5月19日(木)アレクサンドル・ヴェデルニコフ指揮 NHK交響楽団
《2011年5月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
2. チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
【アンコール】
プロコフィエフ/束の間の幻想~第10曲
Pf:アレクサンドル・メルニコフ
3.ラフマニノフ/交響的舞曲Op.45
5月のN響定期でBプロだけ受け持った指揮者ヴェデルニコフは、以前代役でN響を振ったことがあるそうだが、聴くのはこれが初めて。「ルスランとリュドミラ」序曲は、颯爽とキビキビとしかやりようがない曲だが、ヴェデルニコフ/N響はこれをものの見事にやってのけた。ケバケバしいほどに音が立ち、色彩感鮮やかな派手な演奏で、オープニングを飾った。
お次のチャイコン、当初はトルプチェスキのソロで2番のコンチェルトが予定されていたが、ソリストがメルニコフに交代して曲も1番に変更になった。メルニコフは代役といっても世界で活躍する中堅。聴くのは初めてだが、ロシア人同士のコンビによるチャイコンは、重厚でアグレッシブな演奏になるかな?という多少の先入観が入る。
しかし実際に鳴り響いた冒頭部分はとても柔軟でロマンチック。ピアノは強音でガンガン弾きまくるのではなく、優美な趣きを湛えている。しかし、ここぞという時のパワーも圧倒的で、強烈な一撃もこのピアニストの持ち味。メルニコフは、ハーフタッチのように聴こえる柔らかな微弱音から、強靭なフォルティッシッシモまで実に広いダイナミックレンジを持ち、全体をドラマチックに表現するだけでなく、刹那的な瞬間の美をピュアに聴かせる術も持ち合わせていると感じた。最初に聴かせた優美で薫り高い音楽性も発揮しつつ、この曲の持ち味を十二分に引き出した。
片やヴェデルニコフ/N響も輝きと艶のあるサウンドでしなやかに音楽を運んでいった。ピアノとオケが、華々しくゴージャスに競演するという、この曲の魅力がいかんなくなく発揮された秀演だった。
でも… 感動度で言えば上の下(じょうのげ)の辺りだろうか。僕はこの曲からはどんな演奏でもこれ以上の感動は得られない気がする。それは、このチャイコンは名曲であることには疑いなく、魅力的な聴かせどころが随所に散りばめられてはいるのだが、その聴かせどころと聴かせどころの間の「繋ぎ」になる部分が、なぜこういうパッセージがここに来なければいけないのか、ワカラナイことが多く、それが聴いていて最高度の感動へ至るのを阻んでしまうせい。
後半の、ラフマニノフにとって最後の作品は、馴染みは薄かったが、聴いたことのあるメロディがたくさん出てきて、変化にも富んでいて、それなりに楽しめた。それはやっぱり演奏に因るところが大きい。ヴェデルニコフ/N響は、前のチャイコフスキーで聴かせた冴え、輝き、優美な感性をここでも発揮し、更に活き活きと、熱く音楽を奏でた。打てば響くとはこのこと、と言いたくなる抜群の感度を持ち、抜けるような鮮やかな響きも聴かせれば、濃厚で情感たっぷりの歌も聴かせる。そこに、マロさんの匂やかなヴァイオリンソロをはじめ、青山さんのオーボエ、池田さんのコールアングレ、神田さんのフルート、それにホルンやサックスなどなどの巧い!ソロが花を沿えた。最後のオケの明るくよく鳴るサウンドもN響ならではの快演。
《2011年5月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1. グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
2. チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
【アンコール】
プロコフィエフ/束の間の幻想~第10曲
Pf:アレクサンドル・メルニコフ
3.ラフマニノフ/交響的舞曲Op.45
5月のN響定期でBプロだけ受け持った指揮者ヴェデルニコフは、以前代役でN響を振ったことがあるそうだが、聴くのはこれが初めて。「ルスランとリュドミラ」序曲は、颯爽とキビキビとしかやりようがない曲だが、ヴェデルニコフ/N響はこれをものの見事にやってのけた。ケバケバしいほどに音が立ち、色彩感鮮やかな派手な演奏で、オープニングを飾った。
お次のチャイコン、当初はトルプチェスキのソロで2番のコンチェルトが予定されていたが、ソリストがメルニコフに交代して曲も1番に変更になった。メルニコフは代役といっても世界で活躍する中堅。聴くのは初めてだが、ロシア人同士のコンビによるチャイコンは、重厚でアグレッシブな演奏になるかな?という多少の先入観が入る。
しかし実際に鳴り響いた冒頭部分はとても柔軟でロマンチック。ピアノは強音でガンガン弾きまくるのではなく、優美な趣きを湛えている。しかし、ここぞという時のパワーも圧倒的で、強烈な一撃もこのピアニストの持ち味。メルニコフは、ハーフタッチのように聴こえる柔らかな微弱音から、強靭なフォルティッシッシモまで実に広いダイナミックレンジを持ち、全体をドラマチックに表現するだけでなく、刹那的な瞬間の美をピュアに聴かせる術も持ち合わせていると感じた。最初に聴かせた優美で薫り高い音楽性も発揮しつつ、この曲の持ち味を十二分に引き出した。
片やヴェデルニコフ/N響も輝きと艶のあるサウンドでしなやかに音楽を運んでいった。ピアノとオケが、華々しくゴージャスに競演するという、この曲の魅力がいかんなくなく発揮された秀演だった。
でも… 感動度で言えば上の下(じょうのげ)の辺りだろうか。僕はこの曲からはどんな演奏でもこれ以上の感動は得られない気がする。それは、このチャイコンは名曲であることには疑いなく、魅力的な聴かせどころが随所に散りばめられてはいるのだが、その聴かせどころと聴かせどころの間の「繋ぎ」になる部分が、なぜこういうパッセージがここに来なければいけないのか、ワカラナイことが多く、それが聴いていて最高度の感動へ至るのを阻んでしまうせい。
後半の、ラフマニノフにとって最後の作品は、馴染みは薄かったが、聴いたことのあるメロディがたくさん出てきて、変化にも富んでいて、それなりに楽しめた。それはやっぱり演奏に因るところが大きい。ヴェデルニコフ/N響は、前のチャイコフスキーで聴かせた冴え、輝き、優美な感性をここでも発揮し、更に活き活きと、熱く音楽を奏でた。打てば響くとはこのこと、と言いたくなる抜群の感度を持ち、抜けるような鮮やかな響きも聴かせれば、濃厚で情感たっぷりの歌も聴かせる。そこに、マロさんの匂やかなヴァイオリンソロをはじめ、青山さんのオーボエ、池田さんのコールアングレ、神田さんのフルート、それにホルンやサックスなどなどの巧い!ソロが花を沿えた。最後のオケの明るくよく鳴るサウンドもN響ならではの快演。