室です。

スタミノードにあるオレンジ色の小さな「こぶ」に注目・・原種ではないのでこの品種で実際どうなのかは断言できませんが・・どうやら、ポリネーター(ハナアブの仲間?)にとって このコブが魅力的に見えるらしく引き寄せられるらしいです。蜜かなにかと間違えるのかも。スタミノードは滑りやすいのでポーチに転落して受粉のお手伝いするはめに。一生懸命脱出しようともがきますがポーチ内部には毛が生えていたり、縁に「返し」がついていたりで葯室(写真では目に見える)近くの穴からしか脱出できない仕組みになっています。その時に花粉塊を持たされるんですね。また、尿臭を放ち遠くの虫まで呼び集める可能性もあるそうです。

 Doya Green Prince X Alma Gevaert

 Golden Autumn

  Center Court

  Magical Gate

  Premium Magic

スタミノードのこぶは緑っぽい色です。また、花被片にはドット模様がたくさん

Greenvale X venustum

venustum(鉢に刺してあったラベルには venustum fma. album Maybrook X selfと書いてありました)

うひひひ・・と笑っているよう。スタミノードの様子が上記のものと違っているのでポリネーターに対してのアピール方法も違うのでしょう。

 spicerianum (原種)

こちらのスタミノードは虫みたいな模様が浮かび上がっています。

wardii(原種)

側花弁(ペタル)はドット柄で毛も生えているし、ポーチの柄もブツブツで気持ち悪いっすね。原種は交配種に比べて見栄えしない。

fairrieanum (原種)

こちらのスタミノードも特徴的な形と色をしています。原種なので実際にポリネーターに対してなんらかの魅力を発信していると思われますが何なのかはさっぱりわかりません。

malipoense (原種)

ポーチの深い「返し」がぐるり一周して立体的な袋状になっています。ポリネーターに対して「花粉を持たずには脱出させないぞ」という意気込みが感じられます。この品種のスタミノードは、白地で先が艶のある紫が勝った褐色をしていて独特です。いったい何に擬態?しているのか興味深いです。

 Great Pacific X ? (記録漏れで交配相手はわかりません)

でかい鼻のおじさんが「おーい」と言っているよう。

 venustum(原種)

ポーチの外側にある筋が血管のようで気持ち悪い。葉っぱの斑は魅力的。

Spotted Delight X Kindachiworld

ペタルやポーチが光輝いています。やはり交配種は人間好みの外観になりますね。


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