6月12日(日)蓮の会 小劇場シリーズ "日本のうた" "日本のオペラ"
~"蓮の会ホールオペラ"の誇る歌い手陣による~
柏屋楽器 蕨ミュージックセンター
~日本のうた~
S:小池麻紀
♪高島豊/山ざくら
♪山田耕筰/唄
♪武満徹/小さな空
♪小林秀雄/すてきな春に
MS:横関文子
♪岡野貞一/朧月夜
♪別宮貞雄/さくら横ちょう
♪平井康三郎/うぬぼれ鏡
T:小林浩
♪越谷達之助/初恋
♪服部良一/蘇州夜曲
♪中山晋平/ゴンドラの唄
♪古関裕而/熊祭の夜
Bar:旭潔
♪滝廉太郎/花
♪滝廉太郎/荒磯
♪高島豊/積もった雪
♪高島豊/花屋の爺さん
♪高島豊/大漁
以上Pf:大賀美子
~日本のオペラ~
♪石桁真礼生/オペレッタ「河童譚」~民謡による四重唱曲~
【配役】
河童河太郎:旭潔/お花:小池麻紀/おっ母さん:横関文子/与作:小林浩
Pf:大賀美子、鶴原裕子
バリトンのオペラ歌手、旭潔さんが主宰するホールオペラ「蓮の会」の公演を聴いた。前半の日本歌曲のステージで、嬉しいことにお二人の歌手が、みすゞの拙作を全部で4曲演奏してくださった。
1曲目ではソプラノの小池さんが、「山ざくら」で演奏会のオープニングを飾った。澄んだ美しい声が高音まで滑らかに伸びて行き、桜の精に促され、少女が桜の精(山ひめさま)に手を取られて優美に舞っている姿が目に浮かぶようだった。大賀さんのピアノがまた繊細で素晴らしく、山ひめさまがまとうヴェールの衣が風になびき、ハラハラと舞い散る桜の花びらの微かな薫りが届いてくるようだった。
小池さんの歌った後の3曲も大変完成度が高く、端正な美しさが心に染みた。「すてきな春に」でのドラマチックな表現も、表情過多になることなく、くっきりと深くドラマが胸に刻まれるところに「本物の表現力」を感じた。無駄を削いで明確な筆致で歌を盛り立てた大賀さんのピアノも素晴らしい。
続くメゾの横関さんは、メゾらしいふくよかで温かな声でたっぷりとした叙情を聴かせた。淀みのない音の運びが、曲の持ち味をそのまま伝えていた。「うぬぼれ鏡」で入れた演技が演奏により親近感を加えた。
テノールの小林さんは、昔から親しまれているいわゆる通俗歌曲を、情感たっぷりにドラマチックに歌い上げた。小林さんは、フレーズの端々に匂やかなニュアンスを添え、聴く者の心をくすぐり、それぞれの歌を、それにふさわしい色に染めていった。
前半の取りは旭さんのバリトン。相変わらずのステージ上でのお茶目な仕草とトークで満員の会場の雰囲気をなごませるが、それとは対照的な圧倒的な歌を聴かせた。5曲のうち3曲も拙作のみすゞの歌を演奏してくださったが、旭さんの歌はいつもながら、圧倒的にドラマチックでありながら、深い情感も湛え、熱く歌いあげる。
旭さんをイメージして作曲させて頂いた「花屋の爺さん」の演奏を聴くのは3度目になるが、「爺さん」の孤独と花への哀惜の思いの表現が益々板についてきた。「積もった雪」から伝わる押しつぶされるほどの孤独感、「大漁」でのイワシの大漁に活気づく港の場面から、既に聞こえる「イワシ」を視点にした悲痛な叫び。そして、こうしたドラマチックな表現を、大賀さんのピアノがとことん突き詰めて、色彩を強調したタッチで見事に描いた。
公演の後半は出演者総動員で、前衛風の作品も多い石桁真礼生作曲の、これは親しみ易いオペレッタ「河童譚」の舞台上演。前半ではドレスアップしていた歌い手達が、今度は田舎風の衣装とコミカルなメークで登場。この姿だけで笑えるが、前半とのギャップの大きさに、客席は大いに盛り上がる。 とりわけ旭さんの河童は、コスチュームといいメークといい、河童になりきっていて大ウケ。そんな4人の歌手と、ピットのビアニストによるオペレッタは、見た目に負けず劣らず音楽的にも観客を大いに惹き付けた。
音楽は軽快にテンポよく進み、アンサンブル主体の歌はたいへん活き活きしていて、振り付けや演技も決まっている。それぞれのキャラクターや声質、容姿までもが役にぴったりで、小気味よいテンポで進むオペラの展開に、観客はどんどん引き込まれていった。大賀さんと鶴原さんの軽快でウィットに富んだピアノが、歌手達の気持ちをうまく乗せ、歌い手達は伸び伸び生き生きと歌い、かつアンサンブルオペラとしてまとまっていた。
ストーリーは実に単純で、あっけないほどあっという間に幕となってしまった。もう少し一人一人のアリアが入ってもらいたいし、更なる楽しいストーリー展開で楽しませてもらいたい気もしたが、このテンポの良さ、短さが、このオペレッタの真骨頂と言えるのかも知れない。この公演は、キャストを変えて来年2月の再演が決まっている。また楽しみだ。
~"蓮の会ホールオペラ"の誇る歌い手陣による~
柏屋楽器 蕨ミュージックセンター
~日本のうた~
S:小池麻紀
♪高島豊/山ざくら
♪山田耕筰/唄
♪武満徹/小さな空
♪小林秀雄/すてきな春に
MS:横関文子
♪岡野貞一/朧月夜
♪別宮貞雄/さくら横ちょう
♪平井康三郎/うぬぼれ鏡
T:小林浩
♪越谷達之助/初恋
♪服部良一/蘇州夜曲
♪中山晋平/ゴンドラの唄
♪古関裕而/熊祭の夜
Bar:旭潔
♪滝廉太郎/花
♪滝廉太郎/荒磯
♪高島豊/積もった雪
♪高島豊/花屋の爺さん
♪高島豊/大漁
以上Pf:大賀美子
~日本のオペラ~
♪石桁真礼生/オペレッタ「河童譚」~民謡による四重唱曲~
【配役】
河童河太郎:旭潔/お花:小池麻紀/おっ母さん:横関文子/与作:小林浩
Pf:大賀美子、鶴原裕子
バリトンのオペラ歌手、旭潔さんが主宰するホールオペラ「蓮の会」の公演を聴いた。前半の日本歌曲のステージで、嬉しいことにお二人の歌手が、みすゞの拙作を全部で4曲演奏してくださった。
1曲目ではソプラノの小池さんが、「山ざくら」で演奏会のオープニングを飾った。澄んだ美しい声が高音まで滑らかに伸びて行き、桜の精に促され、少女が桜の精(山ひめさま)に手を取られて優美に舞っている姿が目に浮かぶようだった。大賀さんのピアノがまた繊細で素晴らしく、山ひめさまがまとうヴェールの衣が風になびき、ハラハラと舞い散る桜の花びらの微かな薫りが届いてくるようだった。
小池さんの歌った後の3曲も大変完成度が高く、端正な美しさが心に染みた。「すてきな春に」でのドラマチックな表現も、表情過多になることなく、くっきりと深くドラマが胸に刻まれるところに「本物の表現力」を感じた。無駄を削いで明確な筆致で歌を盛り立てた大賀さんのピアノも素晴らしい。
続くメゾの横関さんは、メゾらしいふくよかで温かな声でたっぷりとした叙情を聴かせた。淀みのない音の運びが、曲の持ち味をそのまま伝えていた。「うぬぼれ鏡」で入れた演技が演奏により親近感を加えた。
テノールの小林さんは、昔から親しまれているいわゆる通俗歌曲を、情感たっぷりにドラマチックに歌い上げた。小林さんは、フレーズの端々に匂やかなニュアンスを添え、聴く者の心をくすぐり、それぞれの歌を、それにふさわしい色に染めていった。
前半の取りは旭さんのバリトン。相変わらずのステージ上でのお茶目な仕草とトークで満員の会場の雰囲気をなごませるが、それとは対照的な圧倒的な歌を聴かせた。5曲のうち3曲も拙作のみすゞの歌を演奏してくださったが、旭さんの歌はいつもながら、圧倒的にドラマチックでありながら、深い情感も湛え、熱く歌いあげる。
旭さんをイメージして作曲させて頂いた「花屋の爺さん」の演奏を聴くのは3度目になるが、「爺さん」の孤独と花への哀惜の思いの表現が益々板についてきた。「積もった雪」から伝わる押しつぶされるほどの孤独感、「大漁」でのイワシの大漁に活気づく港の場面から、既に聞こえる「イワシ」を視点にした悲痛な叫び。そして、こうしたドラマチックな表現を、大賀さんのピアノがとことん突き詰めて、色彩を強調したタッチで見事に描いた。
公演の後半は出演者総動員で、前衛風の作品も多い石桁真礼生作曲の、これは親しみ易いオペレッタ「河童譚」の舞台上演。前半ではドレスアップしていた歌い手達が、今度は田舎風の衣装とコミカルなメークで登場。この姿だけで笑えるが、前半とのギャップの大きさに、客席は大いに盛り上がる。 とりわけ旭さんの河童は、コスチュームといいメークといい、河童になりきっていて大ウケ。そんな4人の歌手と、ピットのビアニストによるオペレッタは、見た目に負けず劣らず音楽的にも観客を大いに惹き付けた。
音楽は軽快にテンポよく進み、アンサンブル主体の歌はたいへん活き活きしていて、振り付けや演技も決まっている。それぞれのキャラクターや声質、容姿までもが役にぴったりで、小気味よいテンポで進むオペラの展開に、観客はどんどん引き込まれていった。大賀さんと鶴原さんの軽快でウィットに富んだピアノが、歌手達の気持ちをうまく乗せ、歌い手達は伸び伸び生き生きと歌い、かつアンサンブルオペラとしてまとまっていた。
ストーリーは実に単純で、あっけないほどあっという間に幕となってしまった。もう少し一人一人のアリアが入ってもらいたいし、更なる楽しいストーリー展開で楽しませてもらいたい気もしたが、このテンポの良さ、短さが、このオペレッタの真骨頂と言えるのかも知れない。この公演は、キャストを変えて来年2月の再演が決まっている。また楽しみだ。